[寸評]
折りしも韓国の大学入試のカンニング事件が騒がれているが、もっとハイテクを駆使した方法が描かれる。
結局不正は発覚し、宮本は図らずも仲間となった者たちと復讐戦に挑むわけだが、ポーカーによる10億円を賭けた勝負の場面は手に汗握るスリリングな展開が続く。
ラストは当然のように大どんでん返しが待っているのだが、そこから幕切れまでで★マイナスは残念!
映画「スティング」のような鮮やかなFakeは期待しすぎでした。
[寸評]
前作「さらば長き眠り」でおさらばしたはずの眠りに入ってしまった作者の約10年ぶりの新作。
待ちくたびれた私を見事に感激させてくれました。
見せ掛けでない、本物のハードボイルドがここにある。
入り組んだ謎は複雑かつ深いが、終盤に向けよく整理されている。
沢崎ってこんなにお喋りだったかな、と思うほどの饒舌ぶりは気になったが、本書は新・沢崎シリーズの第1作で、著者自ら早期刊行と明言している次作が大いに楽しみ。
[寸評]
SFで知られる作者の短い話を集めた奇想コレクション。
表題作の外、短編6編と140ページほどの中篇1編。
その中篇「地獄は永遠に」は悪魔的な描写力が凄いが、その異様で退廃的な世界に面白味を感じるところまではいきませんでした。
1950年代の作品が多く、核の脅威にさらされた時代を反映した短編が多いのも特徴。
短編はどれも楽しめるが、狂ったアンドロイドを描く「ごきげん目盛り」の奇想ぶりが際立って面白い。
[寸評]
美術評論家としての確固たる地位と名声を欲した男のなりあがりの図式。
現代美術の幻の大家との対面で判明した現実と主人公の奸計、その後の顛末と、ぐいぐいと引き込まれるような面白さを持つ。
後半のサスペンスの盛り上がりはなかなか。
随所で主人公に語らせる美術に関する薀蓄については筆致が少々硬くて読みづらいが、そのあたりはなんとか我慢したい。
あっけないラストも主人公の達成感を考慮すれば頷ける。
[寸評]
存在を秘匿される組織、防衛庁情報局の工作員たちを描く物語6編だが、2つは連作となっている。
まずは国内情報組織を荒唐無稽でなくリアルに描くところに新鮮な驚きを感じた。
登場人物の内奥の声がやたらに饒舌で、話のリズムを阻害しているところが目に付くのは残念だが、中では連作となる「媽媽」と「断ち切る」がドラマチックだ。
また中篇の「920を待ちながら」は、読者を欺くスパイスリラー的な展開の妙が楽しめる。
[あらすじ]
調査事務所を営む宮本のもとに、西村と名乗る男が息子を大学に入学させて欲しいと頼みに来る。
以前、宮本は叔父の2桁の足し算もできないような息子をある方法で大学合格させた。
どこから聞いたか、美術の才能はあるが学科がだめで2浪している息子の昌史を東京芸術大学へなんとしても入学させたいとすがる西村に、宮本は200万円で請け負う。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
大晦日、渡辺探偵事務所の沢崎のもとに伊吹啓子という女が訪ねてきた。
父の哲哉が、横浜で起きた銃撃事件の犯人として警察に逮捕され、父が信頼していた渡辺を頼って来たと言う。
7年前に死んだ渡辺の代わりに沢崎は啓子を警察へ送るが、そこで護送のため署を出た哲哉が銃撃される現場に出くわす。
沢崎の機転で伊吹は助かるが刑事が撃たれる。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
年のころは38、長身痩躯の男が電話帳でブキャナンという姓の家を調べ、片っ端から訪問していた。
彼はある子供を捜していた。
またも空振りに終わった家を出た時、側頭部に強烈な一撃を食らう。
近隣で詐欺を働いている法律事務所の者に捕まり探索の理由を問いただされる。
彼は学校の校長で、生徒の作文に目を通していてとんでもない天才を発見していた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
新進気鋭の美術評論家フィゲラスに、美術コレクターのキャシディから驚くべき申し入れが。
フランス人画家でシュールレアリスムの大家ドゥビエリューとのインタビューの機会と引き換えに、彼の絵を盗んでくること。
自宅が全焼しドゥビエリューはキャシディの手配でフロリダに移住していたが絵を譲ることは拒否していた。
フィゲラスは愛人を連れてフロリダに向かう。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
建設会社社員の中里は現場からの帰りを、房総半島を縦走する小湊鉄道の最終電車に揺られていた。
他に乗客は男子小学生が一人のみ。
そんな電車に陰惨な雰囲気の男が乗り込んできて、中里に拳銃を向ける。
男は逃亡中の元北朝鮮工作員。
12年前、やはり工作員だった弟を日本の治安情報局に殺され、退役した中里を恨んでの犯行だった。
[採点] ☆☆☆☆
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▲映画「スティング」
1930年代のアメリカはシカゴを舞台に、ギャングに仲間を殺された男が昔の仲間を集め、競馬のノミ屋を仕立てて、ギャングの大親分にひとあわふかせる痛快な物語。
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビで、ラグタイム・ピアノの音楽も楽しい最上の娯楽作。
1974年度のアカデミー賞で作品賞など7部門受賞。