[寸評]
「新宿鮫」シリーズの第9作。
5年ぶりの新作だが、懐かしさも加わり、相変わらず面白く、楽しめた。
ただ前半は少々まどろっこしく、後半は急ぎすぎた感じ。
長さの割にアクションも少なく、終盤の一気呵成は見事だが、全体には見せ場が足りない。
設定の割に話が小さく、やっぱりヒーローの相手にはもっと派手で強いやつを出さないと。
久しぶりに登場した悪役の仙田も、こんなに情のある男だったのか、と意外というか設定に疑問も。
[寸評]
折原一の叙述トリックの新作。
人物、時間、場所等を複雑に絡み合わせた、多面的、重層構造で、読者を翻弄する。
終盤、それらがしっかりとまとまっていく様、かつそれも多重化させているあたり、相変わらず見事だ。
今回は底なし沼なんてものまで登場させ、おどろおどろしい雰囲気を増している。
全体としては、作者の作品の中では水準下レベルで、盛り上がりに欠けた印象。
警察の影が薄いので、追われる者の焦燥感がない。
[寸評]
同名映画のノベライズということであまり期待していなかったが、冒頭から引き込まれてしまった。
監督自らが小説化したものだが、小説としての完成度も非常に高い。
ある事件の関係者が、章ごとに語り手となって物語は進んでいく。
自分の心の中を恐る恐る探るような語り口、リズミカルな文章は、並みの小説では味わえないものだ。
短い物語なのに、親子、兄弟の、自らも知らず心の奥に存在したものが浮き出てくる様子が見えるようだ。
[寸評]
前作以来7年ぶりの詐欺師伊沢修の登場。
今回は舞台が遺跡発掘、古文書に宝探しと、伊沢がインディージョーンズに見えます。
前作は、二転三転、痛快な騙しで楽しませてくれたが、本作も面白さは衰えていない。
ただ今回はスリルが足りない。
ハラハラドキドキ感が希薄だ。
捕虜収容所脱走場面にしても、軍隊が襲撃してくる場面にしても緊迫感が湧いてこない。
序盤に料理対決があるのだが、これが一番わくわくしたな。
[寸評]
現代アメリカンハードボイルド・ミステリーにおいて、マイクル・コナリーに並ぶのがペレケーノスではなかろうか。
この黒人私立探偵の物語も存分に楽しませるが、序盤がキツい。
翻訳ものは人の名前が覚えにくいものだが、この物語の場合、序盤に多くの者が次々出てくるので、話についていくのが精一杯。
対立の構図は単純なので、一度頭に入いればいいのだが・・・。
批判的ではあっても銃で倒す決着の付け方が多いのもアメリカ的。
[あらすじ]
新宿署生活安全課の鮫島刑事はキャリア警察官でありながら、過去のある事件以来、新宿署に留め置かれている。
基本的にひとりで動く彼は新宿鮫として恐れられていた。
新宿中央公園での外国人同士の喧嘩騒ぎ。
被害者は大麻を所持していたため逮捕された。
運び屋をしていてかなりの量を奪われたらしい。
捜査の過程で鮫島は盗品市場の存在を知る。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
埼玉県蓮田市。
新興住宅街と在来農村地帯が共存する町。
2か月ほど前、黒沼という小さな沼の近く、昔は豪農だった旧家の滝沢家の一家4人が忽然と姿を消した。
事件性がないということで警察も失踪当初以降は捜査していない。
作家の五十嵐みどりは、この事件?を記録しようと、誰もいない家を訪れる。
そこで最初に失踪に気付いた当主の弟に話を聞く。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
早川猛は東京在住の売れっ子写真家。
母親の一周忌に久しぶりに実家のある町に帰ってきた。
仕事でカナダへ行っていて親の葬式にも顔を出さなかった。
父親とは昔から相性が悪く、会えば互いに激しい言葉を浴びせるような状態だ。
実家はガソリンスタンドを経営し、兄の稔が取り仕切っている。
スタンドには高校生の頃付き合っていた智恵子が働いていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1916年、混乱の中国。
西太后お気に入りの軍人だった袁世凱は、時代の流れを読み、革命派と交渉して皇帝を退位させ、その後武力で革命派に圧力をかけ、新しい中華民国の初代大総統となった。
革命派は袁世凱を倒すため、詐欺師の伊沢修に助力を願い出る。
金儲けの匂いを嗅いだ伊沢は、かつて運命を共にした仲間、関虎飛と再会する。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
デレク・ストレンジはワシントンDCの私立探偵。
死刑の判決が濃厚なギャングのボスだったオリヴァーのために、弁護士の依頼で反証を挙げる証人となる女を捜していた。
女がヘア・サロンで働いていることを突き止め証言を求めるが、簡単に承諾はされない。
やがてその依頼がもとでストレンジは、町を二分するストリートギャングの抗争に巻き込まれていく。
[採点] ☆☆☆★
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