96年,97年,98年,99年,00年,01年,02年,03年,04年,05年,06年,07年 ,08年,09年,10年,11年
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 漂砂のうたう | 武士だった男が維新による時代の急変を受け社会の底辺に身を落とし、諦めを身の纏いつつ生きる姿、そして彼が属する遊郭の様子や人間模様が実に見事に描かれた傑作。 |
| 2 | ジェノサイド | まさに2011年のミステリ、エンタメ本を代表する超面白本。国内ものには珍しいスケールの大きさと、興味をひきつける設定と展開には唸りました。600ページでもまだもっと読みたい。 |
| 3 | 夜去り川 | 自分の好みだけならこの本が2位。時代的には1位の「漂砂のうたう」に近く、非常に不安定な時代に生きる人間たちの姿がしっかり、じっくり描かれていて素晴らしい。 |
| 4 | 絆回廊 新宿鮫] | シリーズ10作目になるのにいささかも面白さが衰えないのは驚き。新たな展開で鮫島警部の環境も大きく変化し、またまた次作が待ち遠しい。 |
| 5 | ばんば憑き | 職人”宮部みゆき”の本はいくら面白くてもここには挙げないつもりだったが、やはりベスト5には載せとかないと。なにか面白い童話を読んでいるような気分にさせてくれる。 |
| 6 | 川あかり | 時代小説ではあるが、人一倍臆病な青年の成長物語としてたいへん爽やかな作品。作られた世界ではあるが、はらはらさせられ読後はほっと暖かくなる物語世界。 |
| 7 | 統ばる島 | 自分の見たことも聞いたこともないような話が味わえるのも読書の楽しみだが、この本も現代の沖縄が舞台ながら、まったく知らない土地の実に面白い話を楽しみました。 |
| 8 | 月の上の観覧車 | たまにはこういう本もベストに挙げてみたいと思いました。派手さ、面白さとは無縁ですが、読み返し味わいたい物語ばかり。人生を考えるような年になったのかもしれません。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 犯罪 | 薄い体裁の中に11のこれまた短い話が整然と並んでいる、中身は圧倒的な人間ドラマが詰め込まれていた。読後誰もが、罪とは、裁きとは、などと考えずにはいられなくなる中身の濃い本でした。 |
| 2 | 逃亡のガルヴェストン | 逃避行というか、この手の話が好みなんですね。当たりの多かったポケミスの中で最も好きなのがこの本。ダークな物語なのに涙が出るようなラストが堪らない。 |
| 3 | 夜明けのパトロール | このホームページのBEST選びでも常連のウィンズロウの新シリーズ第1作。読者を楽しませる術を心得た面白本です。すでに第2作も出ているようで、邦訳が待ち遠しい。 |
| 4 | エージェント6 | レオ・デミドフのシリーズ最終作。3作ともスケールの大きな物語で、サスペンス満点、娯楽性も十分でした。最後は大団円にふさわしい感動が待っています。 |
| 5 | 忘れられた花園 | 3位、4位のような派手さとは無縁だが、20世紀初頭のイギリス領主館という舞台設定の雰囲気が見事で、本の造りも凝っているし、長さを少々我慢しても味わいたい作品。 |
・国内作品
今年のBESTはジャンル的にもヴァラエティに富んだラインナップとなりました。この中でBEST4までは別格です。すんなりと決まりました。
1位と3位は翻訳ものでは味わうことのできない、日本の時代小説らしい作品で、人情の機微に触れるような、面白さだけではない物語。
そして2位のスケールの大きさには圧倒されました。ぜひ映画化してほしい作品です。それもハリウッドで。
他に、古書好きが狂喜する久しぶりの「本棚探偵の生還」、幻想的な世界を見事に見せてくれる「11(eleven)」などが印象に残りました。
・海外作品
1位は、本は薄いが中身は濃い。装丁の不気味さそのまま、人間という生き物の複雑怪奇な様が淡々と描かれた作品です。
2位は絶望の逃避行の中に一条の光を見る物語、3、4位はランクインの常連ですが、徹底した娯楽性にはいつもながら感心し、存分に楽しみました。
それにしても今年のハヤカワポケミスは充実してましたね。その中で「二流小説家」だけ未読なのはまったくの不覚。
他に、ジョン・ハートあたりを思わせる「ねじれた文字、ねじれた路」、一気読みのサイコ・スリラー「ブラッド・ブラザー」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 天地明察 | 感動的な物語というのはさほど珍しくはないが、本作は物語のスケール、主人公の情熱、そして読んで面白いという点でも抜きん出た作品。誰にでも薦められる好編です。 |
| 2 | マルドゥック・スクランブル〔改訂新版〕 | これが「天地明察」と同じ作者と言うのも驚きのSFで、前半の戦闘シーン、後半のカジノでのトランプによる死闘でほとんどのページが費やされているが、サスペンス満点の大拍手。 |
| 3 | 星と輝き花と咲き | 大変珍しい明治期のアイドル物語だが、今と変わらぬアイドルとその周囲の喧騒ぶりが実に新鮮でかつ面白く描かれている。「円朝の女」と合わせ、3位にランクインです。 |
| 4 | リテイク・シックスティーン | SFものの体裁をとった青春小説だが、作りものでない実に自然な高校生の姿が描かれており、大変好感が持てる。休業して故郷に帰っているという作者の復帰を楽しみにしています。 |
| 5 | 叫びと祈り | 世界本格ミステリ紀行といった趣きで、各短編とも大胆な仕掛けとしっかりした推理が楽しめる娯楽作。こういう趣向もあったんだと感心しました。 |
| 6 | 貴族探偵 | 本格推理ものは嫌いじゃないけどちょっと苦手な私ですが、主人公?のふざけた設定が傑作。同ジャンルの「謎解きはディナーのあとで」も良かったが、よりこちらの方が好みなので。 |
| 7 | 北帰行 | 長年水準以上の作品を書き続ける作者だが、最近は警察ものに偏っているのは冒険小説に心躍った私としてはちょっと寂しい。本作もサスペンス満点で十分楽しめましたが・・・。 |
| 8 | 影法師 | さしたる話題にもならなかった時代小説だが、まぁ読んでみなと薦めたい作品。高い娯楽性を保ちながら、武士の、男の友情を読みやすく描いている。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ブラッド・メリディアン | ストーリー、表現など良くも悪くも極端な作品で、誰にでも気軽に薦められる本ではないが、こんな残酷なものが文学として認識できる域にあるというところがとにかく素晴らしい。 |
| 2 | 卵をめぐる祖父の戦争 | もはや笑うしかないような極限状況での悲劇を笑い飛ばした青春小説。メッセージを内に秘めた娯楽性満点の作りは見事。新生ポケミス最初の秀作。 |
| 3 | ラスト・チャイルド | ミステリとして物語の面白さもさることながら、登場人物がそれぞれしっかり描けているので実にドラマチックで、心に迫る物語になっている。 |
| 4 | フランキー・マシーンの冬 | このホームページを開いた頃からウィンズロウの作品を読んでいるが、ますます面白味を増している感じ。かなりの長尺もとにかく娯楽性満点で仕上げる技に感服。 |
| 5 | 失踪家族 | 以前に家族が行方不明になって・・・という設定が今年は多かったが、いずれも見事にドラマチックな衝撃作となっている。語り手の心理が巧みに描かれサスペンス満点の作品。 |
・国内作品
今年は冲方丁の年でした。2作とも圧倒的な面白さですが、人間ドラマと息詰まるような死闘劇、その分野も面白さの質もまるで異なるのが凄い。
3位以下は順位がどう入れ替わってもあまり変わりないほどの差ですが、様々なジャンルが入って、ヴァラエティに富んだ顔ぶれになりました。
3位、松井今朝子の地味ながらコンスタントな水準の高さはもっと評価されていいと思っています。
他に、謎めいた写楽の実像に迫る大作「写楽 閉じた国の幻」、作者らしい鋭さが快感の「妻の超然」などが印象に残りました。
・海外作品
海外ものは、もともと翻訳段階で選別されるので面白い作品が多いのも当然でしょうが、雑誌のBEST選びで上位の「愛おしい骨」より面白い本がこんなにあるぞ、という感じですね。
1位は、人間にこんなことができるのかというほどの残酷な世界ですが、無言で突きつけてくるような作者の姿勢に圧倒されました
