[寸評]
就職大氷河期において、出版業界を目標に就職活動に奔走する女子大生の姿をユーモラスに描いた青春小説。
昨春に大学を卒業したばかりという作者ゆえ、"今"の若者像がごく自然に描かれておりとても好感が持てる。
また瑞々しい感性だけが売り物の作品ではなく、政治家の後継者選びなどという"俗"な面白さもある。
唯一、可南子と恋人西園寺の逆ペタジーニ関係が私には理解できませんでしたが。
[寸評]
まずは圧倒的な物語性に驚かされる。
表具師から船乗り、木綿商、時計師、入れ歯師と職を変えていく幸吉の波瀾万丈、数奇な人生が実にドラマチック。
また当時の政治状況から物の流通、人々の暮らしぶり、町の様子までが非常に細かく描写されており、感心させられる。
欲を言えば、全体に比較的感情面を抑えた描写で、空を飛ぶことに取り憑かれた幸吉の情熱、心の闇、周囲の人々との交わり等もっと思い入れたっぷりに描いて欲しかったところ。
[寸評]
私と感性が合わないようで3年ほど敬遠していた作者でしたが、この作品はかなり印象が違いました。
小難しい言葉の垂れ流しも少なく、現実味のない脇役も減りました。
今回は主人公が一番現実味がないが、痛快アクションで暴れ回るスーパーサラリーマンなのだから十分許せます。
序盤で物語に引きつけられ、スムーズな展開、よく練られたプロットに感心しつつ、ラストまでハードボイルド任侠活劇を楽しみました。
[寸評]
冷戦時代の東ドイツを舞台に、圧倒的なスリルとカーアクションが味わえる冒険小説。
元レーシングドライバーの作者による車の追跡・逃走場面は読んでいて思わず足を踏ん張ってしまうほど臨場感たっぷり。
事実かどうかは明らかでないが、あの時代いかにもありそうな設定で冒頭から物語の世界に引きつけられる。
寄り道、余分な描写は一切無く、一直線に物語は突き進んでいく。
不満な点は邦題くらいのものか。
[寸評]
大きな仕掛けも派手なアクションもないが、とにかく面白い。
特に悪賢いジャックとノーラに振り回されるチャドが傑作。
ジャックはノーラに計画を持ちかけ、ノーラはチャドに計画を持ちかけ、そしてジャックはチャドにも計画を持ちかける。
おつむの少々弱いチャドは混乱するばかり。
次はどう展開していくか、読み手の期待は増すばかりの絶妙の運びが見事。
猥雑な雰囲気が充満した心理サスペンスコメディー。
[あらすじ]
女子大生の可南子は最終学年を迎えようやく就職活動に入る。
一生懸命漫画を読み続けてきた彼女が目指すのは出版業界、漫画雑誌の編集者。
のんびりした友達に囲まれながらも緊張感のある日々が過ぎていく。
彼女は現役の代議士の娘で、平素は後妻の義母と腹違いの弟の3人で暮らしており、折しも後継者選びの親族会議が開かれることになった。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
沈滞腐敗した江戸幕藩体制のもと、疾病の蔓延や凶作による飢餓の続いた天明年間(18世紀末頃)。
6月の未明、備前岡山城下では同心を先頭に60名余りの捕り方が一軒の家を取り囲んだ。
紙屋の幸吉が毎晩鵺(ぬえ)となって空を飛び回り、藩の失政をあざ笑い民を煽動しているという。
幸吉は政治とはお構いなくただ空を飛ぶことに魅せられていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
40代後半の堀江は大手飲料会社の宣伝部の課長。
希望退職に手を挙げ、あと2週間で会社を去る。
そんなとき会長の石崎から、プライベートに撮ったビデオの映像をCMに使えないかとの話が。
それはマンションのベランダから落ちた幼児を通りすがりの男が間一髪キャッチするという衝撃的な映像だった。
しかし堀江はその映像に疑問を感じる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1982年、アメリカ空軍マックス・モス軍曹は除隊を目前に特殊任務に志願する。
東ドイツ領内のアメリカ軍事連絡部に駐在し、ソ連側の偽誘導電波等によって東独領内に強制着陸させられた軍用機の乗員や重要部品を、チューンアップされた車を駆って奪還するというものだ。
彼は語学に堪能でレースの経験もあった。
折しも新型攻撃機A-10Fの訓練が東独領空近くで行われることになる。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
ハワイに住む富豪の老悪党ジャック・ウルフは60近いが、妻のノーラは30代後半の女盛り。
彼女の最新の恋人はチャドという年下のサーファー。
ある日ノーラはジャックから破産寸前と打ち明けられ、計画をもちかけられる。
ジャックが"死んだふり"をしてチャドを殺人犯に仕立て多額の保険金を掴むというもの。
ノーラはこの機にジャックを亡き者にしようとチャドを焚き付ける。
[採点] ☆☆☆☆
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