[寸評]
時代小説界で活躍中の作者の3年ほど前の作品。
物語は鉄斎を追い込む話と銀次の結婚話の2つを柱としている。
ミステリー色の濃い作品だが、謎解きの方は途中で割れてしまう感じで終盤の盛り上がりもあっさり。
一方、銀次と勝ち気なお芳の夫婦話はいい雰囲気で読んでいて気持ちがいい。
比較的短めの物語で、韋駄天の銀次とも呼ばれる彼の活躍エピソードがひとつ加わればさらに読み応えが出ただろう。
[寸評]
法曹界を舞台にしたサスペンス小説で有名な作者の5作目。
「タイム」誌が選ぶ99年度ベスト・ブックス第1位だそうだが、前半は筋についていくのに精一杯。
法律を駆使した駆け引きのテクニックがリアルに描かれるが、私には難しくてよく分からん。
しかし後半ロビーについて驚きの事実が明らかになって以後、捜査側が表だった攻勢に転じると俄然サスペンスの度合いが上がり息もつかせぬ面白さになる。
採点は前半3つ星、後半4つ星。
《未読だった過去の傑作》
[寸評]
83年に亡くなったハードボイルドの巨匠の64年の代表作でアーチャーものの第11作。
リュウ・アーチャーというと映画版「動く標的」のポール・ニューマン(映画ではハーパーという名だった)の印象が私には強くて、若干の違和感を感じながら読むこととなってしまった。
非常に複雑な人物関係に加え、過去と現在が交錯した事件は読み通すのに少々苦労する。
しかし読み終わって、本作は探偵による謎解き話ではなく、探偵を狂言回しとした人間悲劇のドラマと感じさせられました。
[寸評]
一貫してハードボイルドサスペンスを書き続ける作者の任侠活劇もの。
長編だが猪突猛進していく主人公そのまま、物語は一気読みの面白さとなっている。
脇役陣の配置、絡みも上手く、死んだ父親にこだわる公平の浪花節的な描き方も好ましく読める。
日航機の墜落事故を絡めたミステリー色も面白く、色恋沙汰も忘れず、とサービス精神旺盛な娯楽作。
肝心の真相の唐突さだけが惜しかった。
[寸評]
第53回日本推理作家協会賞の短編賞を受賞した表題作など4編の作品集。
松本清張賞の「陰の季節」と同様にいづれも緊迫感に満ちた物語ばかり。
主人公がタイムリミットに向け焦りを募らせながらも徐々に核心に近づいていくという筋立てはややワンパターンだが、主人公の窮地が非常にリアルに描かれており一気に読ませる。
中では、受賞した表題作よりも折原一ばりの謎とサスペンスに満ちた「逆転の夏」が素晴らしかった。
[あらすじ]
江戸の岡っ引き、銀次は死人の出た現場でいつも体を震わせ泣きじゃくることから「泣きの銀次」と呼ばれていた。
妹が暴漢に襲われ殺されたとき同心の表勘兵衛の小者についてから早や10年、結局下手人は分からなかった。
それからも無惨な事件は続き叶鉄斎という国学者が疑惑の線上にあがるが決め手がない。
そのうち鉄斎を見張っていた銀次の仲間が殺される。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
人身被害専門弁護士のロビー・フェヴァーは、判事に賄賂を贈り有利な裁定を引き出していた。
ある日連邦検事が彼を訪ね、大幅な罪の軽減と引き替えに郡裁判所にはびこる贈収賄の囮捜査への協力を要請される。
検事の最終標的は郡最高裁判所首席裁判官だった。
FBIのイーヴォンなる女性を秘書役に、ロビーは盗聴装置を身に付けて判事たちに接触する。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
私立探偵リュウ・アーチャーのもとを訪れた青年アレックス。
新婚旅行の初日に妻のドリーがホテルから失踪したという。
やがてドリーは大学の補導部長の母親の運転手をしながら、ドロシーという名で大学に通っていることを突き止める。
リュウは調査の過程でドリーの主任教授のヘレンから脅迫を受けていることを告げられるが、やがてヘレンは射殺される。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
体がでかく喧嘩に強い暴力団組員の菅井公平は新宿の賭博場の用心棒をしている。
父親が死んだとの知らせで故郷の高崎へ。
警察官だった父親は、15年前公平が高校生の時傷害事件で少年院送りとなったことで警察を辞めた。
厳格だった父親が酔って電車に轢かれたこと、最近何かを調べ回っていたことを聞き、気にかかった彼は手がかりを求めて歩く。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
U警察署で30冊の警察手帳が盗まれた。
手帳の一括保管は、紛失事故防止を狙って県警本部警務課の貝瀬警視が刑事部の反対を押し切り導入した新制度だった。
当夜の当直責任者は刑事課の係長。
窮地に立った貝瀬は内部犯行と読みU署に乗り込むが、管理部門の長い彼は現場の警察官にあしらわれ、解決の糸口も掴めず焦りばかりが募る。
[採点] ☆☆☆☆
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