2位はメッセージ性まで笑い飛ばしてしまうような見事な悲喜劇、4位は徹底した娯楽性、3位、5位はドラマとしての面白さに満足しました。
他に、狂気の「ベルファストの12人の亡霊」、クックの本領「沼地の記憶」、アメリカン・アクション「エコー・パーク」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | IN(イン) | しつこいくらいに人の心の内を鋭利な刃物で抉っていくような、作者独特の語り口がたまりません。読み手を選ぶかもしれませんが、私は好きですね。この1位は完全に私の趣味。”愛憎”という言葉がぴったりの作品。 |
| 2 | 暴雪圏 | 暴雪の中、犯罪者とともに一軒のペンションに閉じ込めらていく人々を描くサスペンスで、設定は珍しくもないが、徐々に緊迫感を増していく描き方が抜群の巧さで面白度は最高。 |
| 3 | 犬なら普通のこと | 血飛沫舞う犯罪ものだが、沖縄の熱い太陽のもと、全編ゆるいユーモアに包まれ、大きな穴の空いた杜撰な犯罪計画の顛末が一気呵成に描かれる面白本。 |
| 4 | オリンピックの身代金 | 作者は私よりも若いのに、昭和39年の高揚した日本社会の世相、人々の姿がよく出ているのにまず感心。犯罪劇としても、開会式に向け、いやがうえにも高まっていく緊張感がたまりません。 |
| 5 | 造花の密 | 騙されることが楽しめる作品。これくらいドカンとやってくれると嬉しいですね。一転スタイルを変えた後半も読みごたえあり。さすがベテラン作家です。 |
| 6 | 骨の記憶 | 50年に及ぶまさに波乱万丈の物語で、500ページの長尺全編、たっぷり楽しませてくれる。理屈抜きに面白い物語を読みたければこれでしょう。 |
| 7 | 逃亡者 | 謎また謎の物語が得意の作者ですが、この作品はミステリというより、女犯罪者の長期間にわたる逃亡劇で、新味はないが、人間ドラマとして読ませます。 |
| 8 | 道絶えずば、また | 作者の諸作はいずれもあまり話題にならないが、水準を超えたものばかりで、私は気に入っています。とりわけ本作品はミステリ色が強く、時代もの、歌舞伎ものはどうも、という方も十分楽しめるはず。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 犬の力 | えっ、これがウィンズロウの作品、と驚くほど強烈な悪の世界が、ユーモアのかけらもなく、力技で読者を押しまくります。まさに戦争物語ですが、現実にメキシコでは年間6000人も麻薬抗争で死んでいるとか・・・恐ろしい。 |
| 2 | グローバリズム出ずる処の殺人者より | 自分の想像を超えた世界や、風変わりな語り口が楽しめるのも、本を読む楽しみのひとつですが、中国首相あての手紙という形式といい、インド社会の現実といい、なかなか読めるものじゃないという感じです。 |
| 3 | グラーグ57 | 旧ソ連社会の内情という社会派要素を盛り込んだ前作に対し、今回は時代は同じでも、徹底的にエンタメに徹した物語です。映画化すれば巨額の制作費がかかりそうなスケールの大きさです。 |
| 4 | 幻影の書 | 数奇な人間ドラマというのはこういう物語のことを指すんでしょう。しかし、読み手を楽しませることに徹した作品ではないのでちょっと手強いかもしれませんが、いい頭の刺激になります。 |
| 5 | 極限捜査 | 流行なのか、これも冷戦時代の東ヨーロッパの人権が抑圧された社会における捜査官を描いた物語だが、より重く暗い印象の作品。むろん、緊迫感に満ちた警察小説として十分楽しめます。 |
・国内作品
今年はこれぞベスト1という作品がなかなか決まらず、いっそ空席とも思いましたが、なんとか順位を付けました。8位まで団子状態、どれが1位でも同じです。
面白さではなかなかの本が多かったと思いますが、思わず惹きつけられるような人間的魅力に富んだ主人公が少なかったですね。8作いずれもベテラン作家の作品というのも面白い。「ダブル・ジョーカー」とか「龍神の雨」、「学問」とかも読んでるんですがね
他に、ミステリの香り高い「銀座ブルース」、火星探査旅行を題材とした「ドーン」、登場人物がみな生き生きとした「るり姉」などが印象に残りました。
なお、小説に限らず私が09年に購入した本のBESTは、小鷹信光著「私のペイパーバック−ポケットの中の25セントの小宇宙」でした。
・海外作品
国内ものと異なり、読みごたえのある作品が多かった年でした。スケールだけの違いではなく、物語の面白さを感じさせるものばかりです。
1位は、圧倒的な暴力・悪の世界ですが、とにかくその迫力・スケールにやられました。
3位、5位もそれに連なる作品ですが、一方、2位、4位は単なるエンタメ小説とは一線を画しながら読み手を楽しませ満足させてくれる作品。
他に、娯楽作「オッド・トーマスの霊感」、ハードボイルドの一品「川は静かに流れ」、二番煎じとならず昨年の初作同様に面白い「荒野のホームズ、西へ行く」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 裏切り涼山 | これぞエンタテインメント!という感じの痛快娯楽小説。おのれの信念に従って生きる熱い男の物語は読んでいて気持ちがいい。登場人物からストーリーまで曖昧さのないきっぱりしたところが魅力。 |
| 2 | 出星前夜 | 一地域における歴史上の大きなうねりを事細かに、かつそれに関与した人々と彼らの心情までしっかりと描写するその筆力に圧倒される。娯楽性では1位に譲るが、作品世界では完全に凌駕している。 |
| 3 | そろそろ旅に | 十返舎一九と称することになる主人公の、人間味が少々溢れすぎるくらいの生き様を描いた物語で、うらやましくなるほどの奔放さと物語の面白さに感心。 |
| 4 | 黄金の王 白銀の王 | この作品もまた主人公の人間的魅力がたまらない。現実の施政者にはとても求められないような、国を思い、人民を思い、信念を貫く姿の素晴らしさに魅了される。 |
| 5 | ゴールデンスランバー | スケールの大きな娯楽小説。大がかりな警察の追及に、逃げて逃げて逃げまくる主人公の、スリルとサスペンスに満ちた物語は、まさにページをめくる手が止まらない。 |
| 6 | ボックス! | 青春スポーツものというと、ただ頑張れ頑張れのスポ根ものとか、自己中心的な青臭い話になりがちだが、これは物語の面白さが際立っている。次はどう展開するか、本の厚みを感じさせない面白本。 |
| 7 | みのたけの春 | 時代の波に翻弄される周りの若者たちに対し、ひたすら”みのたけ”に徹する主人公は、しかし憶病でも年寄りくさくもなく、前向きに懸命に生きている。いい小説を読んだと感じさせる、のびのびした筆致が好ましい。 |
| 8 | 犬身 | あり得ない設定にも何の違和感も感じさせないところがまず見事。設定の奇抜さで読ませるものでは断じてなく、その設定の中で、実に生々しく、濃密に、かつ面白い物語が展開していく。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ザ・ロード | あらゆる生物が死に絶えていく終末世界は何らの説明もないゆえ、様々な想像をかきたてる。父と子の道行の非情さを、外見だけから”子連れ狼”などに譬えるような見方はやめてほしいところ。 |
| 2 | 北東の大地、逃亡の西 | 短編の多くが犯罪者を描いたものだが、法律違反とか罪人とかにテーマがあるわけではない。その人間を、その生活をとにかくリアルに描く、それが読む者の心に響いてくる。 |
| 3 | チャイルド44 | スリルに満ちた娯楽小説に社会派の要素を巧みに注ぎ込んで、見事にブレンドしたもの。旧ソ連を舞台とした設定が秀逸で興味をそそり、上下巻を通して面白さが持続する。 |
| 4 | 20世紀の幽霊たち | 奇想、恐怖、SF、幻想、さまざまなジャンルがてんこ盛りの短編作品集。16編もありながら、これはだめだ、というものが見当たらない。これからは息子の時代になったか。 |
| 5 | 消えたカラヴァッジョ | 美術品をめぐるミステリーというのはジャンルが確立されていると思うが、これはノンフィクション。しかし練り上げられた創作ものより数段面白いのではないか。人間が群れてくる世界はどんどん複雑怪奇になっていくことがよく分かる。 |
・国内作品
今年もベスト8まで選びました。今年は特に、信念を貫く者、自分の生き方に正直な者等々、主人公が人間的魅力に満ちた作品が多かったような。
