[寸評]
「ボーン・コレクター」に続くシリーズ第2作。
巻頭からスリルとサスペンスの連続で、ラストまでその勢いが衰えない面白本。
後半のどんでん返しの連続も凄い。
ただあまりにライムが鋭すぎて、また肝心なところでわざと外したりは、作者の"つくり"が少々鼻につく。
最後のひとひねりもさすがに"見えて"しまい、余分な印象だったのは惜しい。
それでもアクション描写も迫力があり、追いつ追われつの追跡劇はまさに一気読み間違いなし。
[寸評]
柴田錬三郎賞を受賞したドキュメンタリー・ノヴェル。
文隆の生涯を、大きく分けてアメリカ留学期、上海同文書院勤務期、ロシア抑留期の3期で波乱万丈に描く。
アメリカ時代がやや平板だが、上海時代は彼と謎の中国美女の恋模様に日本軍と抗日組織の対立などが絡みスリルに富んで実に面白い。
そして望郷のロシア時代は凍りつく大地の雰囲気もあいまって切なさがたまらない。
終盤のミステリー趣向も面白い。
冒険心を持ち常にユーモアを忘れない彼の人柄がたいへん魅力的。
[寸評]
「UNKNOWN(アンノン)」に続く作者の第2作。
20年以上前から明日地震が起きてもおかしくない、と言われ続けているこの地域に住む私としては只事でない設定だが、要は密室づくりの材料。
巷ではこの作品えらく評判が良いようだ。
私は決して天邪鬼ではないつもりだが、採点はこんなところ。
隙なく理詰めに進むあたりは感心するし、"本格"ファンはたまらないだろう。
しかし、善悪の明確な描き分け、あまりに深く推理し人の心理を読む高校生などには違和感を感じましたね。
[寸評]
この作者の本は「秘密の友人」以来。
娯楽性は満点。
特に後半はページをめくるのがもどかしくなるほどで、次はどうなるのか読めそうで読めない展開は心憎いばかり。
話はスティーヴン・キングばりのかなり荒唐無稽なものだが、純真無垢な5歳の少女を中心に据えもっともらしく見せるあたりも上手い。
脇役が次々に死んでいくあたり気持ちのいいものではないが、終局まで一直線に突き進むスピード感には圧倒される。
[寸評]
「頭弾」、「狼叫(ランチャオ)」と胸躍る大陸冒険活劇を繰り広げた作者の現代山岳冒険小説。
雪山での冒険といえば「ホワイトアウト」がまず頭に浮かぶが、後半のたたみかけるアクションの連続はさらに凄い。
そして味方の中にスパイが、というミステリー色も巧みに取り入れ、サスペンスを盛り上げる。
対国家権力の設定はさすがに陳腐だが、そんなことも気にならない息詰まる迫真の場面の連続にしびれました。
[あらすじ]
リンカーン・ライムは元ニューヨーク市警科学捜査部長だったが事故で四肢麻痺となり、現在は車椅子の身で警察の科学捜査顧問として活躍している。
彼のもとに刑事が訪れ、コフィン・ダンサーという殺し屋の追跡を依頼される。
ダンサーは武器密売者から自分に不利な証言をする予定の3人の証人の殺害を依頼され、すでに1人は乗っていた飛行機もろとも爆死していた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
昭和20年12月15日。
戦争犯罪容疑によりGHQから逮捕命令の出た元首相近衛文麿は自宅で自決。
その頃シベリアにある捕虜収容所の一室に、近衛家の長男近衛文隆元陸軍砲兵中尉はいた。
北満で終戦を迎えた彼はロシア軍に捕えられ収容所送りとなっていた。
名門近衛家の嫡男としてアメリカにも留学、将来の日本を担う存在だった彼の生涯を描く。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
ついに東海大震災が発生。
倒壊したマンションの地下駐車場に高校生6人とその担任が閉じ込められた。
彼らは自殺と思われる級友の宮下の葬儀に向かう途中で地震に遭遇したのだ。
宮下の友人の相良、女友達の早名と香椎、彼の死に関係があると疑われる不良の城戸と取り巻きの小谷、中立的な大塚。
そして事なかれ主義の担任の塩澤。
闇の中で事件が起こる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
夏のとある日。
マサチューセッツの小さな町は地獄になった。
爆発した飛行機の破片や人体が空から降ってきたのだ。
酒場に勤めていたキャロルは半狂乱になって町にいるはずの娘アマンダを捜す。
やがて煤で真っ黒の男に抱かれた娘を発見した。
あぁ大変、またやつらが追ってくる。
4か月後のニューヨーク。
ミュージシャンのルーニーは追われているキャロルに出会う。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
佐伯鷹志は警視庁のSPで、汚職疑惑の渦中にある大物政治家の宗光内閣官房長官の警護をしている。
命を張って警護する彼は当然宗光の裏の部分をいやというほど見てきた。
出身地の長野での選挙活動中、拳銃を持った男が客席から立ち上がる。
男は宗光ではなく佐伯を狙って発砲。
その数年後、北アルプスにある県警山岳警備隊の中に佐伯の姿はあった。
[採点] ☆☆☆☆★
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▲ ボーン・コレクター
事故で四肢麻痺となり自殺願望と闘っていた元ニューヨーク市警科学捜査部長リンカーン・ライムのもとに、市警から捜査の協力依頼が。
いつも殺人予告代わりの手がかりを被害者の周囲に残していく"ボーン・コレクター"という殺人鬼の追跡。
「羊たちの沈黙」のレクター博士とクラリスを思わせるライムと女巡査サックスのコンビの確執も見ものの、傑作ミステリー。
「週刊文春」傑作ミステリーベストテン第1位、「このミステリーがすごい」第2位。
▲ アンドリュー・クラヴァン
「秘密の友人」はサイコサスペンスもので、とにかく面白い。
作者は、以前はキース・ピータースン名義で、新聞記者ジョン・ウェルズを主人公に据えた「暗闇の終わり」「幻の終わり」「夏の稲妻」といったセンチメンタルなハードボイルドを書き、絶賛を浴びていた。
「秘密の友人」以降、動きの激しいサイコスリラーに転向した模様。