[寸評]
97年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長編賞受賞作です。
事件自体は大したものではなく、派手さもないが、まとまりのいい上手い作品。
登場人物たちの心情もよく描けています。
しかし主人公はもとより登場人物の多くがゲイであり、露骨な性描写まであるので、ノーマルな私としてはかなり気色悪く、減点。
またジャスティスと若い女性記者が、お互いを認めてチームとなっていく様がやや描き足りないと感じました。
[寸評]
作者の円熟した技が感じられ、ミステリーの教科書を想わせる秀作。
40年も前に決着している小さな事件を、500ページにわたって少しずつ、しかし着実に真実に迫っていく。
読者に十分な情報を提供し、伏線をしっかり張って、時には先読みさせ、時にはあっと言わせ、確実に物語の世界に引き込んでいく。
小振りな作品だが、人間もきちんと描かれていて、しっとりとした情感を感じさせる。
派手なアクション抜きで終盤の盛り上がりも凄い。
[寸評]
昨年の「枯れ蔵」に続く新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。
序盤の謎の女のくだりはあの「火車」を思い出させ非常に期待させられる。
しかし賞の選者たちの「本作は人間が良く描けている」という評とまるで違う印象を受けてしまった。
ヒロインにしろ彼女と行動を共にする中年男にしろまったく魅力を感じないし、その言動、描き方も不満。
せっかく期待させた展開も尻すぼみで、話の核となるのが自己啓発セミナーというのも古臭い。
[寸評]
400ページ以上にわたって延々とステップ一家の変化はあるもののさほどドラマチックでない物語が続く。
中では、頻繁に出てくる夫婦の口喧嘩から仲直りに至る会話描写が非常に良く描けており思わず苦笑させられる。
決してつまらなくはないものの盛り上がりのないまま終わってしまうのかと思ったら、最後の最後でとんでもないミステリーと感動のドラマを見せてくれました。
本当に驚きました。
470ページを少々我慢してもこのラストなら読む価値は十分あります。
[寸評]
新潮書下ろしエンターテインメントシリーズの最新刊。
年に数冊、途中で投げ出したくなるような本がありますが、またやってしまった。(おまけに買ってしまった。)
まだまだ修行が足りません。
帯に「脳も凍るミラクル・ホラー」とあったが、この本っていったい何?
どこがホラー? どこがエンターテインメント?
大学教授の失踪がメインと思っていたらあっさり裏切られ、あとは遺伝子学や生物学についての講義と樹海の紹介みたいなものでした。
[あらすじ]
元新聞記者のジャスティスはピューリツァー賞を受賞したこともある優秀な記者だったが、その記事が捏造であることが露見し、新聞界を実質的に追放されていた。
ゲイである彼は恋人のジャックにエイズで死なれ、バンガローで細々と暮らしていた。
そんな彼のもとに昔の同僚ハリーは、ゲイバーの前で起きた殺人事件について、短い記事の執筆と若い記者の教育の依頼を持ってくる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
犯罪ノンフィクション作家のキンリーは、保安官だった親友のレイが心臓発作で急死したとの報せを受け、故郷のシクワイアに戻る。
そこでレイがここ数ヶ月間、ひとつの昔の事件を洗い直していたことを知る。
それは40年ばかり前の遺体なき少女殺害事件で1人の男が死刑に処せられていた。
キンリーはレイの跡をたどり、存命している関係者や裁判記録を調べていく。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
予備校の講師をしている結城可奈子は、弟の東吾が盗難バイクの自損事故で死亡したとの報せを受ける。
葬儀を手伝ってくれた弟の友人から弟がつきあっていた女性がいることを知るが、彼女は全く姿を見せない。
ようやく電話連絡がつくとその女はすでに引っ越して姿を消していた。
可奈子は女の昔の勤務先などを回るが、不可解な行動・姿が徐々に明らかになっていく。
[採点] ☆☆★
[あらすじ]
パソコンゲームで一儲けしたものの失業中だったステップは、一家そろってインディアナ州からノースカロライナへ引っ越してきた。
ソフトウェア会社でマニュアルを編集制作する仕事にありついたのだ。
モルモン教徒の一家は妻のディアンヌと小学生のスティーヴィを頭に2男1女の子ども。
スティーヴィは転校初日に地元の生徒たちの強い南部訛りが理解できず、先生にまで馬鹿にされてしまう。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
源蔵は妻の文江と富士五湖の一つ精進湖の畔で土産物屋と民宿を営んでいる。
店のすぐ裏側が青木ヶ原樹海であることから、多くの自殺者を見てきた。
ある日、湖畔に思いつめた様子の中年女性を見つけ、いつもどおり慎重に声をかける。
その女性、上条襟子は、大学教授の夫が樹海へ行くと言って出てから10日も連絡がないことから不安が募り、探しに来ていた。
[採点] ☆☆
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