思い通りにならない世の中で、芯の通った人間の姿は、読んでいて実に気持ちがいい。しかし主人公が男ばかりで、かっこいい女性の作品が見られなかったのは今思えば残念でした。
各誌ベスト10ランクインの作品もけっこう読んでいるつもりですが、上位に入れるような作品とは思えないものも多いですね。
他に、忍者の世界に材を置いたアクション娯楽巨編「忍びの国」、作者独特のタッチで堕ちていく若者をリアルに描く「ばかもの」などが印象に残りました。
・海外作品
今年は5本を選びましたが、どれも本当に見事な作品ばかりで、設定などはシンプルなのに、国内ものとは一回りのスケールの違いを感じました。
1位は、読み始めてすぐこれは今年のBEST1と感じ、読み進めてそれが確信になった小説です。
2位、4位は短編集ですが、2位が人生を鮮やかに描いたところが、4位はその多彩な技に圧倒されました。
他に、シンプルな徹底娯楽作「聞いてないとは言わせない」、淡々とした中に明確に人生を見せる「見知らぬ場所」、奇抜な着想以上に本編が面白い「荒野のホームズ」などが印象に残りました。「ティファニーで朝食を」も素晴らしかったが、再訳のため選考対象外としました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 赤朽葉家の伝説 | 300ページ足らずの物語だが、とんでもない大作を読んだ気にさせる大河小説。よくもこんなお話を思いつき、読んで面白く表現できるものだと、ほとほと感服しました。 |
| 2 | メタボラ | いかにも桐野夏生らしい、緊迫感に満ちた人間ドラマ。遠慮会釈なく、生のぶつかり合いを、南国的なゆとり、ユーモアのある沖縄弁というオブラートにうまく包みながら、ガンガン見せてくれる。 |
| 3 | 夜は短し歩けよ乙女 | あと一歩で「本屋大賞」を逃した作品。中身は青春ファンタジーだが、ジャンルも、読者対象も、枠を超えた面白さを持っている。ただ、全体に"奇妙な世界"でもあるので、そのノリについていけないと苦しいかも。 |
| 4 | 夜は一緒に散歩しよ | ホラーです。めちゃくちゃ怖い。でもページを捲る手が止まらない、怖いもの見たさってこういうことかと分らせてくれる怪談。 |
| 5 | 映画篇 | 実際の名作映画を題材に取った短編集。こじつけでなく、巧みにその映画を取り入れて無理がない。素敵で素直でカッコいい作品集でした。 |
| 6 | 変身 | ひどい醜男がある朝目覚めたらとんでもない美男子になっていた、なんていう設定はともかく、外見は変わっても主人公の純情朴訥ぶりが泣かせます。嶽本節が全開の怪作。 |
| 7 | 夜想 | この物語もまた突拍子もない設定だし、宗教団体の話だとなんとなく筋書きが読めてしまうものだが、本作は人間ドラマとしてたいへん読み応えのあるものになっている。 |
| 8 | 花宵道中 | 久しぶりにランクインした時代小説だが、江戸時代、花街という舞台に名を借りた女たちの激情がページからほとばしり出てくる激しい物語。連作短編で、それぞれの適度なつながりも見事。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | TOKYO YEAR ZERO | まずは、体の中を蟲が這っているような、内から声が迸り出るような文体にまいりました。ただし、ストーリーも、前後の流れも十分にこなれているとは言えず、かなり好みは分かれる作品と思う。 |
| 2 | 復讐はお好き? | 1位とは異なり、こちらはだれが読んでもその面白さは保証付き。個性あふれる登場人物たちに、スリルに満ちたストーリー、ユーモアあふれる語り口と、文句なしのエンタテインメント。 |
| 3 | ハリウッド警察25時 | 昨年の「あなたに不利な証拠として」と系列は同種だが、こちらは舞台がハリウッド、面白いエピソードには事欠かないところゆえ、娯楽性も高い。 |
| 4 | 血と暴力の国 | 殺人が連続するような話だが、サスペンスに富んだ物語は十分な娯楽性も併せ持っている。しかしその奥には、アメリカの現実の病巣を的確につかんだ作者の郷愁と嘆きが明確に読み取れる作品。 |
・国内作品
今年もベスト8まで選びましたが、5位まではすんなり、あとは少々小粒ですが、好みで8位までランクインとしました。
その中で1位にしたのは奇想大河家族小説。物語の面白さに圧倒されました。
2位は、作者の特徴が存分に発揮されたもので、ミステリー色を織り交ぜた人間ドラマとして会心の作です。
その他、ファンタジー、ホラー、社会派ドラマ等々、ヴァラエティにとんだ顔ぶれとなりました。
他に、ライトコメディの「美晴さんランナウェイ」、奇想の「秋の牢獄」、力技の娯楽作「悪果」などが印象に残りました。
・海外作品
今年はベスト4まで。特に上半期が、私の期待が大き過ぎたのか、話題や前評判の割に今ひとつと感じられたものが多くて低調でした。
1位は、その熱にうかされたような語りには好き嫌いがあるでしょうが、私はその衝撃的な文体に魅せられました。
2位は、その徹底した娯楽性に感嘆です。500ページ以上を突っ走るサービス精神満点の作品。
他にクックの「石のささやき」に熟練の巧さを、そして86歳、フランシスの「再起」の完成度には本当に驚かされました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | アイの物語 | SFの1位は自分でも意外だが、人間と人間に近づいたロボットとの限りなく人間ドラマに近い感動作。ここまで行くにはまだかなり先だろうが、十分なリアリティを感じさせる。 |
| 2 | DIVE!!(ダイブ) | 昔のスポーツ根性ものとは違い、とにかく楽しんで自らの立てた目標に向かって熱く闘う少年たちのエネルギッシュな物語。そのハラハラドキドキ度は猛烈高いぞ。 |
| 3 | ゆりかごで眠れ | なんと面白い話を作るもんだと感心してしまうほどのストーリー。カッコいい主人公、破天荒な物語と娯楽性満点の作品で、500ページを一気読み! |
| 4 | ゆれる | 未見ですが映画のノベライズ。しかし1冊の本として素晴らしい作品。言葉では埋められないほどの感情のうねりがジワジワとしみ出てくるような、とてもスリリングな物語。 |
| 5 | ジウ−警視庁捜査班特殊係 | 2人の女性警官を主人公に配した、見せる警察活劇小説。さりげなく彼女たちの日常部分まで描き、感情移入させる。全3作だが、犯罪者側の設定がどんどん×になってゆき残念。 |
| 6 | 狼花−新宿鮫\ | 5年ぶりの新作だが、その面白さはいささかも衰えていない。話はやや小ぶりだったが、過去の宿敵と決別し、今後の新たな展開を期待させる。 |
| 7 | シャドウ | 本格ミステリーに分類される類の作品だが、娯楽性も十分で、変幻自在の展開は騙される面白さを感じさせてくれる。 |
| 8 | トーキョー・バビロン | 相変わらずの騙し騙され馳ワールドだが、本作も絶好調。金の亡者たちがこれでもかと押し寄せる百鬼夜行の世界をたっぷりと見せてくれる。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 荒ぶる血 | うわぁ、なんだこれは!と驚くほどの超おもしろ娯楽活劇小説。理屈なんかいらない、問答無用で、面白ければ文句無いだろ、と叫んでいるような本だ。 |
| 2 | 天使と罪の街 | 毎回ベストに選んでしまうボッシュですが、ただ面白いだけでない、良質のドラマをこれだけ続けていることに本当に敬意を表しますね。 |
| 3 | あなたに不利な証拠として | 死と隣り合わせの極限状況が続く中での女性警官たちの生々しい人間ドラマ。批評家たちの推薦もこれはホンモノでした。 |
| 4 | ドラマ・シティ | 他のペレケーノス作品に比べて凄惨な銃の現場が少なめで、その分人物や人々の交流の描き方の厚みが増して好印象だった。 |
| 5 | 出生地 | 日本を舞台にした海外ミステリーでこれほど違和感が無いのも珍しい。その点を加味しなくてもサスペンスあふれる物語が楽しめる。 |
・国内作品
ベスト8まで選びましたが、全体に小粒で、これ!というものは無く、ベストワンは空席にしようか迷うほどでした。
その中であえて1位にしたのはSF。ロボットがリアリティを感じさせる時代になって、なおその想像力に驚かされました。
2位は以前の作品の文庫化ですが、「風が強く吹いている」など今年多かったスポーツ青春ものの代表として。
