[寸評]
コンゲームものだが、そこは馳星周の作品だけあって激しい暴力性を伴っている。
前半は、騙し騙されの策略ゲームが痛快で、後半は馳ワールド全開の裏切り裏切られの連続。
チームを組み、成功の甘い香りをかぎながら、常に疑心暗鬼に苛まれる者たちの身悶えする姿がこれでもかと続く。
計画自体が少々杜撰で場当たり的なのは気になるが、金の匂いをかぎつけた亡者どもが次々に現れ、まったく先の読めない展開は快感だ。
[寸評]
2年半ばかり前に刊行され直木賞を受賞した作品で、気になりつつも、ようやく文庫化にあたり読むことができた。
20ページ弱の短編12編から成る。
まずはこの書名が素晴らしい。
こういう言葉を紡ぐ作家はどんな話を読ませてくれるのか、という期待は裏切られなかった。
特にストーリーがあるわけでなく、ちょっとした心象風景の描写で終わってしまうが、飾らない女たちの独白が妙に清々しい。
江國香織の世界に浸ったと言う感じです。
[寸評]
『かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド』の一冊。
大人にもといいながら、おおむね小学校高学年向けのこのシリーズだが、さすが乙一という感じで、設定・内容・描写とも水準以上。
主人公が虐げられる移民の子という設定もきついし、暴力場面もあれば、とんでもなく口の悪いガキも出てきたり、どんでん返しの筋書きも、大人でも十分楽しめる。
刺激に慣れた今の子どもにはちょうどいいくらいか。
あとがきが傑作。
[寸評]
不条理とか狂気とか、そんな言葉も笑い飛ばすようなジム・トンプスンの暗黒の世界がこの物語でもしっかりと読める。
ブラックユーモアの域も超えたような純黒の笑いともいえないものに全編を覆われた物語。
行き当たりばったりのようで、しっかりと計算された筋立ては、残酷で哀しい3つの殺人(?)事件を綴っていく。
そしてラスト、これは他のトンプスン作品にない実に意外な結末で驚きました。
終わり方まで不条理な世界でした。
[寸評]
今回の直木賞受賞作。
表題作など6編の短編集で、いずれも自らが大切と信ずるもののために懸命に生きる者の奮闘する姿を描いている。
表題作がラストだが、それまでの5編は40ページ程度の短編としては、それぞれに趣向を凝らし、しっかりと書き込まれていることは確かだが、全体に硬く、生真面目さが前面に出た印象。
しかし表題作はいい。
作り物でない、男と女の生の求め合いと感情の交錯が見事に表現された作品。
[あらすじ]
小久保は業界中堅の消費者金融会社ハピネスの総務課長。
総務課長といっても、総会屋ややくざとの付き合い、トラブル処理などを任されており、ストレスからアングラカジノに入り浸り、かなりのツケをため込んだ。
彼に目をつけたのが暴力団からフロント企業に回されている稗田と、かつてはベンチャー企業の花形で今は暴力団に骨までしゃぶられている宮前。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
文乃は大学を中退してからの10数年、旅とバイトを繰り返して生きてきた。
イギリスのノーフォークの海辺のパブで隆志と出会った。
隆志と一緒に帰国し、アパートを借り、一緒に暮らした。
その彼が他の女と関係を持ち、アパートを出て行ってから半年。
朝、電話で、私が出てくる夢を見た、と言う。
2人で買ったクリスマスツリーは木がなくて電飾だけなのだとか。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
少年リッツは父が死に母と貧乏な2人暮らし。
ある富豪の家から「白銀のブーツ」という宝物が盗まれる。
怪盗ゴディバの20回目の犯行と警察は断定した。
彼を追うのは名探偵ロイズ。
リッツは新聞社勤めの知り合いからゴディバが犯行現場に残していくカードに風車小屋の絵があることを聞き、家にある聖書に挟まれた地図にもその絵があるのを思い出す。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
ブラウンは南カリフォルニアのパシフィックシティにある新聞社の記者。
彼は戦争から復員し、傷痍軍人手当を受けている。
男性の機能を失っているのだ。
嵐の日、知り合いの市警察スチューキー警部から、妻のエレンが対岸のローズ島に来ていることを知らされる。
妻は彼のもとを出奔し、2か月もたたずに売春を始めた。
ブラウンは嵐の海へボートを漕ぎ出す。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
里佳はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の一般職員。
10年前、外資系投資銀行に勤めていた里佳は、激務と日本的なしがらみの強さに嫌気がさし、UNHCRに応募。
その際の面接官としてアメリカ人のエドと出会った。
彼は危険地域を回った後のローテーションで東京にいた。
そして彼と結婚したが、7年間で共に暮らした日は100日程度だった。
[採点] ☆☆☆★
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