[寸評]
シリーズ最新作は、時代を遡り、いかにハンニバル・レクターは怪物となったかを描く。
避難先での家庭教師とのやり取りなど、レクターの天才ぶりがうかがえる場面は「ハンニバル」におけるイタリアのエピソードを思い起こさせる面白さ。
また、叔父の妻、紫夫人の描き方が実にしっかりとしていて驚かされる。
ところが後半は単なる復讐アクションが連続するだけになってしまった。
各々の復讐劇ももう少し丹念に描いてほしかったところ。
[寸評]
6短編。
帯によれば「ビター&スウィートな<在宅>小説」ということだが、作者にしては"ビター"の度合いが薄いのが不満。
なんだかほんわかいい気分になるのも悪くはないけれど、もっと毒が欲しいなぁ。
ロハスな人々を揶揄する話なども結末は拍子抜けの感じで、もっと突っ走ってくれないと。
刺激不足の内職妻のアブナイ話などやけに中途半端に終わったものもあり、いずれの話もあと10ページ書き込みが足りない印象でした。
[寸評]
2年ぶりの作者だが、相変わらず息詰まるような人間ドラマを見せてくれる。
記憶喪失の生真面目な青年と、楽しければいいじゃんという感じの昭光の奇妙な2人が一章ずつ語っていく。
軽薄な若者の話かと思いきや、登場人物たちがぶつかり合い傷つけあう緊張感に満ちた生身のドラマで、読み応え十分。
終盤の選挙絡みの展開はいただけないが、やや唐突な終わり方も作者らしい。
昭光の強烈な宮古島の方言が頭を離れない。
[寸評]
表題作ほか、純粋宇宙SF5編。
宇宙工学はもちろん、物理にもまるで弱い私だが、しっかりとした理論に裏打ちされた(ような?)宇宙探索の世界は、実に興味深く面白く読ませてくれる。
全体に静謐なトーンで綴られる物語で、熱い盛り上がりとは無縁だが、宇宙がテーマの作品にはこの理性的な静けさが相応しい。
いずれももっと書き込めるだけの内容を持った話ばかりで、50ページ程度に納めてしまうのは勿体無い気がします。
[寸評]
クーンツといえばホラーやSFで名高いが、サスペンススリラーの名手としても定評がある。
この作品も巻頭からラストまで一直線に突き進んでいき、500ページ近くを飽きさせることなく読ませてはくれる。
しかし庶民の妻の誘拐で身代金200万ドル!?というところで、早々にこの物語と距離が開いた感じ。
その謎もやがて解消されるが、その後の設定も少し外れすぎていないか。
銃が簡単に手に入るアメリカならではの話ですね。
[あらすじ]
15世紀、ハンニバル"峻厳"公はリトアニアに城を構えた。
それから500年後の1941年、ハンニバル・レクターは8歳。
ヒトラーが電撃的にソ連侵攻を始めた直後、一家はレクター城を離れ狩猟ロッジへ避難する。
両親と妹のミーシャ、家庭教師のヤコフ先生と使用人たち。
3年半の間、レクター一家は森の中でどうにか生き延びる。
そこへソ連軍が進撃してくる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
42歳の専業主婦、山本紀子。
子供も中学生になって家族で出掛ける機会もほとんどなくなり、ピクニック用折りたたみテーブルをインターネットオークションで売ることにした。
古物商にただ同然のように言われたのが癪だったのだ。
何とか出品を済ませたところ、なんとか締め切り間近に入札者も増えて、2500円で落札された。
なんだか充実感が湧いてきた。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
僕は夜、森の中を必死に逃げていた。
不意にアスファルト道路に出た。
やがて道の上のほうから懐中電灯の光。
下りて来た男は独立塾というところから脱走してきた宮古島出身の伊良部昭光という若者。
僕は何も持っていないし、自分の名前も何かも思い出せない。
ここは沖縄の北東部という。
昭光に"ギンジ"という名前を付けられ、彼についていくしかない。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
筑波宇宙センターで残業中の瑞城のもとに探知衛星から通報が。
警戒レベル5「『赤い小人』と断定。緊急の対応を要す」。
地球外文明探査のため宇宙に発射した百万個の切手サイズの探査機が有意な信号をキャッチ。
解析の結果、異星からの探査機がこちらに向かってくることが判明。
そして今、『赤い小人』と名付けた探査機がいよいよ接近してきたのだ。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
仕事中の造園業者ミッチェル・ラファティの携帯に妻ホリーから電話が。
誰かに殴られているような声がして、男が電話を代わり、妻の身と引き換えに200万ドルを要求してくる。
本気であることを見せるため、ミッチェルの近くを歩いていた男が突然銃撃される。
駆けつけた警察には妻の誘拐のことは話さず、急ぎ帰宅すると、キッチンに争った跡と大量の血が。
[採点] ☆☆☆
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