その他、5位「ジウ」は3部作+「ストロベリーナイト」により。第1作の水準と衝撃が続けば1位もありでしたが、設定が中途半端になっていったのは残念。
他に、一昨年2位とした絲山秋子の「沖で待つ」、挿絵も素敵な大人の童話「ミーナの行進」などが印象に残りました。
・海外作品
四つ星作品が6冊しかない、その点では淋しい年でしたが、そのどれもがランクから外せないものばかりで結局5本掲げることに。
1位は、エンタテインメント活劇小説として、その面白さは半端でないものでした。
2位はお馴染みのという感じですが、いいものはいい。3位は今年の翻訳ミステリ最大の話題作でしょう。人間が描けている物語は読み応えが違います。
他に「ながい眠り」がランク外となりましたが、とても半世紀前の作品とは思えないものでした。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | サウスバウンド | 傑作家族小説。登場人物はかなり外れた個性派揃いだが、皆、実に生き生きとしており、読んでいてとても気持ちがいいし、楽しく前向きな気分になれます。 |
| 2 | 犯人に告ぐ | 現実にはない設定だと思っていたら最近は警察もマスコミを活用するようになってきたようだ。緊迫感に満ち満ちた、リアルでかつ娯楽性たっぷりの傑作警察小説。 |
| 3 | 震度0 | 作者お得意の警察を舞台に、権力欲にとりつかれた男たちのどろどろとした魑魅魍魎の世界を、犯罪ものにも負けない緊張感で全編を貫き通して描いた。 |
| 4 | 下妻物語・完 | 映画はめちゃくちゃキワものだったが(かつ面白さも抜群)、桃子の語りで綴られるこの物語も強烈に個性の強い面白本でした。へそ曲がりと前しか見えない2人に乾杯! |
| 5 | 古道具 中野商店 | 物語の流れや奇抜さで楽しませる本もいいけれど、平凡な人と人とのつながりをじっくりと飾りなく描くこの本も好きです。胸に響かせるのに大仕掛けはいりませんね。 |
| 6 | 君たちに明日はない | リストラ請負人という時代的に相当リアルな職業を持ち出してきたが、話の流れも良く、絶対に退屈させない娯楽性重視のつくりには脱帽。 |
| 7 | シャングリ・ラ | 2段組600ページにわたって疾走するスーパーアクションには本当に疲れましたが、そのパワーはやはり認めざるを得ません。過激なコンピューターゲームも軽く一蹴してしまう凄さです。 |
| 8 | 弧宿の人 | またまた作者の職人技を堪能した気分。800ページを超える長編ですが、7位とは異なり読み進むのに疲れとは無縁。読了して満足感に浸れる物語。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 暗く聖なる夜 | これぞハードボイルド!と唸らせる名品です。50歳を越え、人生に悩みつつ、なお自らが納得できないものには意地でも屈しないボッシュの"立ち向かう"姿勢に自らを奮い立たせたくなるような作品です。 |
| 2 | 回想のビュイック8 | とにかく不思議な話、奇妙な物語でスティーヴン・キングの右に出る作家はいませんね。それから人間を見つめる目が温かいことも嬉しい。この作品でも700ページに渡って存分に楽しませてくれます。 |
| 3 | 蜘蛛の巣のなかで | クックの作品はその語り口が独特で、それため続けて読むと食傷気味になってしまうが、やはり上手い。今回は希望のあるラストがとりわけ良かった。 |
| 4 | 売り込み | 興味深い設定と天国から地獄へ、変化のあるストーリーで抜群に面白い物語。自分の知らない世界が読めるというのも読書の楽しみです。 |
| 5 | 白骨 | 連続殺人鬼を追う作家と女カメラマンのコンビ。先の読めない追跡行は娯楽性満点の物語で、とにかく面白いことでランクインです。 |
・国内作品
今年も8本。ほかにもランクインさせたいものがありましたが、40冊くらいの国内作品から選ぶのでこの程度がバランスいいかと思いまして・・・。
1位は少年を主人公にした家族小説の傑作、2位、3位は一転して全編スリルの塊のような警察小説です。
以下、コメディー、SF、恋愛ものから時代小説まで様々なジャンルが並びました。ジャンルは違えど、とにかく読んで面白いのは間違いない8冊です。
しかし今年最も残念だったのは、原ォの新作が読めなかったこと。次作は続けて早い時期にと、昨年作者は語っていましたが、やはり無理でしたか・・・。
他にミステリー系では「天使のナイフ」、「推理小説」、また家族小説の「さくら」などが印象に残りました。
・海外作品
1位は、ミステリ中心のこのホームページにふさわしいハードボイルドなのが嬉しい。
2位の巨匠の奇想、3位の技巧派の語りの妙はさすがの感じで、いつもどおりの力を発揮してくれた、とも言えますか。
娯楽性たっぷりの4位、5位も存分に楽しめました。
他に「女神の天秤」、「弱気な死人」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 愚か者、死すべし | すでに過去の人になりかけていた作者の見事な復活(?)に大拍手。近年のやわなミステリ本ではほとんど拝めないハードボイルドな語り口が堪能できます。 |
| 2 | 海の仙人 | 短い物語だが、この心地良さはどう表現すればいいのか。ファンタジーなる架空の存在にも妙に心惹かれるものがあり、気持ちが自然に物語の中に引き込まれていきます。 |
| 3 | パンク侍、斬られて候 | メインが腹ふり党などというふざけた設定で内容もまたばかげた話でありながら、実にインパクトのある作品で、とにかく一読あれ、という感じ。 |
| 4 | 鷹姫さま お鳥見女房 | シリーズ3作目にしてさらにその筆技に磨きのかかった感がある。時代"劇"としての雰囲気も巧みで、つくりものでない素朴で素直な人情味が感じられます。 |
| 5 | ワイルド・ソウル | 娯楽要素の目いっぱい詰まったサービス満点のエンタテインメントだが、背景となるアマゾン入植者たちの悲劇にもまったく手を抜いていない点も感心。 |
| 6 | 黄金旅風 | とてもドラマチックな話で、物語を読む楽しさを教えてくれる。人間的魅力に溢れる登場人物たちが実に生き生きと描かれています。 |
| 7 | もっと、わたしを | まるでテレビの恋愛ドラマのようだが、中身はけっこう濃い。辛らつな台詞の応酬、男と女の感情のぶつけ合いが、時に静かに、時に激しく、テレビよりずっと面白いね。 |
| 8 | 幻夜 | 作者お得意の娯楽性たっぷりの犯罪ミステリ。人物描写や背景など深みはないが、とにかく楽しませてくれるという点では一級品。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ブレイン・ドラッグ | 一か月以上かかる仕事も1、2日で、外国語もちょっと聞けばペラペラに、驚異的に脳を活性化する薬の効き目とその恐ろしい代償という悪魔的な物語。作者も薬を飲んだのか、想像を超える面白さ。 |
| 2 | 夜更けのエントロピー | 河出書房新社の奇想コレクションシリーズには今年、大いに楽しませてもらいました。中でもダン・シモンズの傑作短編を集めた本作品集はまさに"奇想"の連続に驚かされました。 |
| 3 | シャッター・アイランド | 翻訳ものでは珍しい結末が袋とじされた本格ミステリ。もちろんルヘインの作品らしく、悲痛な人間の姿が鋭くえぐられています。 |
| 4 | ミッドナイト・ボイス | ホラーの大家がその本領を発揮した恐怖小説。題材は平凡だが、雰囲気の盛り上げ方がすばらしく、読者を楽しませる術に長けています。 |
| 5 | 弁護士は奇策で勝負する | 良質の娯楽作。軽いタッチの作品だが、物語の設定から展開、登場人物まで手を抜いたところはなく最期まで十分楽しませてくれます。 |
・国内作品
今年は8本。なんとか8本で、それもここはミステリ中心のページながら、ミステリ系は1位、5位、8位の3本のみでした。
1位は個人的にも待ち望んでいたというか、もう次は出ないのではと思っていたので、その嬉しさも加わりダントツの1位です。
2位はジャンル不明のコメディードラマですが、ぜひ多くの人に読んでほしい、心が静かにゆり動かされるような本です。
以下、時代小説やコメディー、エンタテインメントなど様々なジャンルが並びましたが、やはりミステリ本が少ないのが寂しい。
面白本を感知する私のアンテナもまだまだ未熟です。ミステリ系のベスト10選びに出てくる本もあまり読んでないしね。
