◎96年2月



[あらすじ]

 はるか昔、800年代の中国は洛陽。中流貴族の末娘明珠は、父親の仕事上の失策の後始末のため、親よりも年嵩の醜い地方官のもとへ妾として送り込まれてしまう。 気丈な明珠は館を脱出し、ふとしたことから盗賊、白楽天の玄孫、役人などが入り乱れた陳王の秘宝探しに一枚加わることとなる。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 年末に読んだ
「涼月記」で裏切られたにも関わらず、再度藤水名子にチャレンジ。 明珠があっさり手込めにされ妾となってしまうあたり、またかと危惧したもののそれ以降彼女が脱出を決めてからはなんとか持ち直した。 洛妃の宝珠を追っての続編も是非お願いしたい。 しかし相変わらず強くてかっこいい男のオンパレードだが、違った趣向の藤水名子も読んでみたい。


 


[あらすじ]

 ベトナム難民のリンは偽造パスポートで入国し、新宿で働いていたところを暴力団に目をつけられ拉致され、売春を迫られる。 組長をはずみから撃って逃げ込んだ所は、今日で閉店するスナック。 新宿で不器用に生きてきて明日からのあてもないマスターの克彦は、店の客と協力して警察と暴力団から彼女を逃がそうとする。

[採点] ☆☆☆

[寸評]

 「佐々木譲”幻の傑作”ついにノベルズ化なる」などという帯の文句につい買ってしまいました。 それなりに緊迫感もあり、それなりにラストに向けて盛り上がっていきました。 しかし”傑作”という言葉は簡単に使わないでほしいなぁ。 ラストからエピローグもメロドラマかちょっと気恥ずかしい青春ものの雰囲気でありました。



[あらすじ]

 フリーカメラマンの布施のもとに、彼が撮った芸能人のスクープ写真のバックに写っている男の消息を尋ねる手紙が届く。 偶然その男の居所・氏名を知った布施が、親切心から照会者にそれを教えてしまったことから、恐ろしい連続殺人に巻き込まれていく。 それは、20年前に起きた乳児誘拐に端を発したものだった。

[採点] ☆☆☆☆

[寸評]

 いかにも
折原一らしい謎が一杯のミステリー。 全体の構成は、思わせぶりな導入部や犯人の独白が繰り返し入るところなど今までのこの作者のパターンそのまま。 しかし、国産ミステリーには、いかにも読者をだましてやろうといった作者の一人遊びが鼻につくものが最近多い中、この作品はテンポがあって読みやすく、謎解きも納得させられ、読んで楽しいものになっている。 特にラストがいい。 それまでの残酷さを一掃する涙ものの幕切れでした。


[あらすじ]

 ある日、長年にわたって動物種に虐げられてきた植物種の反撃が、全世界で一瞬の金色の光となって起きた。 これにより、ほとんどの動物は蒸発してしまう。 会社員の星尾はなぜか蒸発を免れ、わずかに残った人々と合流すると共に、インターネットで世界中の生存者と連絡を取り合う。 それにより、もう一度光が来ること、蒸発を免れるワクチンのあることを知る。

[採点] ☆☆☆★

[寸評]

 巻頭、新幹線の座席に中身がすり抜けた服だけが座っているところからグッと引き込まれ、もう一度光が来ることが分かったあたりからターボが利いた感じでたいへん楽しめた。 でもせっかくのこんな面白い設定がたった250ページではもったいない。 また、全体にSFのようなサスペンスのような青春小説のような中途半端な印象で、いずれかのジャンルに焦点を合わせてもっと書き込んでほしかった。 登場人物の性格付けも書き足りない。

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▲折原一
 国内ミステリー作家の中では比較的好きな作家の一人ですが、最近はちょっと離れていました。 「異人たちの館」、「水底の殺意」、「奥能登殺人旅行」くらいですか。 トリックで押しまくる感じは徐々に薄れてきたようで、私には読みやすくなりましたが、逆に物足りないと思っている人も多いようです。