[寸評]
ミステリとしても面白いが、時代背景、舞台、設定が実に興味深い。
昨日まで同盟国だったのに箱根で監視下に置かれるドイツ潜水艦の乗員たちの中で起きる連続怪死事件。
その真相は、終戦後の後半に少々詰め込みすぎた感があるものの、なんとか無難にまとめられる。
その後半、実はこの物語の主眼は、激動の時代に翻弄されながらしたたかに生きていく女性たちの物語であることが分かり、4つ星に。
[寸評]
自殺予告メールを巡る社内の論争から始まり、パーソナリティが突然メールの話を放送に乗せて、と今後の展開を期待させつつ話は快調に進んでいく。
しかしいくら毒舌が売り物とはいえ、「俺の放送を邪魔しやがって、このクソガキ」はないだろう。
公に放送してるんだよ。
自殺を考える動機も明らかにされるのだが、これがまた引きました。
無理に作ることはなかったろうに。
最後まで読ませる娯楽作ではある。
[寸評]
さほど長い小説ではないのに、大長編を読んだ気分にさせられる中身の詰まった時代小説。
武士の最下層から筆頭国家老へ上りつめていく勘一の数奇な運命。
物語の肝は刎頸の契りを結ぶ磯貝彦四郎との関係だが、友情、愛情、剣の死闘、藩内での権謀術数等、これでもかと話が連続して詰め込まれ、かつそれぞれのエピソードが丁寧にまとめられている。
彦四郎の生き様に対する考え方で本の評価も変わろう。
[寸評]
13世紀の南フランスを舞台に、キリスト教世界における陰謀・混乱を描いた作品。
背徳的な表紙絵(原書と同じ)に象徴されるような異端派の台頭と暗躍がミステリアスに描かれ、興味深く、中世の雰囲気にも魅せられる。
快調に話は進み、終盤はアクション場面も用意され、衝撃の結末へという感じなのだが、思ったほど盛り上がらず、スケールの大きさも実感できませんでした。
人の名前も覚えにくく、混乱。
[寸評]
序盤は戦前の田舎娘の女中奉公の様子が綴られていくだけの話という印象で、これが直木賞受賞作かい、と思わせられる。
それが次第に読み手もこの物語の空気に染まっていく感じで、戦争に向っていく社会の大きな流れの中にあって、その時代を生きた人々の暮らしや意識が説得力を持って描かれる。
タキにとって、平井家の妻にとっての小さく大切な世界が静かに心を満たしていく。
最後の小事件も巧い。
[あらすじ]
戦争も敗色濃厚な昭和20年3月。
大学の心理学教室助手である法城は小田原の駅へと降り立った。
海軍で事件の調査にあたる法務官の夜須中尉に随行し、箱根で起きたドイツ人海軍将校の死亡事件を調べるためだ。
箱根にはUボートで来航したもののドイツの降伏でドイツ人水兵が捕虜として日本軍の監視下にあった。
その中で起きたUボート艦長の死亡。
法城は通訳の役割だ。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
安岡はラジオ・ジャパンのディレクター。
今夜は午前1時から3時まで、生の深夜放送”オールナイト・ジャパン”を仕切る。
パーソナリティはお笑い芸人の奥田雅志だ。
過激な発言を連発する奥田に聴取率も上がり、今月は五周年記念月間。
そんな回の直前、リスナーから自殺予告のメールが送信されてくる。
いたずらとして無視するか、息子を自殺で亡くしている安岡は上司と激論に。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
茅島藩八万石の筆頭国家老の名倉彰蔵はもともと身分の低い下士の出だった。
父の千兵衛はわずか二十石の御徒組の藩士で、彰蔵がまだ戸田勘一と名乗っていた7歳のとき、父は勘一と妹の千江をかばって上士に討たれた。
二十石の家禄を半減され一家は困窮の中、勘一は勉学にも武芸にも懸命に励んだ。
そして今まで下士には実質上門戸を閉ざしていた藩校入りを決意する。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1284年1月、厳寒の西ヨーロッパ、ドラガン司教区。
アカン司教のもとに見知らぬ客が訪れる。
全身黒ずくめの服装の大柄な男で、頭巾で顔も見えない。
二人は司教の書斎に入ったまま、話し声も聞こえない。
やがて館じゅうに恐ろしい音が響き渡り、男は駆け足で馬にまたがり町を後にした。
助任司祭のシュケが部屋に入ると、司教は頭蓋を切り取られた無惨な死体で倒れていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
タキは山形の農村の6人兄妹の5番目で、昭和5年の春に尋常小学校を卒業して東京へ出た。
小説家の小中先生のお家で女中奉公。
洗濯に子守のほか2人の先輩女中の手伝い。
翌年、小中先生の知り合いの家に移ることに。
それがタキと時子奥様、恭一ぼっちゃんとの出会いだった。
最初の結婚は夫の予期せぬ事故死で短く終わり、2度目の結婚にもタキは二人について行った。
[採点] ☆☆☆☆
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