[寸評] 「マレー鉄道の謎」と共に今回日本推理作家協会賞長編賞を受賞した。 不思議な魅力に満ちた作品で、聴覚が異常に亢進し、部屋の床や壁の反響音から前の住人の習慣、癖、体型まで捉えられるようになる。 トイレや浴室を丹念に調べその姿を思い描き、執拗に女を捜し、激しく思い入れていく主人公の姿は異様な迫力。 真相、女を追いつめる過程で立花があまりに超能力名探偵すぎるものの、官能的ミステリーとして読む価値あり。
[寸評] 絶好調の作者お得意の警察もの全6編から成る短編集。 強烈な個性を放つ県警捜査第一課の3人の班長を軸に、どの物語もしっかり組み立てられた見事なものばかり。 どれも短編ではもったいないくらいの設定と展開だが、短編だからこその切れ味と緊張感を持っているとも言える。 徹底的に犯罪を憎み、他班の後れをとることを絶対に許さない班長たちの個性と、一瞬の動きを逃さないカミソリのような頭の回転に圧倒される。
[寸評] 「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞した作者の最新短編集。 ダイイング・メッセージ、首無し死体、密室、本格犯人当ての豪華4本立て。 肝心の表題作は最も長いが、何かストレートに肯けない推理と小道具としての時計の使い方がスマートでないこと、有栖川の高校時代の回想が中途半端など不満が多い。 だが他の3作はそれぞれ楽しめる。 特に「女彫刻家の首」は猟奇趣味も満点の佳作で幕切れも凄い。
[寸評]
2段組、500ページの長さを感じさせない法廷ミステリー。
28年の時を隔てて自らの悪夢のような事件と類似の殺人事件が親友だった男にふりかかる。
未だ過去の事件を引きずる町で、友への疑念に苦悩しながらも彼を弁護する主人公。
動きの少ない法廷劇でも、扇情的な事件、親友の妻との断ち切れぬ思い、女検事との対峙など、読者の興味を引くのも上手い。
しっかりした人物造形と深い人間ドラマに圧倒される物語。
[寸評]
作者お得意の短編集だが、今までは警察関係者を主人公に据えていたのに対し、今回はどれも市井の人が主人公。
全5編いずれも水準には達していると思うが、これは印象に残った、という作品もない。
それぞれの事件の真相や結末はどれもかなり辛辣で、冷たく、かなりひねられたものを提示してくるが、さほどの意外性はない。
組織の中でせめぎ合う人間たちを描かせれば天下一品だが、今回は対象を広げすぎた感じ。
[あらすじ]
ハリウッド女優を妻に持つ、やり手弁護士のトニー。
彼は28年前の高校時代、恋人のアリスンを殺した容疑で苦しい日々を送り、故郷を離れた。
そんな彼のもとに高校時代親友でもありライバルでもあったサムから弁護の依頼が。
高校教頭のサムは、教え子と関係を持ち殺した容疑をかけられていた。
自らの過去を照らし絶対的に不利な裁判にトニーは臨む。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
会計事務所を営む篠田佳男は10年前に息子を殺された。
息子の佳彦は高校1年の時、参考書を買いに行くと言って家を出て、翌朝刺殺死体で発見された。
通り魔か、犯人は分からなかったが、突然の警察からの電話。
殺人未遂で捕まった男が余罪捜査で自白したと言う。
ところが、その男は息子が万引きしたのを見て脅したと供述していた。
篠田は耳を疑う。
[採点] ☆☆☆
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