[寸評]
「不夜城」第1作から始まった劉健一を軸とする物語の完結編。 今回も憎しみと裏切りに彩られた悪の世界が執拗に描かれる。 2作目の「鎮魂歌」に比べると話がストレートで、分かりやすい。 劉健一が影の帝王のように君臨しているあたりはちょっとやりすぎだが、今回の主人公武基裕がまさに第1作の劉健一をほうふつとさせるように、どん底に落ちなおあがく様が迫力十分。 完結編ということか、終盤やけに急ぎすぎた感じが残念。
[寸評]
マーゴリンの作品は人物描写や社会性など深みは無いが、面白さという点ではどれも満足できるものばかりで、本作も”ページターナー”ぶりを遺憾なく発揮している。 あっと驚くというところまでは行かないが、適度に意外な展開がスピーディに繰り広げられる。 主人公が一難去ってまた一難、次はどうなるかページを繰らずにはいられない。 弁護士出身でありながら、難解な法律用語を駆使することなく、法廷場面も娯楽性に徹している。
[寸評]
長い下積みから突然とんとん拍子に階段を駆け上がりだし、ついに頂点を極めたと感じた瞬間、坂を一気に転がり落ち、そして再び、という激しい浮沈の物語。 600ページを超える長さを感じさせない面白さが最後まで持続する。 転落の理由、再生の手法も荒唐無稽でない納得できるものが用意されており、終始娘への愛情を持ち続ける主人公の姿も好ましい。 アメリカの大富豪の超豪華な屋敷に招かれるくだりが実に面白い。
[寸評]
先日、直木賞を受賞した作品。 面白さという点では前回読んだ「太陽と毒ぐも」のほうがかなり上だが、じっくりと人と人の関係が描かれる。 現在の小夜子が語る部分と、女社長楢橋葵が自らの高校時代を語る部分の2つが交互に綴られていく。 人間同士の付き合い方などを考えさせるような味わいのある物語。 他人との付き合いに不器用な小夜子が、それでも再び踏み出していくあたり、ほっとするような、希望の持てるラストが良い。
[寸評]
16世紀頃のアマゾン奥地の女だけの部族を舞台とした摩訶不思議な物語。 女児しか産まれないはずの村に隠された男の赤ん坊とその母親の運命、男子禁制の村に入り込んだ2人のスペイン男。 これらが災いの種となって起こる恐ろしくも幻想的な話は今まで読んだことのない世界で、その構成力には感心した。 後半の赤弓を中心とする展開は、幻惑の度合いが増し、はるかに現実を突き抜けた世界が続き少々とまどいました。