[寸評]
第2次大戦秘話ものの冒険小説。
凄腕のレーサーたちが数奇な運命を辿り、イギリスのスパイとして、またフランスのレジスタンスとしてナチスに抵抗する物語。
導入部から序盤あたりが少々もたつき気味だが、それ以降はスムーズに流れる。
全体に定石どおりの組み立てで、驚きや盛り上げ方は今ひとつだが、裏切りや二重スパイといったサスペンスに加え、遠く離れて信じあう恋人同士の描き方も嫌味なく、しっかり楽しませてくれる。
[寸評]
40から70ページの短編が5編で連作形式。
明治時代初期の市井はかくやと思わせる、人々の暮らしぶりに文明開化の高まりも生き生きと活写されている。
登場人物は多いが、それぞれが巧みに関連付けられ、最後の北海道は小樽を舞台にした物語に集められていく。
決して明るい話ではなく、人生の悲哀、苦い記憶、人間の残酷さが胸を締め付けるような場面も多いが、全体に軽やかで無駄のない運びで話が進み、好印象。
[寸評]
田舎の駐在所に赴任したベテラン警察官が遭遇する事件、住民や署の捜査員との軋轢などを描く50〜100ページの短編5編。
語り口も話の流れも滑らかで、社会派娯楽作として十分面白い。
大きな警察署の捜査員から派出所勤務となった者の悲哀も巧みに表現されている。
限りなく4つ星に近いが、第1話、3話は警察官としての職務を逸脱した、必殺仕掛人っぽく義憤に駆られての行動も若干目に付いた。
面白いが疑問は残る。
[寸評]
2000年から2年かけて刊行された4冊の単行本を上下2冊に文庫化。
飛込みというマイナーな競技で、オリンピックの舞台を賭けて懸命に努力し、戦う中高生たちを描くスポーツ青春ドラマ。
とても熱く、とても面白い。
素直に引き込まれてしまうストーリー、盛り上げ方も尋常でない。
実物はおろかテレビでも滅多に見たことのない競技だが、猛烈に見たくなる。
お決まりの人間的な成長も忘れず、リアルな少年たちの熱い戦いが読める。
[あらすじ]
2001年のオーストリア。
ナチスの偽札の原版を探して湖を浚っていた英国政府関係者は大戦中の英軍参謀車を発見。
中から軍の外套をまとった白骨死体とウィリアムズという名札の刻まれた旅行鞄。
そのウィリアムズは1928年、画家のお抱え運転手としてフランスにいた。
やがて彼はレースで活躍するようになるが、ヨーロッパには戦争の影が忍び寄っていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
明治維新後まもない東京。
大工の与茂三は妻をとうになくし、娘2人と暮らしていた。
ある日、仕事を終え家に帰ると白地に薄茶の斑の犬が茶の間に座っている。
おまさが、国元に帰ることになったさるやんごとない筋のお方から譲られたという。
結局与茂三はその犬を「姫君」と呼び世話をすることになる。
やがて与茂三は藤堂という男から牛鍋屋の普請を頼まれる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
北海道警の川久保巡査部長は札幌の警察署から志茂別の駐在所に単身赴任となった。
25年の警察官人生で初めての体験。
赴任して4日目。
町の防犯協会の会長らが来所し、勧められるまま日本酒を飲んでしまったところに町営墓地で喧嘩騒ぎが起きているらしいとの電話が。
飲酒して車も出せず、とりあえず様子を見るよう返答してそのままになるが。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
高さ10メートルの飛込み台(コンクリートドラゴン)からダイブして、空中演技と入水技術を競う飛込み競技。
中学2年の知季は、赤字経営で存続の危機をささやかれているミスキダイビングクラブに所属しているが、試合の成績は平凡だ。
そんなクラブに、創業者の孫という麻木夏陽子コーチがやってくる。
彼女は知季の天性を見抜き、自主トレメニューを課する。
[採点] ☆☆☆☆
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