他に「追憶のかけら」、「太陽と毒ぐも」などが印象に残りました。
・海外作品
1位は奇想の長編、2位は奇想の短編集。想像もできないような世界を見せてくれた本でした。河出の奇想シリーズにはまだまだ期待しています。
4位、今年読んだジョン・ソールの3冊はいずれも素晴らしかったですが、代表でこれを。まるで話題にならなかったのがまったく残念です。
他に「シービスケット」、「サンセット・ヒート」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST9
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 第三の時効 | 人物造形、ストーリーとも強烈な切れ味と迫力、緊張感に満ちた密度の極めて濃い短編集。背筋が寒くなるような捜査のプロたちのせめぎ合いに圧倒されました。 |
| 2 | クライマーズ・ハイ | 新聞記者のプライドを賭けた闘いがぎりぎりの緊張感を保って描かれる。航空機事故という大事件の衝撃と紙面作りという内部的争いの対比も面白い。 |
| 3 | ZOO | 10短編それぞれが異なるジャンルの物語で、かつ、その物語の性格ごとにしっかり驚かせ、怖がらせ、面白がらせるのが凄い。天才的な描き分けという感じです。 |
| 4 | 博士の愛した数式 | 殺伐とした物語が多い中、こういう心温まる作品は貴重です。皆が敬遠しそうな"数式"を上手く取り入れ、素直さが好ましい良品。 |
| 5 | 葉桜の季節に君を想うということ | 仕掛けの多いミステリ小説の中でもこんな大仕掛けには滅多に出会えないでしょう。見事にはまりました。もちろん仕掛けだけの作品ではなく、軽快なタッチの面白本です。 |
| 6 | 流れ星と遊んだころ | この物語も5位と同様、途中に大仕掛けがあるが、浮き沈みの激しい芸能界を舞台にした全編に漂う気怠い雨模様の雰囲気が素敵な作品。 |
| 7 | 千年の黙 異本源氏物語 | 源氏物語の謎という特殊な題材ながら、分かりやすい展開、魅力的な人物描写で読みやすく、かつ惹き込まれる 娯楽作となっている。 |
| 8 | 真夜中のマーチ | 面白さにおいて外れなしの作者の、期待に違わぬ青春犯罪コメディー。軽快な笑いで楽しめます。「マドンナ」との合わせ技でランクインです。 |
| 9 | 石の中の蜘蛛 | 聴覚が異常に亢進した男を主人公に据え、非現実の世界ながら異様な迫力と緊張感で読むものを離さない背徳的魅力の作品。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | サイレント・ゲーム | 読み終わった時に、本当に面白く、かつ深みのある物語だったなぁと感じさせる本。作り物なのに上辺だけでない人間たちのドラマに圧倒されます。 |
| 2 | シティ・オブ・ボーンズ | 魅力的な登場人物に、二転三転して読者を終始惹き付けて離さない展開。実に面白い。これがシリーズ8作目?と驚かされました。 |
| 3 | 半身 | 全編暗いトーンで、物語の設定も序盤の展開もさして目を引くものではないのに、妖しく不思議な魅力を感じる作品。アクションに頼らない迫力がじわじわと来ます。 |
| 4 | 魔女は夜ささやく | 巨匠の10年ぶりの作品だが、いささかの衰えも感じさせない。これだけの"物語"を創り出してしまう熟練の技に圧倒されました。 |
| 5 | ダークライン | 一昨年の「ボトムズ」には及ばないもののミステリー仕立ての人間ドラマとして十分面白い。もう1本「モンスター・ドライヴイン」の突き抜けた恐怖も凄かった。 |
・国内作品
前年に続き9本を選びました。 あと1本ランクインさせるのは納得できなくて"ベスト9"です。
1位は、謎解きやトリックなどは添え物にした、人を追いつめるプロたちの冷血さにしびれました。
2位も横山秀夫。人間同士のぶつかり合いが凄い迫力で、文句なしにトップ独占です。
以下、本格からコメディー、猟奇ものから心温まる作品まで様々なジャンルが並び、ヴァラエティ豊かなラインナップになりました。中でもそれら様々なジャンルが1冊の中にちりばめられた3位にはびっくり。
他に「安政五年の大脱走」が印象に残りました。
・海外作品
1位、2位ともにあくまで娯楽作であり、その面白さも半端ではないが、人間をしっかり描いたミステリーとして印象深いものでした。魅力的な人物造形という点では、国内ものはまだまだという感じです。
3位は全編を覆うミステリアスな雰囲気に魅せられ選んでしまった感じ。4位、5位のベテラン健在は嬉しかったですね。
他に「石に刻まれた時間」、「コールド・ロード」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST9
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | あかんべえ | 娯楽作としてほぼ満点といえる作品でしょう。怖がらせ、驚かせ、微笑ませ、はらはらさせ、泣かせる。ミステリーの女王がそのテクニックを駆使して、とにかく1冊で全部やってくれます。 |
| 2 | 本棚探偵の冒険 | 小説ではなく怪しいエッセイ集ですが、他人から見れば全く理解不能の"古本道"を突き進む作者らの滑稽かつ異様なまでの姿に、思わず引き込まれてしまいました。 |
| 3 | 半落ち | この物語には参りました。全く掛け値なしに素晴らしいラスト。私もホロリでした。そこに至るまでの語りが良いのも勿論です。 |
| 4 | イン・ザ・プール | 伊良部医師、凄すぎます。医者なのにまるで子供。でも読み進むうちに自分もこの医者になら何でもうち明けられそうな気がしてしまいます。 |
| 5 | ハルビン・カフェ | 評価できない本が続き以後敬遠していた作者ですが、この本には衝撃を受けました。物語としては楽しめないかもしれないけれど、全編から放射される激しさはぜひ味わってほしい。 |
| 6 | あくじゃれ瓢六 | デビュー当初から巧さを感じさせる作者でしたが、この短編集もキャラクタ設定から、話の進め方、まとめ方が絶妙。市井の人々の人情の機微に触れる話ばかり。 |
| 7 | ダーク | 探偵ものからクライムへ転じた"村野ミロ"ですが、相変わらず激しい流転の人生です。ちょっと展開が激しすぎると思うほどですが、十分面白い。 |
| 8 | 母恋旅烏 | 大衆演劇の世界そのままの人情喜劇。細かいことは抜きで、くさい芝居を見る気持ちで気軽に読めば確実にはまります。 |
| 9 | マンゴー・レイン | 裏切りと迎合の世界は相変わらずの作風だが、今回は冒険小説的な彩りも加え、直線的な一気読みの面白本でした。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 最も危険な場所 | まさに"スワガー"シリーズに外れなし。上下巻で明確に形勢を逆転させ、たまりにたまったものを一気に吐き出させるような痛快娯楽巨編です。 |
| 2 | 雨に祈りを | シリーズものの第5作だが単発で読んでも娯楽作として十分に面白く、さらに人物がその感情までしっかりと描かれており感心させらます。 |
| 3 | 死ぬほどいい女 | 泥沼にはまりこんでいく男を小気味いいテンポとブラックなユーモアで描いていくが、狂気もここに極まれりという感のラストが凄い。 |
| 4 | わが名はレッド | 憎むべき乳児誘拐に端を発し、猟奇連続殺人まで出てくるが、それを面白く読ませてしまう手腕、精巧に組み立てられたプロットと意外な社会性に驚きました。 |
| 5 | アイスマン | フリークたちの群など小説でしか覗くことのできない世界で、内容もどぎつく、読み手を選ぶ物語かもしれないが、不思議な魅力に満ちた作品。短いのが惜しい。 |
・国内作品
今年の代表として選べたのは9本。 あと1本はランクインさせるまでには至らなかったという感じです。
1位には存分に楽しませてもらい、2位は本好きの人には是非読んで欲しいもの。底の見えない"古本道"に落ちるかもしれませんが。
以下、泣かせる本、笑わせる本、圧倒させられる本、巧さにじっくり浸れる本などなど、バラエティに富んだ面白本を選ぶことができたと思います。
他に「晴子情歌」、「国境」などが印象に残りました。
あと年末にきてまたまたガックリきたのは、週刊文春ミステリーベスト10。毎度乱歩賞のランクインですが、今年もあの本がなんと3位。2位の本も不満ですが、選者たちは本当に読んでるのか。読書力を鍛えなさい!
