[寸評]
善悪とか道徳とかの範疇を自然にちょっぴり逸脱した感じの40ページほどの短編7編。
自分でも確固とした思いのないままその場所へ行ってしまい、たいていは嫌な気分や状況に陥ったり、でもそれも運命かと。
最初の、二重生活をする男の不気味な造形など、上手いなぁと思わせる。
最後の「病院」は、他の短編とは少し異質の、とても救われる爽やかな幕切れだが、やはりこういう物語を読みたいですね。
[寸評]
とうとうシリーズ10作目となったが、その面白さはいささかも衰えていない。
とりわけ今回はシリーズ中の大転換とも言うべき出来事が起こる、それも重ねて。
「絆回廊」という作品名も、物語を的確に表しており実にいい。
終盤、図らずも主要な登場人物たちが1個所に集まるのだが、作りすぎと思いながらも興奮はいや増していく。
今回この話は完全には終結しておらず、次回はさらに燃える鮫島が期待できる。
[寸評]
表題作など8編の短編集。
のんびりしたライトコメディーの多い印象の作者だが、この作品集は主人公それぞれの思い出を綴った、どちらかといえばシリアスな物語ばかり。
でも私は嫌いじゃないですね。
爽やかに思い出す記憶、痛みを伴う記憶、思い出に囚われてしまった人など、さまざまだが、どの物語も手抜きなくしっかりと構成され、味わい深く、余韻を伴うものになっているのには感心しました。
[寸評]
私も昔渓流釣りは好きだったので、手を伸ばしてみました。
川の同じ場所で3人がフライとルアーとエサ釣りをするなんて見たことないけど、まぁ釣り場面はそれなりに・・・でした。
釣りに、宝探しに、謎の女に、おまけにロマンスやその他諸々、もうてんこ盛りの物語で、とりあえずすべてに決着をつけるのだが、結局どの要素も上っ面だけ撫ぜたという印象。
ヴァラエティ豊かで最後まで飽かさず読めます。
[寸評]
近年次々と時代小説を発表する作者だが、失礼ながら一作ごとに味わい深さが増していく印象。
本作では主人公の目的とする出来事が起きる最終盤までの300ページ近く、小粒な出来事を挟みながら、比較的淡々と静かに物語は進んでいく。
しかし、退屈さなどとは全く無縁。
派手な立ち回りや突拍子もない展開などなくても、人と人との関わりを描いていくだけで読み手を十分物語に引き込んでいく。
見事。
[あらすじ]
見知らぬ女から電話がかかってきた。
「川野純一郎の本当のことを教えます。」
私は息子の太郎と、籍は入れていないが純一郎さんと暮らしている。
女の口から出た町の名前。
ある日、純一郎さんが出社時に玄関へ落としていったクリーニングの控えの顧客住所欄にあった町と同じ。
その住所・団地の一室に赴くと純一郎さんの筆跡の表札。
呼び鈴を押すと若い女が顔を出した。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
新宿署生活安全課の鮫島警部は、現場を押さえた大麻の売人から、警官を殺す目的で拳銃を入手しようとしている男の情報を得る。
男は10年以上前に解散した暴力団・須動会の名前を口にしていたということは長期服役を終えたばかりらしい。
鮫島は須動会の元組長の姫川を訪ねる。
その頃、鮫島の恋人の晶が所属するバンド”フーズ・ハニー”はクスリ絡みの内偵を受けていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
私はひとりで私の会社の経営するリゾート施設にある観覧車に乗り込んだ。
都会の遊園地のものに比べれば小さいが、高原にあるので頂点の標高は日本一だ。
営業時間が終了後、無理を言って動かしてもらった。
ゴンドラが動き出した時、妻の遼子が飛び込んできた。
私は幼い頃、一人で観覧車に乗り、ひとつ下のゴンドラに先年死んだ母が乗っているのを見たことがあった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
神林優作は三陸は十日湊の漁師。
妻を病気で亡くし、中学生になる息子の悠太と義母と暮らしている。
息子と久し振りにコミュニケーションをとろうと釣りに誘うと、川釣りならとの返事。
学校帰りに猿ヶ瀬川を通りかかった時、フライフィッシングをしている女性に竿を振らせてもらい興味を持ったと言う。
その女性、小山内未穂は近所付き合いもせず、釣り三昧で評判が芳しくない。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
黒船来航の時代、喜平次は桐生の妙見村にある渡良瀬川の渡し守をしていた。
武士である彼はある目的を持ってここに来たが、ちょうど渡し守の弥平が、土地の織物問屋の息子が崖から落ちるのを助けようとして大怪我を負い、彼が臨時の船頭をかって出た。
息子の応急処置をしたことから、織物問屋の女主人らとも馴染みとなり、いつの間にか村の暮らしに溶け込んでいった。
[採点] ☆☆☆☆
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