[寸評]
前作から何と13年ぶりというシリーズ最新作。
巻が進むにつれて鋭さやハードボイルド色が少しずつ薄れていくように感じる。
殺人場面が多いが、いずれも比較的あっさりした書き方で、冷たさや衝撃がやや不足。
冗舌な会話で保たせるような展開もある。
いろいろ不満もあるが、それでも450頁を一定の緊張感を保ったまま一気に読ませるのはさすが。
最後の衝撃の連発はなかなかだし、シリーズ継続は間違いなしのようで、期待したい。
[寸評]
作者お得意のお仕事小説の連作短編5話。
バスの車内アナウンスの原稿書きとか、菓子の袋裏に印刷するちょっとした話題を作るとか、公園の管理事務といった仕事を、主人公が何らかの事情から転々とする様子が描かれる。
各話それぞれにちょっと奇妙な状況が出現するのだが、面白いというより余分な印象を受けた。
それぞれの仕事の内容だけで十分興味深い話になっている。
仕事にしっかりのめり込んでしまう主人公には好印象。
[寸評]
小惑星衝突まで6か月時点の第1作、3か月の第2作に続く完結編。
衝突を前に荒廃しきった社会環境の中で、幾多の障害にもめげず、真実を追い求めてあえぎながら進む主人公が描かれる。
これでもかと言うほどの試練が次々に彼を襲う展開で、二転三転する物語はミステリとしてめっぽう面白いが、終末SFとしては設定の割にさほどの広がりはない。
そして長い旅路の最後に彼が行き着いたところ−この静謐な余韻が素晴らしい。
[寸評]
「その女アレックス」の作者のサスペンス風味の大作人間ドラマ。
第一次世界大戦の仏独の戦いの最前線から話は始まる。
主人公と戦場で彼の命を救った際に顔面に大けがを負った男の2人に、出世欲旺盛な没落貴族の上官が絡んで、戦争の悲惨さ、滑稽さ、死者と復員者への世間の対応などが描かれ、後半は彼らの仕組んだ詐欺事件もスリルをもって描かれる。
多くの人間模様が絡み合う、波乱に富んだ堂々たる作品になっている。
[あらすじ]
東都ヘラルド新聞編集委員の残間は、昔の上司だった田丸に呼び出される。
田丸は、いわゆる百舌事件がらみで退社を余儀なくされ、今は右翼色の濃いオピニオン誌の編集長をしている。
田丸は残間に、自分の編集誌に百舌事件について洗いざらい書いて欲しいと依頼する。
残間は即答を避け、当時の警察関係者で今は私立探偵をしている大杉良太に、別件の調査依頼と共に相談を持ちかける。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの私は、ハローワークで紹介された、一日中モニターの前に座り監視対象者の在宅時の映像をすべて確認する作業をしている。
担当している山本山江は小説家で、知人からそれとは知らずに密輸品の「何か」を預かっているらしい。
それを探るため、小部屋の中で、1台のモニターで前日の、もう1台で前々日の録画映像を見続けている。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
マイアという小惑星が地球に衝突し、世界が破滅するまであと一週間。
元刑事のヘンリー・パレスは妹のニコの行方を追っていた。
ニコは、小惑星のそばで精密核爆発を起こし飛翔経路を変えて地球落下を阻止できること、それを政府が隠蔽していることを信じている勢力の一員となっていた。
オハイオ州の警察署にグループが集まるという情報を得たパレスは、しらみつぶしに無人となった警察署を回る。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1918年11月、ヨーロッパ全土を巻き込んだ戦争は、連合国側が優勢で、いよいよ休戦の見通しが現実味を帯びてきた。
フランス軍兵士アルベールもここしばらく休戦の期待を抱きながら穏やかな日々を送っていた。
そんなとき、部隊の2人の兵士に偵察任務が与えられる。
やがて3発の銃声が鳴り響き2人がやられた。
仕返しとばかりに砲兵隊がドイツ側へ一斉射撃、ドイツ軍も応戦し混戦となった。
[採点] ☆☆☆☆
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