[寸評]
宮部みゆきの新作は超能力者を主人公としたアクションドラマ。
600ページを飽きさせず読ませるのはさすがで娯楽作としては及第点だが、超能力者の異能の人としての悲しみ、苦しみが思ったほど伝わってこない。
主人公をはじめとする超能力者の活躍はもっと読みたかったし、終盤も意外性に乏しく盛り上がりに欠けるのは残念。
いっそのこと敵対するグループでも登場させ、ド派手な幻魔大戦を繰り広げたほうが良かったのでは。
[寸評]
系列で言えば北村薫の「スキップ」と同様の「時と人間」を描いた物語。
男にとってとてつもなく切ない物語で、ページをめくる手ももどかしいほど。
若い娘の身体を持ってしまった妻の心の動きも上手く描かれている。
悲しく切ない中盤がとにかく素晴らしい。
男女逆の設定も容易に想像され、誰でも容易に主人公の平介に感情移入させられるだろう。
ラストは、こういう結末ももちろんありだと思うが、あまりにも残酷で★減点。
[寸評]
まずは13世紀末のイタリアの情景、世相、人々の暮らしぶりなどの克明な描写に驚かされる。
聖杯や「マリアによる福音書」の秘密などミステリーめいた趣向も用意されているが、全体に話は淡々と進む。
根無し草の主人公を狂言回しに展開する物語は、面白さという観点からはこのくらいの採点になってしまった。
異端カタリ派といったキリスト教の教義上の話もぴんとこないが、人間ドラマとして読み応えのある作品。
[寸評]
この物語については、約2年前作者の予告があり、あの「ベルリン飛行指令」以来の航空冒険小説として待望していたところでした。
果たしてその結果は・・・やはり期待が大きすぎましたか。
あの安藤大尉に比べて本作の2人の主人公に人間的な魅力が感じられない。
武士道を重んじる麻生は描き足りないし、デニスは金目当てに働く傭兵の域を脱していない。
大空の爽快で華麗な戦いの雰囲気もやや希薄でした。
[寸評]
この本の場合、まず「チョーモンイン」(超能力問題秘密対策委員会)なるものをすんなり受け入れられるかどうかでかなり印象が変わる。
私の場合このノリについていけず最後まで距離をおいた読み方になってしまいました。
せっかくの怪能力が意外と生かされていないのも不満。
ラストまで右へ左への推理が続くが結局延々と説明を読まされた感じ。
着物に袴姿でやけに時代がかった話し方の美人相談員見習いというキャラがおじさんにはつらかった。
[あらすじ]
青木淳子は体内に蓄積された過剰なパワーを放射すべく深夜の廃工場に入る。
そこに4人の若者がなぶり殺した青年の死体を隠しにやってきた。
念力放火能力という超能力を持つ淳子は、事情を悟り彼らを焼き殺すが1人を取り逃がしてしまう。
死んでいると思った青年の最後の言葉で、なお女性が1人捕らわれているのを知った淳子は救出と報復のため逃げた男を追う。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
自動車部品製造工場に勤める杉田平介は夜勤明けの朝、従兄の告別式に長野へ向かった妻と一人娘が乗ったバスが崖から転落したことを知る。
平介が病院に駆けつけてまもなく妻の直子は亡くなったが、植物状態を宣告されていた娘の藻奈美はほどなく奇跡的に意識を回復する。
しかしその身体は藻奈美だが、人格・意識は紛れもない妻のものとなっていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
13世紀の終わり頃、ポーロ家の一行が2年もの長旅の末、ようやく世界の西の涯てヴェネツィアの我が家に帰り着いた。
彼らは20年の長きにわたり元帝国クビライの宮廷に派遣されていたのだ。
一行の中には奴隷として旦那方に仕える宋と倭の混血の男、夏桂がいた。
夏桂は今の北九州に生まれ密貿易で儲け大尽暮らしをしていたが、役人に捕まり奴隷に身を落としていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
昭和12年、満州事変以来中国本土に進出していた日本軍は北京郊外の蘆溝橋で中国軍と衝突し本格的な戦争状態に入る。
これを受け、海軍航空隊の麻生中尉はいよいよ中国における航空作戦に従事することになり気負い立つ。
一方アメリカ人パイロットのデニスは、高い給料に惹かれて中国義勇航空隊の一員となる。
二人は何度か空で対戦しお互いを意識し合うようになる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
夫の車に愛人が乗り込むところを目撃した岡安素子は、逆上し自転車で追走していて雷に打たれ昏倒する。
幸い命に別状無かったが、なんと他人の見ている風景がそのまま自分に見えてしまう怪能力を得てしまう。
しかもその波長が繋がっているらしい男が殺人を犯すのだ。
彼女の訴えを受けて美人警部と超能力問題秘密対策委員会の相談員見習いの女の子が調査に乗り出す。
[採点] ☆☆★
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