[寸評]
柳生十兵衛の奇怪な物語を両端に、新陰流・大和柳生家における剣技と妖術を駆使した暗闘の物語全5編。 陰陽師まで登場させ、どの話もその設定の奇想、おどろおどろしさに、読む者まで妖術にかけられたかのような気分になる。 しかし、最近の時代小説としは文章が硬い感じで、それゆえ本来の時代物・剣豪ものの雰囲気は味わえるものの、少々読みづらく、せっかくのスピード感も滞りがち。 これは読む方の技量不足かな。
[寸評]
極端なエログロナンセンスに加え、首相からあの世・地獄の世界まで徹底的におちょくってしまう戸梶パワー全開の作品。 主人公が刑務所を民営化し、自ら初代所長となってやりたい放題、そりゃ地獄に堕ちるわなぁ。 終始暴走状態の話だが、その分物語性には欠ける。 単なるバカ騒ぎの1冊とも思えるし、悪の笑いをのりのりで楽しめるかがポイント。 本作りが凝っているのも作者の他の本と同様だが、こいつはその点でもかなり凄い。
[寸評]
2人の男と1人の女。 スターとマネージャー。 芸能界を舞台に、この3人のたかだか1年半ほどの、流れ星のようなきらめきとその消滅が描かれる。 虚実織り交ぜた独白調が少々読みづらいものの、あっと驚くどんでん返しも途中で披露され、さらに小さなどんでん返し・立場の逆転が鮮やかに連発され、ミステリー紛いの面白さも併せ持っている。 終盤の展開も見事だが、派手な世界の終わりらしく静かな幕切れがいい。
[寸評]
軽快な犯罪コメディ。 もう少し読みたかったと思うほど短い物語だが、巻頭から走りっぱなしで、ラストまで息も切らさず、存分に楽しませてくれる。 ヤクザから詐欺師、中国人ギャングまで10億円を巡る複雑な人間関係が見事に整理され、次々に局面が変わる展開も実にスマートに描き切っている。 女1人に男2人というありふれた主人公らの関係も深すぎず浅すぎず、嫌みがない。 すべてに程良くまとまった面白本です。
[寸評]
前作「神は銃弾」が印象深かった作者の第2弾。 言葉そのものを重視し、力を込めた文体であるのは十分に分かるが、読んで心を突き動かされる人と、疲れて投げ出す人の両極端に分かれる作品という印象。 前作以上に強引なストーリー運びで、私には話についていくのも疲れる感じでした。 会話にしてももう少し自然な言葉で表現できないものか。 終盤の銃撃シーンは激烈な表現手法で迫力はあるが、全体に硬い。