[寸評]
やんごとなき身分で執事やメイドたちにかしづかれる貴族探偵が活躍(?)する短編5編。
現場を調べるのはもとより、推理することまで”雑事は使用人に任せておけばいい”と言い放ち、結局何もしないながら存在感は抜群の貴族探偵。
5編とも本格推理ものとして、設定から謎解きまでしっかり作られた物語だが、ヴァラエティに富んだ使用人たちと貴族探偵そのものを楽しむ娯楽作と割り切ればさらに面白い。
[寸評]
13年間追い求め、ボッシュが犯人と睨んでいた男とまったく別のところから事件の真相が明らかになるという導入部から、思いもよらぬ展開へ、そしてさらに二転三転と実に見事な久し振りにミステリらしいミステリ。
ボッシュのみが猪突猛進し、ついには真相に至るのは流石に作り過ぎの感もあるが、それがボッシュなのだとも言える。
権力闘争や腐敗絡みは食傷気味だが、アクション場面がスピーディで小気味良し。
[寸評]
太平洋戦争開戦直前、高性能兵器を手土産に、ヒトラーからアメリカと戦う旨の言質をとりにドイツ艦船に乗って北極海を行く、二人の日本海軍将校の冒険行を描く。
これは○○用語で…と、物語のリズムを損なう蘊蓄が時々入るのが気に障るが、一定水準のサスペンスや戦闘シーンの迫力はある。
ドイツ水兵との交流や頑迷な艦長との確執と融和など型通りではあるが、最後まで崩れず、面白く読めた。
[寸評]
少年剣士たちを描く青春時時代小説としてとても気持ちの良い本になっている。
とりわけ川で水遊びに興じる場面などは実に生き生きとして素晴らしい。
一方、主人公・林弥の兄殺害の真相になると、こちらはややお粗末。
殺害犯は意外性以前の感じだし、まとめ方もばたばたした印象。
少年たちの純粋さは良く表現されているが、生まれながらの剣の達人とかでなく、もう少し普通の少年たちを描いてほしかった。
[寸評]
書名は何かの比喩なんだろうと思っていたら、本当に卵をめぐる戦争でした。
実に馬鹿げた、しかし冗談ではすまされない極限状況の中で、なんとか自分を見失わず前へ進んでいく若者の戦いは読み応え十分。
主人公と行動を共にし、愚かな戦争を常に笑い飛ばしている脱走兵コーリャと、女狙撃兵ヴィカのキャラも見事で、3人の青春小説でもある。
波乱万丈の悲喜劇の物語は娯楽性も十分で、ラストは拍手もの。
(ポケミスのデザインが変わりました!)
[あらすじ]
都倉計器営業部長の正津は会社の別荘で寝覚めの悪い朝を迎えた。
今日は大口契約を控え三塚電機の会長を迎えて接待する日なのに、昨夜社長の妻と秘書が大げんかに。
よりにもよって社長は愛人である秘書に妻と同じバックを買い与えたのだ。
この雰囲気が三塚会長に伝わり契約が破談にでもなったら大変。
不安を抱え社長の部屋に向うと、社長はソファーを血に染めて死んでいた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
ハリー・ボッシュはロス市警未解決事件班の刑事。
13年前に自らが担当したものの、決定的な手がかりがなく未解決となっている女性失踪事件のファイルを定期的に借り出しては調べ続けていた。
そのファイルを、最近2人の女性のバラバラ死体を車に乗せていて逮捕された男の担当検事が請求してきた。
この男は9件の殺人事件の真相提供と引き換えに死刑を免れようとしていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
昭和16年9月、アメリカは日本との対決姿勢を強め、日本国内では対米戦争論が日に日に大きくなってきた。
御前会議では外交による事態打開を重視するということになったが、軍部の考えは変わらない。
海軍の対米開戦推進派は、アメリカに対するドイツの参戦を保証させるため、特使を派遣。ドイツに戻る仮装巡洋艦”ウラヌス”にヒトラーへの手土産として高性能魚雷を載せる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
新里林弥は14歳。
兄は、小舞藩勘定方吟味役を務め当代一の剣士と謳われた新里結之丞。
しかし兄は2年前、御前鵜飼の夜、川岸の道で何者かに斬り殺された。
背後から一太刀、自らは刀を抜かぬままに。
犯人は分からず、当主となるべき林弥がまだ若年であること、兄は士道不覚悟であったとして、家禄は3分の1に削られた。
その後、林弥は親しい友らと道場で剣の道に励んだ。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
1941年のレニングラード。
6月にドイツ軍が侵攻してきて、町は包囲され、兵糧攻めにされていた。
食べるものも鳩も犬も猫もいない。
”キーロフ”という名の共同住宅に住んでいる17歳のレフは、大晦日の夜に友人たちと屋上で見張りをしていた。
一人のドイツ兵がパラシュートで降下してきた。
明らかに死んでいるが、武器や食料を持っているはず。
皆で兵士の降下地点へ走った。
[採点] ☆☆☆☆★
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