[寸評]
古書の蘊蓄ミステリーで名高い作者の待望の新作。
今回は本ではなく、全盛期のラジオの世界を舞台としたミステリー。
ホリーを追って辿り着いたニュージャージーのラジオ局でジャックは脚本家として大活躍するのだが、そのあたりのドラマが実に生き生きとしていて面白い。
ジャックの創作ドラマや日系人の強制収容への批判など作者の良心が伺える。
一方、ナチの陰謀に絡めた謎の方は霞んだ印象で終盤の盛り上げも今ひとつ。
[寸評]
このところ矢継ぎ早に怪作を連発している作者の最新刊。
他の諸作同様、どうしてこんなやつ思いつくのと感心するくらいのとんでもない破滅型人間のオンパレード。
崩れさる家族と血縁とは無縁でも堅く結びついていく家族の2つの対比が面白い。
終局に向かってひたすら突き進む狂気の世界はいつものパターンだが、無理矢理押し切っていくパワーには圧倒される。
設定にもうひと工夫が、また終盤にもうひとひねりが欲しかったところ。
[寸評]
処女作にして多くの賞を受賞したハードボイルド。
酷寒の大地・風土、異民族の葛藤など作品の背景が興味深く描かれ、物語もよく整理されている。
主人公がスーパーマンではなく、家族で悩み、人並みに恐怖心を持ち、妻の浮気相手に逆にのされてしまうあたりも好感が持てる。
ただ、善悪の図式が単純なこと、家族の愛を求めながら夫婦ともしっかり恋人もいるというのがいかにもアメリカ的でしらける。
最後は泣かせるが、ちょっと感傷的すぎるか。
[寸評]
作者お馴染みの暗黒ノワールものだが、今までの諸作の集大成的作品になっている。
金、女、出世、さまざまな欲に駆られとち狂った者たちが、全編にわたってのたうち回る様は思わず頁を閉じたくなるような異様な迫力。
主人公3人の視点で交互に語られていく物語は、徐々に糸が絡まっていくオーソドックスな流れだが、とにもかくにもこの長さを全編一貫した暗黒のムードで保たせる作者の力は凄い。
地に墜ちた者たちの悲鳴に満ちた大作。
[寸評]
二つの惨劇と名乗らぬまま服役していく青年の奇妙な事件がいかにも思わせぶりに並行して描かれ、読者を幻惑する技は見事。
頑なに身元を明かさない理由は何なのか、また殺人事件の方も後半になってさらに謎は深まり、どのように決着をつけるのか期待は増すばかり。
そして衝撃の真相が・・・というところだが、その衝撃度はまぁ3つ☆くらいかな。
とにかく話の引っ張り方が上手すぎて、肝心のラストはその期待に応えるにはちょっと荷が重すぎた感じ。
[あらすじ]
1942年、カリフォルニアの留置場。
ジャック・ディラニーは食堂で喧嘩騒ぎを起こし、逮捕される。
面会に来た友人ケンダルから、ホリーという女性が何らかのトラブルで助けを請う手紙を送ってきたことを告げられる。
消印はなんと3か月前。
かつてホリーを愛していたジャックは作業中に脱走。
彼女の家に向かうがホリーは行方不明になっていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
妻と子供1人の平凡な家庭を持つ駒江知弘は通勤電車での痴漢行為に凝っていた。
また妻の美穂は子供そっちのけでスポーツクラブへ通っていた。
ある日、知弘の昔の女から異様なFAXが送られてきて夫婦の仲は急速に崩れていく。
一方、美穂の昔の男で、殺人罪で刑に服していた和也が出所した。
裁判で自分に不利な証言をした美穂への復讐を胸に。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
カナダに近いアメリカ北部ミネソタ州の湖畔の町。
近くにはインディアン居留地もある。
元保安官コーク・オコナーはインディアンの血も少し混じっている。
雪嵐の中を新聞配達に出た少年が行方不明となり、母親から相談を受けたコークが配達先の判事の家に行くと、判事が銃で自殺していた。
状況を不審に感じて調べ回るコークは何者かから脅迫を受ける。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
元警官の富永は、暴力団幹部の情婦と通じ日本を追われ香港マフィアのもとにいた。
ボスから、チンピラにたぶらかされた娘をヴァンクーバーから連れ戻し相手の男を殺すことを命じられる。
カナダには香港時代から毛嫌いしていた悪徳警官の呉達龍が移民して市警にいた。
また州捜査局捜査官で出世に取りつかれた日系カナダ人ハロルド加藤が二人に絡む。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
埼玉県久喜市。
冬の早朝、田沼家の一家4人が殺害されているのを新聞配達の学生が発見する。
大学生の娘は難を逃れ、離れに住んでいた弟は行方不明となっていた。
さらに10日ほど後、田沼家から1kmほど離れた吉岡家でも老夫婦が殺害されているのを同じ新聞配達が発見する。
一方、池袋で万引で逮捕された青年は名前・身元を明かすのを拒んだ。
[採点] ☆☆☆★
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