[寸評]
群雄割拠と混乱の戦国時代にひたすら武者の道を突き進む半右衛門と、鉄砲傭兵集団の雑賀衆の子供で神技のような射撃術を左腕で振るう11歳の小太郎の2人を主役に描く戦国アクション。
かなり強引な展開も随所に見られるものの、ただ武骨なだけでなく、武者同士の信頼や、どことなく切なさも漂わせる描き方がいい。
半右衛門の鬼神のような戦いぶりや小太郎の百発百中の射撃など、全編存分に楽しめる娯楽小説。
[寸評]
昨年も新年2冊目がオースターでした。
この作品は作者が世に認められるきっかけとなった1985年のものだが、今回新訳、初単行本化。
物語は探偵小説の形式をもって始まる。
作家が間違い電話をきっかけに出来心から探偵になりすまして、依頼を受け調査も行うのだが、そのうち物語の様相はガラッと変わり、大都会の中で徐々に透明化していく主人公が描かれていく。
装丁も洒落ているし、再読に値する名作だと思う。
[寸評]
明治期の落語界の大名人と言われてもさっぱりですが、彼と関わる5人の女を描くこの短編集は、人間的魅力に満ち、とても面白い。
殿様の息女、花魁、芸者などが登場するが、どの話も円朝の弟子が語る形式で、時折、ばかばかしい小咄をはさみながら軽妙に語られる。
江戸末期から明治へと大変革の時期で、登場人物たちの紆余曲折も甚だしく、展開は波乱に富んでおり、また文明開化の世の中の描写が興味深い。
[寸評]
若き女性刑事、姫川玲子を主人公としたシリーズ4作目ということだが、私が読むのは2冊目。
非常にテンポ良く、語り口も巧みな娯楽小説だ。
姫川の女性としての苦悩、官僚隠蔽体質、暴力団との癒着、彼女を温かく見守る現場の先輩達等々、中身に目新しいところはない。
話の流れも強引で、首を傾げるところもあるし、真相もある程度途中で割れてしまう。
それでも一気読みの面白さには間違いなく、採点もつい甘目に。
[寸評]
初めて全作品四つ星を超えた今月の最後を飾る本作は、本当に久し振りの満点だが、万人に薦められる作品ではない。
一文がとにかく長く、流れるように言葉が連なっていく。
読みづらいかもしれないが、そのリズム感も快感だ。
インディアンを殺して頭の皮を剥ぐのを生業とする非道な者たちが描かれ、とんでもなく暴力的で残虐な場面の連続だが、作者はそれを劇的に描くわけでもなく、また否定も肯定もしない。
広大なアメリカの荒野の中の少年の寂寥感がたまらない。
[あらすじ]
戦国の世、1556年の秋。
林備後守を父に持つ半右衛門は、近隣の国人領主を束ねる戸沢家の猛将として他国にその名を響かす武辺者。
戸沢家とは太田川を境として敵対する児玉家との戦に、騎馬軍団の先頭に立って戦うつもりだったが、子のない戸沢家当主の利高は、甥の図書を先鋒に任じていた。
その利高は13年前に伝来した火縄銃を好み、今次の戦いも鉄砲衆が先頭に立っていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
ニューヨークの小さなアパートで一人つましく暮らす作家のクインのところに、真夜中、間違い電話がかかってきた。
それはポール・オースター探偵事務所にかけてきたものだった。
番号違いを指摘して電話を切るが、翌々日の晩、3度目の電話でクインは「私がオースターです」と応答する。
相手は、殺されそうなので護ってもらいたいと言う。
翌日、クインは依頼主の住むアパートに向かう。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
頃は安政七年、西暦1860年、後の落語界のスーパースター、三遊亭円朝は当時22歳。
17歳で真打になった円朝には、旗本や御家人の贔屓も多く、屋敷に赴いて一席披露し、寄席の出演料よりはるかにいい祝儀にあずかっていた。
その中に田中某という殿様がいたが、男子の跡継ぎがおらず、千尋様というお嬢様がひとり。
田中家では母君が早死にし、円朝が千尋様の話し相手を務めていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
姫川玲子は、警視庁の捜査第一課殺人犯捜査十係第二班、通称「姫川班」の主任。
12月下旬、部下を連れて日比谷まで飲みに来ていたところ、十係の係長、今泉警部から東中野の殺人事件現場に向かうよう命じられる。
現場に出向くと中野署の暴力団担当の下井刑事も来ていた。
被害者は暴力団組員の男で、部屋には血が四方八方に飛び散っている。
姫川は下井と組んで、組事務所を訪れる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1833年にテネシーで生まれた少年は14歳で家出し、物乞いと泥棒の日々を続けていた。
ある晩酒場でいざこざを起こし、バーテンをぶちのめしたところを見ていたホワイト大尉率いる軍隊に誘われる。
メキシコ人討伐に行くというが、どうやら不法戦士団らしい。
少年は生きるために部隊に入るが、荒野を進行している時、数百騎のインディアン武装集団に襲われ、惨殺死体の山と化してしまう。
[採点] ☆☆☆☆☆
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