[寸評]
ダイヤモンド警視シリーズの第5作。
相変わらず頑固者の警視と彼を取り巻く妻や同僚、部下たちとのユーモアに満ちたやりとりが絶妙。
今回は記憶喪失という題材を取り入れ、複数の事件を描き、伏線を縦横に張り、ラストは見事に謎が解かれる。
全体にやや長めで、記憶喪失女性と他の事件との関連がなかなか結びつかない点が読む側としてはちょっとしんどい。
5作目で特筆するような面白さはないものの安心して十分に楽しめるミステリー。
[寸評]
「検察捜査」で乱歩賞を受賞した作者の法律サスペンス。
たいそうな作品名だと思っていたら本当に「戦争」というにふさわしい凄い内容でした。
さすが現役弁護士だけあって説得力、リアリティが違う感じ。
法曹界を取り巻く状況などが分かりやすくかつ面白い。
もちろん娯楽性も十分で、展開が二転三転し最後まで引っ張られる。
ただ実状に深入りしすぎて裁判所の過重労働を訴えるのが主眼かと勘ぐりたくなるほどでしたが。
[寸評]
前作「冤罪者」と同系統の本格ミステリー。
登場人物も一部重複している。
前作よりやや落ちる印象だが相変わらず折原節は好調で、騙しのテクニックは見事。
余分な描写はいっさい無く、すべての記述が真相に結びついていく。
今回は、実名の出せない「少年A」や過去の類似事件、失踪女性が実は(おっと!これ以上は書けません)など読者を幻惑する技が一杯。
ただ終盤、いよいよの前に犯人が割れてしまった感じで少々残念。
[寸評]
比較的軽いノリのコメディータッチに味付けされた犯罪ミステリー。
作者の他の本と同様、サクサクと読めてしまう。
犯罪、恋愛、お涙、笑いにコンゲームまで、いろいろな要素がごった煮のように詰め込まれ軽快に物語は進んでいく。
と言って、単純な話ではなく2転3転とけっこう楽しませてくれる。
秋穂にしろ彼女と手を組むモデル男にしろ、ちょっと勘の良すぎる名探偵なのは物語の性格上まぁ許しましょう。
[寸評]
この小説、3,40代の男が読むとかなり主人公に自分を投影してしまうのではなかろうか。
満ち足りた生活を送りながらなお孤独感を感じる男、罪を犯しながら逃れその贖罪が頭から離れないジェイスンの姿が実に良く表現されている。
序盤のだるさを我慢すれば物語も緊張感に満ちており、後半は目の離せない展開が続く。
ミステリーとしても人生のドラマとしても読み応えのある作品。
余韻に満ちたラストもいい。
[あらすじ]
病院の駐車場で傷を負い意識不明の状態で発見された女性は記憶をすっかり失っていた。
とりあえず社会福祉事務所により公共宿泊所に入れられた彼女は同宿の肥満女性エイダと"自分探し"を始める。
一方、事件の少ないのが原因で体調が悪くなっていたバース市内の警察署殺人捜査班のダイヤモンド警視は、このところの不審な連続自殺事件の捜査に協力することになる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
沖縄の海岸で最高裁判所判事が殺されているのが発見された。
判検交流で最高裁に出向中の真樹加奈子は検察庁幹部から最高裁の内部捜査を命じられる。
裁判所、検察、法務省、警察そして内閣情報調査室、それぞれの機関が牽制し合い捜査はなかなか進まない。
やがて将来の莫大な利権に絡む原子力特許とそれに付随したハイテク技術に関する訴訟が浮かび上がる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
埼玉県の小都市で女性の失踪事件が起こる。
消息が途絶えたバス停には「ユダの息子」と書かれた紙切れが残されていた。
この町では15年前に3件の女性失踪事件が起き、迷宮入りになっていた。
しかし今回の失踪女性の捜索の過程で以前の失踪女性たちの白骨死体が次々に発見される。
そこには「ユダ」と書かれた紙切れが。
そして15才の少年Aが逮捕される。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
1986年、バブルがどんどん膨らみだした時代。
海道秋穂は東京の27才独身OL。
たまたま入った銀座の宝石店で、隣の客が置き忘れたガーネットの指輪を持ち去ってしまう。
その夜部屋に侵入してきた2人の男に乱暴されてしまうが、翌日自分のアパートとほとんど同じ名前の近くのマンションでOLが殺される。
どうも自分は殺された女と間違われて襲われたらしいのだ。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
サンフランシスコで弁護士をしていたジェイスンは、妻子と別居し祖父の代から所有している葡萄園に移り住む。
葡萄畑の再生にかかった彼のもとにやがて妻子が手伝いに現れ、再び共同生活が始まる。
弁護士業も再開し公私ともに忙しくなった彼だが、表現できない孤独感に襲われ時々ひとり夜の山道をドライブすることがあった。
ある雨の晩、事故を起こす。
[採点] ☆☆☆☆
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▲ 「ダイヤモンド警視シリーズ」
イギリス南西部バースにある警察署の警視ピーター・ダイヤモンドを主人公とするシリーズ。
「最後の刑事」、「単独捜査」、「バースへの帰還」、「猟犬クラブ」そして本作と続く。
時代に逆らい自分のスタイルで捜査を進める短気なロートル警視の姿が実にいい。
風光明媚なバースの様子やダイヤモンドを取り巻く脇役陣もしっかり描かれている。