[寸評]
デビュー作「龍の契り」で新人らしからぬスケールの大きさを見せた作者の第2弾。
前作に比べかなりの進歩が窺える。
題材が相変わらず興味深く、複雑な登場人物達も比較的整理されており、最後までそれなりの面白さが持続する。
サスペンスの盛り上げ方やアクションシーンの処理、魅力的な人物描写などに磨きがかかればエンタテインメントとして十分満足のいくレベルになりそう。
採点はやや辛めだが、次作はさらに期待できる。
[寸評]
特殊な職業を持つ人間たちを主人公にしてきた今までの著者の作品とは趣の全く異なるもの。
特に後半自分探しのため、ある女性につきまとう彼の姿をストーカー劇と評した書評も見られたが、私は彼のひたすら「自分」を求めずにいられない姿に心を打たれました。
また、彼の過去が徐々に明らかになっていく様はミステリーとしても十分に面白い。
「OUT」のようなドライな話も好きだけど、この話のようなウェットなものも嫌いじゃないな。
[寸評]
翻訳ものの体裁をとったこの本は、その造りどおり物語性に富み、国内作品には滅多にみられない濃密で妖しい雰囲気をたたえている。
終盤のアクション場面はやや迫力に欠けるきらいはあるが、壮絶で残酷なラストまで耽美的で特異な作品世界に存分に浸ることができる。
博士のおぞましい研究についてもっと書き込んでほしかったところですが、複雑な人間模様も良く整理されており、これだけの「物語」の読める国内小説は珍しいです。
[寸評]
97年のアメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀長編賞受賞作。
先月読んだ「闇をつかむ男」よりさらに鮮明に作者のカラーが出ている。
非常に抑えた描写が全編にわたってじっくりと静かに続いていく。
初めの100ページほどはなかなか事件そのものが見えずじれったいが、やがてその語り口にも慣れ、終盤はしっとりとした情感を感じさせる。
ユーモアとは無縁であり、話の面白さでも前作に譲ると思うが、静かな感動を与えてくれる作品である。
[寸評]
図書館の新刊本コーナーで見つけた久しぶりの北方謙三。
昔「弔鐘はるかなり」や「檻」等々その世界に浸った私としては期待したのですが、読み進めて、あれっ、何か変だぞ。
書店へ行き、帯を見ると「情事小説」とあるではないですか。
ハードボイルド作家がこういうのを書くのが流行っているのですかね。
内容はスケベな中年男がうぶな若い女の子を自分好みの(セックスの)女に変えていく話としか私には読めませんでした。
なぜ今こういう本を出すのか理解できませんね。
[あらすじ]
アメリカを経済支配する勢いの日本企業。
しかしアメリカの特殊な特許制度により、出願以来何十年という潜伏期間を経て突然浮上するサブマリン特許により巨額のライセンス料を支払わされていた。
通産省はエジソンの再来という謎の発明家の調査をアメリカで活躍するネットワークセキュリティの専門家笹生に依頼する。
一方、笹生の好敵手のハッカーが出所し、マフィアにスカウトされる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
相馬克己は交通事故により、脳死寸前の状態から8年間の闘病生活の末、社会復帰することになった。
彼は過去の一切の記憶を失い、赤ん坊同然の状態から31才でようやく中学1年程度の学力を持つまでになっていた。
父を早くに亡くし、8年間彼を献身的に介護してきた母も先日亡くなった。
一人の家で彼は、昔の相馬克己というもう一人の自分を切実に知りたいと感じる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
第2次大戦下のドイツ。
出征兵士の子を身ごもったマルガレーテはナチスによって設立された未婚女性の産院に入いる。
そこの所長であり財閥の御曹司のクラウス博士に求婚されたマルガレーテは生まれたばかりの息子と共に産院横の屋敷に移る。
クラウスは少年合唱、特にボーイソプラノを偏愛し、2人の少年を養子にして発声練習を繰り返していた。
やがてドイツの敗色は濃厚となってゆく。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
1926年、アメリカの北東部はニューイングランドの田舎町チャタムのバス停に一人の女性が降り立った。
地元の男子校チャタム校に美術教師として赴任してきたミス・チャニング。
校長の息子である15才のヘンリーは、世界中を旅してきた彼女の開かれた考え方、生き方に憧れを持つ。
やがて彼女はチャタム校の英文学教師で妻子あるレランド・リードに心を惹かれていく。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
恋愛小説作家の岸波は48才で独身。
今まで多数の女と情事を重ねてきていた。
どの女ともせいぜい1年。今は静子という女とつきあっている。
友人の佐伯から勧められ、執筆のための資料検索にとパソコンを買った。
取り扱いに苦労し出張教習を頼んだところ、山形から出てきたばかりの20才の葉子という女の子がやってくる。
岸波は葉子を自分の女にしようと考える。
[採点] ☆☆
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