・海外作品
1位はまさに痛快の一言。定石通りとか細かいことは抜きで、絶対に楽しめる面白本。
2位は娯楽作でありながら人物描写をおろそかにしないところに惹かれ、3位にはラストで頭を思いっきり叩かれた気分にさせられました。これが50年前の作品とは驚異。
4,5位も不思議な毒に満ちた作品でした。3位ほどではないですが。
他に「サイレント・ジョー」、「鋼」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST10
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 玉蘭 | 登場人物の感情のぶつかり合いが生々しい、桐野夏生らしい作品。恋愛ドラマだが、全編に張りつめた緊張感があり、過去と現代の自由な物語展開もいい。 |
| 2 | なぎら☆ツイスター | もはや笑うしかないほどの暴走した狂気の世界を気軽に楽しめてしまう小品。キャラクターの性格付けも娯楽作としてツボを心得ており感心。 |
| 3 | 翼はいつまでも | 実に爽やかな青春成長小説。この時代、これほど素直な作品は貴重ですね。読む者の心に確かに響く物語。 |
| 4 | 曼荼羅道 | 過去から未来、夢か現実か、時空を超えて自在に語られる人間の愛憎のドラマ。特に未来(?)の場面の造形が素晴らしい。 |
| 5 | 湾岸リベンジャー | まさに湾岸道路を突っ走っているようなノンストップの面白暴走本。随所の凝った造りも嫌みはなく、徹頭徹尾楽しませてくれます。 |
| 6 | ダーク・ムーン | 一貫して暗黒ノワールを書き続ける作者の集大成的な作品。狂気に取り憑かれた者たちがさらなる地獄へ堕ちていく様は身震いするような怖ろしさ。 |
| 7 | 邪魔 | 派手な作品ではないが、変化に富んだ物語が存分に楽しめる。3人の登場人物が徐々に坂を転がり落ちていくあたり、語り口が巧い。 |
| 8 | お鳥見女房 | 主人公であるお鳥見役の女房の暖かさがじんわりと伝わってくる気持ちの良い話ばかりの短編集。いずれも手堅くまとめられているが、本自体は中途半端に終わってしまった。 |
| 9 | オルファクトグラム | 匂いを視覚で捉えるという荒唐無稽な設定だが、それも気にならない素直な展開が好ましい。青春ミステリーとしても上質な作品。 |
| 10 | 三人目の幽霊 | 落語界のミステリーは北村薫が有名だが、この作品は通ぶったところもなく、比較的派手目な事件と速い展開でどの短編も十分楽しめる。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ミスティック・リバー | 昏い河を行くがごとき主要人物3人の人生がドラマティックに描かれる。こういう物語が読めるので読書はやめられないという典型のような作品。 |
| 2 | ボトムズ | 1位と2位に全く差はない。このドラマも見事。ミステリー+家族の物語は1930年代のアメリカ田舎町の風土と共にしっかりと描かれていて、かつ面白い。 |
| 3 | 騙し絵の檻 | これだけの見事なラストは滅多に読めないというくらい鮮やかな幕切れでした。長さも適度でミステリーの醍醐味を気軽に味わえる作品。 |
| 4 | カリフォルニアの炎 | スリル、アクションからお色気まで100%エンタテインメントで存分に楽しませてくれる。作品の舞台そのままカリフォルニアの陽光を感じさせながら読ませる。 |
| 5 | 夜のフロスト | ますます厚くなってきたシリーズだが、面白さは相変わらず。たくさんの事件がまるで整理されていないようで最後まで混乱することなく読者を引っ張るのはさすが。 |
・国内作品
上位にこれぞという大作はありませんでしたが、1位と4位の2人の女性作家が本来の切れ味を見せてくれたのは嬉しかった。人間のぶつかり合いを自由な小説作法で描いた2作、さほどの話題にもなっていないのが不思議です。
今年の収穫は2位、5位の戸梶圭太。出す本すべて暴走狂気の怪作揃い。本づくりにも作者のこだわりが感じられて嬉しいですね。
3位はミステリーではないけれど、今年最も心に残った作品かもしれません。心が洗われる素直な物語ですが、決してきれい事だけではないところもいい。
他に「ボルトブルース」、「ヒートアイランド」などが印象に残りました。
読み逃した中ではやはり宮部みゆきの「模倣犯」が傑作との評判でしたが、あの厚さに尻込みしてしまったのは残念。
・海外作品
こういうミステリードラマを国内作品で読んでみたいのに、と悔しくなるほど巧い1,2位でした。いつまでも物語の一場面が心から離れない、そんな2冊です。
3位は思わぬ拾いもの、4,5位は定評ある作家のさすが実力通りの面白本でした。
他に「斧」、「神は銃弾」などが印象に残りました。
◇国内作品BEST9
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 新宿鮫 風化水脈 | シリーズも第7作にしてなおこのような面白本が出てくるところは凄い。作者の"面白く読ませる"テクニックの集大成のような作品。きわめて日本的な娯楽作。 |
| 2 | 狼は瞑らない | ハリウッド製冒険アクションも真っ青、というくらいの面白さ。極寒の臨場感とたたみかけるアクションの連続にただただ圧倒されました。 |
| 3 | GO | 在日韓国人差別という根深い問題を底に孕みながら、"今"を感じさせる気持ちの良い素直な青春小説として感心しました。 |
| 4 | 道祖士家の猿嫁 | 田舎の旧家を舞台に一人の女性の生涯を追いながら、明治時代中期からの日本が近代国家へと変貌していく様が見事に浮かびあがっていく大河ロマン。 |
| 5 | 倒錯の帰結 | 装丁からして前代未聞。どうやって収まりをつけるのか心配になるくらい謎また謎の連続にしびれます。少々マニア向けに偏ったところもあるが、推理小説ファンなら存分に楽しめます。 |
| 6 | 虹の谷の五月 | 冒険小説の巨匠の復活と再生を感じさせた作品。人間の欲望のぶつかり合いが実に生々しく、舞台となるフィリピンの熱い空気が伝わってきます。 |
| 7 | 夢顔さんによろしく | 魅力あふれる人物の波乱万丈の生涯は、人間ドラマとしてはもちろん、ミステリーとしても実に面白かった。 |
| 8 | 始祖鳥記 | 空を飛ぶことに魅せられた主人公のドラマチックな人生にはページをめくるたびに驚かされました。 |
| 9 | 動機 | どの短編もリアルな描写と絶妙のストーリーにより、徐々に追い詰められていく主人公に読み手も同化していきハラハラドキドキものです。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ハンニバル | すべてに強烈な作品。中身は十分すぎるほど濃い。サスペンスフルで、華麗で、妖しい、恐るべき物語。問題のラストは目をそむけるか、はたまた陶然となるか。 |
| 2 | ポップ1280 | 体裁はあくまでも大衆向けの軽い犯罪小説だが、その枠をはるかに超えた強烈な暗黒小説となっている。ブラックな笑いの中に暴走する狂気の世界が見えてくる。 |
| 3 | アマンダ | 非現実的な設定も娯楽作としては成功しており、ジェットコースター的一気読み超面白本。ページをめくるのが本当にもどかしい。 |
| 4 | 死んだふり | 派手さも大仕掛けもない全くの小品だが、登場人物たちの猥雑なユーモアたっぷりの虚々実々の駆け引きが存分に楽しめる。 |
| 5 | コフィン・ダンサー | ちょっとやりすぎでは、と思えるほど全編スリルとサスペンスの連続。ど迫力のアクションとあっと驚くどんでん返しに参りました。 |
・国内作品
今回は9位まで選びました。今年はこれぞ絶対の超感動・超面白本というものがなく、順位付けも少々寂しい感じでした。
中では、「新宿鮫」の読者を楽しませるつぼを心得た作者の技にまいりました。まだまだ今後も楽しみなシリーズです。
また、4、7、8位のドラマチックな物語は特に印象に残りました。
まいったのは、「週刊文春 傑作ミステリーベスト10」堂々第1位の「脳男」と「このミステリーがすごい!」第3位の「禿鷹の夜」。おいおい本当にBESTに挙げるほど面白かったのかよ、と思わず叫んでしまいました。いくら人それぞれ読み方・感じ方が異なるとはいえ、よほど私がひねくれているのか?
