[寸評]
前作「函館水上警察」に続く短編4編。
各編とも設定も丁寧で、当時の様子が目に浮かぶように描写されて大変興味深く、それぞれ展開の意外性というものはあまりないが、全体として楽しめる作品と言えよう。
編が進むにつれ、当時の函館をはじめとする日本の社会状況や経済面が詳述されるようになり、物語としての面白さが減じられていったのは残念。
またこのシリーズが完結してしまったのも残念。
[寸評]
家族の突然の失踪が未解決のまま25年、テレビで久しぶりに扱われてから次々に謎の出来事が起こる。
目新しい設定ではないし、真相も特段の驚きはない。
それでも面白さは格別の物語。
語り手となるシンシアの夫が妻に対し疑心暗鬼に陥るあたり心理サスペンスとしても上出来だし、アクセントの付け方も絶妙。
2/3ほどで出てくる父親が持っていた写真の衝撃はメガトン級だし、そこから先はまさに一気読み。
[寸評]
連作短編7編からなるが、6作目の「随監」は日本推理作家協会賞・短編部門の受賞作。
警察ものの短編集は数多いが、題材の特殊性もあり面白さは概ね保証されている。
この本の短編はいずれもやや鋭さや突っ込みに欠けるのは不満だが、話の変化やある程度のキレもあり、面白く読める。
主人公含め、登場する警官が、市民の安全より自らの権力欲のほうに頭がいっているのは嘆かわしいですが。
[寸評]
なんとなく「ラスト・チャイルド」を連想させる設定だが、「ラスト・チャイルド」に比べるとややスケールが小さく、深みに欠ける物語。
しかし、サクサクと読みやすい文章と話の流れで、十二分に楽しめる作品である。
連続児童猟奇殺人犯の話でも、殺人場面を執拗に描写するような作品ではないので安心。
服役囚との手紙による探り合いも上手い趣向で、半ば過ぎの急展開からはまさに一気読みの面白さ。
[寸評]
設定は「貴族探偵」と似ているが、違うのはこちらはお嬢様が謎解きに取り組む姿勢があるところ。
6編の短編集で、どれもおおむね、事件発生→風祭警部と麗子の捜査→行き詰まり→麗子の執事兼運転手の鮮やかな推理、というパターン。
執事が話を聞くだけで真相を掴んでしまうのはやりすぎだし、その真相もかなり強引。
しかし、奇妙?な設定、軽妙なやりとりで、テンポ良く読め、暇つぶしには好適な作品。
[あらすじ]
明治24年、函館水上警察署の五条警部は、港の桟橋そばで目の前を通り過ぎる女に目を凝らした。
女性としては大柄で、毛皮を着て背筋を伸ばし、フロックコートの男を後ろに従えて大股に歩いていく。
税関の課長によると、女はロシアの旅券を持っているが、ウラジオストクの会社社長の養女となった日本人。
4歳のときに函館の大火で両親とはぐれ、自分の素姓が分からないそうだ。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
14歳のシンシアが目を覚ました時、家の中は静かだった。
昨夜、飲酒してボーイフレンドといるところを父親に見つかり家に連れ戻され、2階の寝室に閉じこもって寝たのだった。
朝、家には両親も兄もいなかった。
とりあえず学校に登校したが、昼過ぎ自宅に戻っても家族は誰もいなかった。
それから25年が経過した。
シンシアは事件を扱うテレビ番組に出てかつての我が家に入る。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
柴崎は警視総監直属の筆頭課である警視庁総務部企画課の係長。
34歳で警部に昇進、36歳で警察の中枢に異動。
総監への組織のレクチャーの最中、企画課の木戸巡査部長が拳銃自殺との報が飛び込む。
木戸は鬱病だが快方に向かっており、課長の中田から電話で木戸を射撃訓練に参加させるようにとの電話を受け、彼を送り出した。
しかし中田は電話をかけていないと言う。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
イングランド南西部のエクスムーア。
12歳の少年スティーヴンは、ひとりシャベルを手に荒れ果てた土地を掘っていた。
19年前、母の弟ビリーは、連続児童殺人犯エイヴリーに誘拐され殺されたが遺体はいまだ発見されていない。
家族は、息子の失踪以来心を閉ざしたままの祖母、母、そして弟の4人暮らし。
スティーヴンは普通の家族になれるように、ビリーの遺体を見つけようとしていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
宝生麗子は警視庁国立署の刑事。
上司の風祭警部は中堅自動車会社「風祭モータース」の御曹司で、犯行現場にジャガーで乗りつける成金趣味で少々ピントのずれた男。
一方、麗子は、署には身元を隠しているが、世界的な複合企業「宝生グループ」の総帥のひとり娘で、正真正銘のお嬢様。
今回の事件は、女性がマンション自室で絞殺されたのだが、部屋の中でブーツを履いていた。
[採点] ☆☆☆☆
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