[寸評]
この作品、コーソを主人公としたシリーズの3作目とは知らなかったが、先の読めないサスペンスに娯楽性たっぷりで面白かった。 コーソと身体中刺青のメグのコンビは、その辛らつなやり取りも楽しいが、コーソが追うことになる女連続殺人鬼、実際に姿を見せるのは物語の終盤だがこれがまた怖い。 追い詰める過程で、徐々に女の過去が暴かれていくあたりも上手く、追跡行とコーソの逃避行が絡み合い、全編面白さが持続する。
[寸評]
「不思議のひと触れ」に続くスタージョン奇想コレクションの第2巻全8短編。 中では、終始緊迫感が漂いラストも衝撃的な表題作が面白く、ジャズグループのリーダーを殺そうとするバンドの男が主人公の「マエストロを殺せ」もいい。 その他、平凡に生きてきた男が何とか罪を犯そうとする「ルウェリンの犯罪」も皮肉が利いたなかなかの衝撃作。 全体としては展開がややもたつくようなものもあり、是非!と薦めるところまではいかない。
[寸評]
犯罪ものからコメディーまでハズレのない作者が繰り出したのは少年を主人公にした家族小説。 二部構成で、雑誌連載を加筆修正した東京を舞台とした第一部。 第二部は一家で移り住んだ西表島を舞台とした書下ろしだ。 とりわけ第一部は、正義感が強く臆病で好奇心旺盛とうい自然な少年の日々が実に生き生きと描かれており、素晴らしい。 第二部も、ホテル建設反対という俗な話題とやや現実離れした展開ながら、十分楽しめる。
[寸評]
名作映画を活字で楽しむ<ポケミス名画座>の1冊で、映画ではないが30年ほど前TVシリーズで有名だった作品。 トンプスンが原作者とは知らなかった。 ブラックユーモアと不条理な犯罪世界を描く彼の他の作品とは印象を異にするが、アイアンサイドの特異なキャラクタと淀みない展開で十分楽しめた。 短い物語の中に多くの特徴ある登場人物が手際よく配され、また車椅子ゆえの手に汗握るアクション(?)場面もあります。
[寸評]
図書館でリクエストを待っている間に直木賞を受賞した作品。 表題作のほか、ホラーというより摩訶不思議な”怪談噺”と呼んだほうが似つかわしいような短編6編。 いずれの趣向もどこかで読んだことがあるようなもので、とりわけ奇抜なものはないが、情味豊かに描かれている。 ちょうど私の世代とも重なるような時代背景となっているものが多く、ゆったりとした雰囲気で心地良く読める。 人の心が紡ぎ出す不思議に浸れる物語ばかり。