他に「煙」、「炎の影」、「あやし〜怪〜」などが印象に残りました。
・海外作品
1位と2位、まるで性格もボリュームも違う作品ですが、この2作が際立っていました。どちらが上位かはそのときの気分で変わるでしょう。
3位と5位はハリウッド的娯楽大作。とにかく読者を楽しませるテクニックは際立っています。
一方、4位の小品も面白さではそのようなど派手な大作となんら引けを取りません。
他に「クリスマスに少女は還る」が印象に残りました。
◇国内作品BEST8
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 永遠の仔 | 久しぶりに満点の採点を付けた本です。大長編ですが、長さなど全然気になりません。素直に感動させられる物語だし、ミステリーとしても全編緊迫感に満ちています。 |
| 2 | 柔らかな頬 | ミステリーとしてラストに疑問を投げる書評も多いのですが、私はそんなものまるで気になりませんでした。息詰まるような人間ドラマ、登場人物の精神の彷徨に圧倒されました。 |
| 3 | 燃える地の果てに | 作者お得意のスペインもので、エンターテイナーとしての作者の力量を実感させる娯楽作。ラストの衝撃が凄かった。 |
| 4 | 天使の囀り | このホラーは恐い。読んでいると自分の頭の中にまで何かが蠢いているようで、むず痒くなるような恐怖を感じてしまいました。 |
| 5 | 最悪 | 物語自体に奇抜な仕掛けやさほど思いがけぬ展開があるわけではないが、最後まで気を抜かず楽しませてくれる作品。 |
| 6 | ぼっけえ、きょうてえ | 土俗ホラー短編集で、ホラー小説大賞を受賞した表題作以外の3作に感心しました。リアルに人間の恐ろしさを描ききった作品です。 |
| 7 | 双頭の鷲 | 主人公の戦争の天才ゲクランの魅力が圧倒的な物語。とにかく破天荒なゲクランの活躍が痛快で、後半彼の出番がやや少なくなったのが惜しい。 |
| 8 | T.R.Y | 騙しのゲームが実によく練られており、登場人物も皆魅力的で、娯楽作として文句のない出来(題名以外は)。新人の作品とは思えません。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 極大射程 | アメリカ版のゴルゴ13+ランボーのような劇画的エンターテインメント。上下巻800ページの長編だがとにかく面白い。スリルとサスペンスに満ちた傑作。 |
| 2 | 狩りのとき | 2位も1位と同じ"スワガー"シリーズの最終作。こちらも上下巻で、それぞれにこれでもかと言うほどの見せ場の連発。もう満腹です。 |
| 3 | 長い雨 | 思いがけない事故への贖罪、彷徨える精神を持つ主人公に自分を投影し、めいっぱいハラハラドキドキさせられました。 |
| 4 | ボビーZの気怠く優雅な人生 | スピーディなテンポで最後まで一気に読める徹底的な娯楽作。翻訳がまた絶品。同じ作者のおなじみ探偵ニールものの「高く孤独な道を行け」も面白い。 |
| 5 | 氷の帝国 | 最近では珍しい純粋正統派の冒険小説。ツボを押さえた演出で最後まで手に汗を握る展開が続きます。 |
・国内作品
例年10作品を選んでいるのですが、今回は8位までしか選べませんでした。他にいい本もありましたがBESTに挙げるのは躊躇われるレベルでした。
ただ、1位と2位は群を抜いています。ただただ感動というか、ひたすら圧倒され、ここまで描けるかという驚きでした。直木賞の選評でいろいろ言われた両作ですが、どちらも傑作だと思います。
ミステリー関係のBEST10で上位に入っている「白夜行」、「ボーダーライン」、「盤上の敵」などはいずれも私にはさして楽しめませんでした(「白夜行」の後半は見事でしたが)。ホントにそんな凄い本たちなのかな。
他に「闇の楽園」、「クリムゾンの迷宮」、「藩校早春賦」などが印象に残りました。
・海外作品
国内作品とは異なり、読んだ本がいずれも面白いものばかりで、例年3位までのところBEST5まで選びました。
1,2位が同じシリーズになってしまいました。2作挙げるのは少し躊躇いましたが、これだけ面白ければ載せざるをえませんね。
一方、ミステリー関係のBEST10上位に選ばれているクックの"記憶シリーズ"の2作「死の記憶」と「夏草の記憶」は、昨年の「緋色の記憶」と共に薄皮を剥ぐようにじりじりと真相に迫っていく技が実に見事で奥の深い作品ですが、いずれも同様の手法で少々飽きてしまいました。
他に「惜別の賦」、「魔術師の物語」などが印象に残りました。
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | OUT | 凄い!凄い!まったく先の読めない展開。全編を貫く闇の世界。97年作品ですが、98年作品を蹴散らして文句無しの第1位です。 |
| 2 | 弥勒 | 篠田節子の作品にはドラマチックな展開も楽しみですが、とにかく人間を見つめる目の確かさと優しさに感心させられます。泣けます。 |
| 3 | 死の泉 | この妖しい物語は欧米の作品とも十分に肩を並べられる出来だと思いました。翻訳ものと言われても信じますね。 |
| 4 | 秘密 | これほど物語に入り込んでしまったのも久しぶり。身もだえするほどの切なさ。ただしラストは気にいらん。 |
| 5 | 冤罪者 | 今度こそ騙されないぞ、と思ってもやっぱり騙されてしまう。そしてそれがまた楽しみになるのです、折原一の本は。 |
| 6 | 奇跡の人 | これまた切ない物語でした。主人公のひたむきさが胸を打ちます。ミステリーとしても十分面白い。 |
| 7 | 理由 | 今までの作者の本とはまるで違うドキュメンタリータッチの暗い作品。後半の盛り上がりはさすがだが、もう少し短くならなかったものか。 |
| 8 | まやかし草紙 | 和歌をうまく使い、オカルトから色模様までサービス精神の実に旺盛な平安京ミステリー。 |
| 9 | 時計を忘れて森へいこう | 謎解きとしては全然たいしたことのない作品だが、不思議なくらい気持ちの良い爽やかさが全編に感じられます。 |
| 10 | 夜光虫 | 恐ろしい狂気の世界。ここまで人間を憎んで描けるか、というくらいの暗黒パワー全開作。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | ミスター・マーダー | 巻頭からラストまで一直線に突き進んでいく超面白本。おまけに人間ドラマも忘れていないところが立派です。 |
| 2 | 闇をつかむ男 | 「ミステリー」とはこういう物語のことを言うのだ、という教科書的な作品。同じ作者の「緋色の記憶」もいい。 |
| 3 | ビッグ・ピクチャー | 映画化の話が進んでいるそうですが、先の読めない展開は読んでいて快感です。読む者にもう一つの人生の夢も見させてくれます。 |
・国内作品
今年は97年発行で読み逃していた「OUT」と「死の泉」が実に衝撃的で、98年の作品では「弥勒」だけがかろうじて対抗した感じでした。
一番夢中になって読んだのは「秘密」でしょうか。ただ、好きな本かというと?、後半から終盤がもうひとつ。
