[寸評]
リーバス警部シリーズは1987年以来すでに15作を数えているそうだが、本作は初訳ながらシリーズの2作目。
さすが長寿シリーズの初期の作品だけあって、最後まで読者を引っ張ってくれる。
表紙の絵とまるでムードが違うところはちと疑問だが、テンポ良く、無駄のない話の運びで、読みやすく、かつ面白い。
終盤の展開などはあまりにありきたりでちょっとがっかりしたが、リーバスの人間味のある描写で物語に自然に入れる感じ。
[寸評]
作者いわく、往年のテレビホームドラマに捧げる作品らしく、古くは「寺内貫太郎一家」、比較的近いところでは「ちゅらさん」あたりの雰囲気。
いまどき珍しい大家族に近所衆も加わり賑やかな設定だが、四季に1作ずつの計4作の短編集ではとても全員をしっかり描くことはできず、勘一と我南人以外は姿が良く見えず。
まさに1時間のテレビドラマを観るという感じで楽しく読めるが、無理にミステリー仕立てにする必要はなかったのでは。
[寸評]
垣根涼介の作品は今までに「ワイルド・ソウル」など3冊読んだが、すべて4つ星。
これもまた面白い話を淀みなく読ませる。
いつもどおり、とにかく主人公がカッコ良い。
個人的にはもっと深い人物描写が好みだが、嫌味のない人物造形は相変わらずスマートだ。
コロンビア・マフィアの荒くれ男たちから全幅の信頼を寄せられる日本人という設定もすんなり入ってくる。
行き場のない絶望感を引きずる現役と元警察官男女もよく描けている。
[寸評]
このタイトルと、帯には"あたしが連れてってあげるよ、ビートと熱狂の果てまで"、私が期待していたのがまさにそれだった。
3分の1までは天衣無縫な夏美の魅力が期待をあおってくれたが、メンバーの一人が自殺して、その死の真相を求めて宮原と夏美が旅立つあたりから別の話になってしまった。
結局その真相も何か納得できるものでなく、やはり夏美が、世間知らずの甘ちゃん娘ではなく、大きく羽ばたいていく姿が読みたかったな。
[寸評]
文章の癖や誤字、ワープロ入力誤りなどから受講生の誰が書いた文章かを言い当てる文章探偵ぶりは、読んで納得はさせられるが、それが面白いかはまた別問題。
ラストまで結局盛り上がらず。
本格もの、叙述トリックなどが好きな人はのめりこんで読むのだろうかなどと思いながら、半ば上の空で読み進めたようで、作者にも失礼だったかも。
「オノマトペ」なんて言葉も初めて知ったが、どうも私はこの本を選ぶ層とは違っていたようです。
[あらすじ]
エジンバラ市郊外の空き家で、麻薬の過剰摂取と見られる青年の死体が発見され、リーバス警部が現場に向かう。
釘で打ち付けられていない十字架像のような格好で死体が横たわっており、燃え尽きた大きなろうそくが2本。
壁には二重の円に囲まれた五芒星の大きな絵。
オカルト的なものと繋がりがあるのか。
リーバスは若いホームズ刑事を使い捜査を進める。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
東京は下町の明治から続く古本屋「東亰バンドワゴン」。
今の店主は3代目79歳の堀田勘一、まだ頭も身体もしゃんとしている。
勘一の一人息子の我南人(がなと)は「伝説のロッカー」などと呼ばれ、60になったというのに今も金髪で長髪、あちこちをふらふらしている。
カフェを併設した店舗兼住宅には孫の子供まで四代の家族が暮らしており、毎日が大騒ぎだ。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
南米はコロンビアの大規模コカイン密輸組織の中心人物リキ・コバヤシ。
30代の日本人。
頭も見た目も良く、度胸があり、義理堅い男。
彼はコロンビアの高原の村で移民2世として生まれたが、反政府ゲリラに村が襲われ孤児となった。
その後地元の寡婦に育てられ、やがては義理の兄が仕切っていたギャング団を兄の死後に引き継ぎ、のし上がっていった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
芸能事務所に勤める宮原祐司は今日も朝から流しのスカウト活動。
今までにスカウトしてタレントとして売り出した娘は一人で、その娘は結局2年間で芽が出ず故郷に帰った。
かつてはバンド活動もしていた彼は、仕事で向かったライブハウスで、ペルソナ・パラノイアというバンドのメンバーの一人、夏美に目を奪われる。
ギター演奏も、外見も、絵になる、イケる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
中堅ミステリ作家である左創作は、小説講座の講師をしていた。
そこで彼は文章の特徴などから作者を言い当てて、"文章探偵"とも呼ばれていた。
彼はまたミステリ新人賞の2次選考の委員もしている。
そんな彼のもとに差出人不明の脅迫状めいた手紙が届くようになった。
中には蝉の抜け殻も。
そして現実の殺人事件と酷似した内容の応募原稿を発見する。
[採点] ☆☆★
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