[寸評]
女錠前師という設定がまずは成功。
彼女の気風の良さが気持ちいい。
知り合いの芸者の困ったご贔屓の若旦那を懲らしめるエピソードも面白い。
メインの話も怪しげな連中を少しずつ登場させ、テンポ良く興趣を高めていく。
かなり四つ星に近い出来だと思うが、からくり錠前があまり活かされていない点と、事件が片付いた後の結びがやや長く、時代小説らしい心に染みるような情感を感じさせる幕切れに至らず、減点。
[寸評]
16世紀後半、宣教師として来日し、イエズス会の活動などを記録したルイス・フロイスの「日本史」等を参考にしたフィクション。
7つのエピソードから成るが、とりわけ最初のゼイモトの話が面白く、四つ星確実と思ったが、話を重ねるごとにボルテージが下がっていく感じ。
耳鳴りに悩まされるザビエルや、狐憑きの悪魔祓い、アル中になる布教長など、格好の題材が並んでいるのだから、もう少し色づけしても良かったのでは。
[寸評]
時代小説が続いたが、さすが歌舞伎界に実績のある作者の作品が頭一つ抜いている。
話は「非道、行ずべからず」の5年後、主要登場人物はほぼ同じ。
沢之丞の死に続き、大道具方や関連のある大工など不審な死が続き、怪しげな寺の存在などミステリー色はさらに濃くなった感じですが、話はかなり広がるも、奇をてらわない結末は納得。
芸に惑い人間関係に惑う宇源次の苦闘の描写、跡目争いの結末も心を打つ。
[寸評]
書名からなんとなくコミカルな内容を想像していたが、サスペンスフルな法廷ものでした。
コナリーの作品の中では軽めの印象だが、面白度は十分。
とりわけルーレイに絡めとられながら弁護を進めていく下巻は一気読みの面白さ。
一方、検事の元妻や娘との関係はありきたりだし、人物描写は浅目。
また、娯楽作だから目くじら立てることもないが、裁判が罪を裁く場ではなく、検事と弁護士のゲームの場になっているのはどうか。
[寸評]
心的障害で休職中の警官に、探偵事務所まがいの依頼が連続することを気にしなければ十分楽しめる連作短編6編。
いずれの物語もベテラン作家らしく堅実な出来で、意外性よりもしっかり捜査を詰めていく話は安心して読める。
仙道が激しい心的外傷を負った事件については最終話で語られるが、これを最初に持ってきて、病気を克服しながら事件に関わっていく様を描いたほうがドラマ性が増したのでは、と思った。
[あらすじ]
緋名は女錠前師。
名人と名高かった父の後を継ぎ、江戸でも少しは知られるようになってきた。
今日は、主が急死した日本橋伊勢町の仏具屋で、注文のあった仏壇を納めてある蔵の扉が開けられず、緋名が呼ばれた。
そこには鶴と亀の見事な飾り細工が施された錠前が。
それは父の作だった。
ほんの束の間、鍵は綺麗に回った。
我が家に帰りつくと、家中が荒らされていた。
そこにひとりの侍が。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
1543年、ポルトガル人のゼイモトは、シナの船に乗って、ジャポンの種子島を目指していた。
東シナ海は猛烈な台風だが、シナ人船主の王直は余裕の表情だ。
28歳のゼイモトは呪われた人生を送ってきた。
彼の顔は呪いにかかったとしか思えないほど美しい。
行く先々で、女がらみ、また男同志でも問題が起こる。
女に惚れられ、亭主に追い出され、また別の女の世話になる、の繰り返し。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
文化十一年、中村座の女形、三代目荻野沢之丞も齢七十を過ぎ、ついに舞台を退く決意をして、最後に「道成寺」を披露することに。
その初日に沢之丞は、舞台に設けられた穴から落下し、舌を噛んで死んでしまう。
穴の下に置かれるべき台がなかったのだ。
四代目となるのは正妻の子、市之介か、後妻の子、宇源次か。
沢之丞は宇源次を高く買っていたが、遺言も残さず、突然の死だった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
ロサンジェルスの刑事弁護士マイクル・ハラーは定まった事務所を持たず、高級車リンカーンの後部座席を事務所代わりにしている。
3月7日、知り合いの保釈保証人バランズエラから情報が。
ビバリーヒルズに住むルーレイという男が重傷害と強姦未遂で逮捕され、50万ドルの保釈金を負担する手続きを行うとか。
金の匂いがする。
検事側担当はハラーの元妻・マギーだったが、交代することに。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
北海道警察本部捜査一課の仙道警部補は、ある事件で精神的後遺障害を患い、自宅療養を命じられている。
すでに11か月、健康体になったと訴え続けているが、人事課には認められていない。
そんな仙道のもとに、6年前にある事件を通じて知り合った中村聡美からオーストラリア人絡みの殺人事件の犯人探しを依頼される。
しかし仙道には捜査権も逮捕権も、そもそも警察手帳すらない。
[採点] ☆☆☆★
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