5位以下は面白さの点で若干小粒です。もう一度考えれば容易に順位は変わるでしょう。
話題になった「理由」は重量感のある作品でしたが、本筋とはやや外れた余分な記述が気になりました。その点、昨年の「レディ・ジョーカー」にはかなわないと感じました。
その他、「密告」、「六番目の小夜子」、「流沙の塔」などが印象に残りました。
また逢坂剛の「燃える地の果てに」は読みたかった。でもあの厚みには二の足を踏まされました。通勤に持ち歩くのは厳しい。
・海外作品
外国ものはたいして数を読んでいないので、3作だけ選びました。しかしこの3作はどれも本当に面白い。
1位にした「ミスター・マーダー」はミステリー関係のベスト10からは無視されたのかさっぱり名前も出てきませんが、この面白さは否定できないでしょう。面白さ重視の私としては文句無しです。
その他、「ジャクソヴィルの闇」、「黒い薔薇」が印象に残りました。
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 嗤う伊右衛門 | 京極夏彦は苦手でしたが、これは別。美女から醜女になってしまいながら誇り高く毅然としたお岩さんのキャラクタがとにかく最高でした。 |
| 2 | 頭弾 | スリルに富んだ胸躍る大陸活劇ロマン。主人公はもちろん敵味方とも登場人物が魅力いっぱいでした。 |
| 3 | 逃亡 | まじめな力作。戦争責任という重いテーマを持ちながら、サスペンスフルな展開にラストまで引っ張られました。 |
| 4 | 浪漫'S 見参!桜子姫 | 無類の美女で天真爛漫な剣の達人なんているわきゃないが、いいんです、面白ければ。思わずかけ声をかけたくなるようなかっこよさでした。 |
| 5 | しゃべれども しゃべれども | 純粋な人たちのほんわかとした気持ちのいいお話です。殺人の話ばかりでなくこういった本が増えるといいですね。 |
| 6 | 氷舞−新宿鮫Y | 久しぶりに鮫島警部大活躍の新宿鮫らしい作品。不正に敢然と立ち向かう姿は久しぶりにかっこよく、しびれました。 |
| 7 | レディ・ジョーカー | すごい本でした。ものすごく深いです。日本語の文章の巧みさ、表現力の深さに圧倒されました。ここまでやるかという感じです。 |
| 8 | 神々の山嶺 | 作者夢枕獏の山への熱い熱い思いがもろストレートに伝わってきて、その迫力に圧倒されました。 |
| 9 | 鎮魂歌−不夜城U | 話が複雑すぎて分かりにくかったですが、暗黒面のパワーがすごい。全編に悪の匂いが立ちこめるコワイ本でした。 |
| 10 | 瞬間移動死体 | テレポート殺人などという相変わらずSFチックなトンデモない設定ですが、見事な謎解きを見せる楽しい本でした。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | グリーンマイル | 実に見事なサスペンス、スリラーそしてファンタジー小説。はらはら、ドキドキ、そして感動。国内海外あわせてのBEST1です。 |
| 2 | フロスト日和 | シリーズ第2弾。相変わらず下品なジョークの連発。とても込み入った話だが構成はしっかりしており抜群に面白い。 |
| 3 | 死の蔵書 | 本好きにはたまらない作品です。話ももちろん面白いですが、随所で思わずニヤリとさせられました。 |
・国内作品
97年の国内作品は、「蒼穹の昴」を筆頭に「蒲生邸事件」、「ゴサインタン」、「山妣」、「不夜城」、「奪取」などスゴイ作品が目白押し状態だった昨年に比べると駒不足の感は否めませんでした。
中では、今まで電話帳のようなノベルズを1冊読んだだけで敬遠していた京極夏彦でしたが、「嗤う伊右衛門」は読んで良かった。本当に感心しました。
また12月に読んだ「レディ・ジョーカー」の深い日本語の文体には凄みさえ感じるほどでしたが、面白さという点ではこのくらいの順位でしょうか。
その他、「女たちのジハード」、「枯れ蔵」などが印象に残りました。
順位は思いつきで、また考えればかなり入れ替わると思います。
・海外作品
外国ものはたいして数を読んでいないので、3作だけ選びました。しかしこの3作はどれも本当に面白い。国内ものの1位もこの3作には負けてます。
3作ともけっこうな長さで展開も複雑なのですが、構成がしっかりしているので最後まで引きつけられました。
昔の翻訳ものにあったような日本語の文章になっていないような読みにくさは全くなく、良質のエンタテインメントでした。
その他、「罪深き誘惑のマンボ」が印象に残りました。
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | 蒼穹の昴 | 自信を持って「この本は面白い!」といえる作品。圧倒的な歴史描写、人物描写で、読み始めれば止まらない、読み終わってからももっと続いて欲しいと思う面白本です。 |
| 2 | ゴサインタン−神の座− | ホラー色の強い作品ですが、感動的な人間ドラマになっています。まるで先の読めない展開が快感です。 |
| 3 | 蒲生邸事件 | 職人宮部みゆきの力量を十分に示した作品。エンタテインメントのあらゆる要素を盛り込んだ超豪華娯楽作でした。 |
| 4 | 山妣 | どんな怖い話かと思ったら、実にドラマチックでスリリングでかつ感動的な本でした。登場人物らのまがまがしい設定も面白く、わくわくさせられます。 |
| 5 | 奪取 | 真面目な作風だった作者がユーモアを交え新境地を感じさせる痛快娯楽作。500ページ以上の長さを感じさせない面白さです。 |
| 6 | 不夜城 | 背筋が寒くなるような裏切りと迎合の連続。特に終盤は読んでいてドキドキが収まらないほどの衝撃を受けました。 |
| 7 | 七回死んだ男 | わたしはこの作品で西澤保彦を知りました。とんでもなくぶっ飛んだ設定ですが、しっかり謎を解く本格推理ものです。 |
| 8 | 垂里冴子のお見合いと推理 | 読んでいてとても気持ちの良くなるミステリー。殺伐とした話が多い中、この爽やかな雰囲気は貴重です。 |
| 9 | 誘拐者 | 作者はトリック頼みという以前の感じから物語性もかなり出てきました。素直な語り口で読みやすく面白い本です。 |
| 10 | 人格転移の殺人 | 書名のとおり登場人物の人格が次々に転移していくという無茶苦茶な状況の中での殺人事件。でも謎はしっかり解いてくれます。 |
| 順位 | 書 名 | 寸 評 等 |
|---|---|---|
| 1 | バースへの帰還 | ミステリーのお手本になるような作品で、読者を笑わせ、はらはらドキドキさせ、謎解きで納得させる超面白本です。 |
| 2 | ビッグ・タウン | 1位とはだいぶ差がありますが、どんでん返しが続き意外な展開が拾いものの面白さでした。 |
| 3 | 死の裁き | 小粒な物語だが、作者が事件記者時代に集めた面白いエピソードを随所にちりばめたサービス精神旺盛な作品。 |
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