[寸評]
サントリーミステリー大賞受賞作です。
今までもこの賞の受賞作は印象の薄いものばかりでしたが、残念ながら今回もそのようです。
全体に暗く澱んだ印象。
設定もそれなりに面白いし、話の流れもつまらなくはないけれど、急いで読み進めたいという気にさせてくれません。
なぜ老人が10億円チャリティを企てたのか、説明はされていてもやっぱり納得できないなぁ。
ニュースキャスターが自分を追いつめていく姿もやるせない。
[寸評]
主人公をはじめ、悪人ばかり、ダニのような人間ばかりが出てくる話だが、人を利用するのみで
絶対に信じることをしない者たちのすさまじい裏切りの連続にただ呆然。
物語自体はたいして広がりもない。
しかし、追いつめられた者たちの様々な感情がページからほとばしり出てくるような熱い描写に痺れました。
特に終盤、互いに求め合いながら、ぎりぎりの状況下で命を賭けてせめぎ合う男と女の姿が衝撃的。
[寸評]
15年以上前の作品だが、ナチものとして古さは感じられない。
アリステア・マクリーンの要塞シリーズを見ているように、果たして本当の敵は誰か、どんでん返しの面白さがたまらなく、ラストまで飽きさせない。
ただ、サスペンスたっぷりの大戦中の部分に比べ、現在を描いた部分は比較的クールで終盤の盛り上がりがいまいち。
また、肝心のノストラダムスの予言もそれほど効いていないのは残念。
[寸評]
実に不思議な物語。前半の、輝和の両親が相次いで死にカルバナにより家の財産が根こそぎ失われていく様は壮絶。
後半、彼女を取り巻く集団の宗教団体めいた描写も面白いが、失踪した妻を捜してネパールを歩き回る輝和の姿にはらはらさせられる。
ホラー色も前作「カノン」よりやや強く、話の展開が全く読めない面白さ。
そしてラストは涙ものの感動の場面を見せてくれます。
[寸評]
適度なユーモア、スリル、サスペンス、謎解きの妙味などが見事にブレンドされた上質のミステリー。
主人公ダイヤモンド元警視も人間味あふれる描き方で好感が持てる。
以前読んだ「クリスマスのフロスト」のフロスト警部を少しだけ上品にした感じかな。
ラストの謎解きが少し飛んだような気もしますが、物語の長さも適度で、翻訳もの特有の読みにくさがないのもうれしい。
[あらすじ]
高級老人ホームに住む土地成金が10億円を3人に均等に贈与し使途に制限は付けない、とのチャリティを企画する。
テレビのニュースショーの人気キャスター降居はこの老人に指名された形でイベントの独占取材を行う。
大騒ぎの中受贈者に選ばれた3人は8月1か月の猶予期間を設けられるが、そのうち殺される者が出る。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
新宿歌舞伎町は中国系マフィアがしのぎを削る町。
ここで日本と台湾のハーフの劉健一は、小さなバーをやりながら、盗品を売りさばく故買屋をしている。
ある日、上海マフィアのボスの片腕を殺して逃げていた昔の仲間の富春が戻ってきたという話が伝わる。
健一はボスに脅され、富春の行方を探す。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
1978年ロンドン塔を訪れたドイツ人女性が、夫が1941年にここでスパイとして処刑された、と告げる。
しかし、これについて歴史的記録はなかった。
本件を担当することとなった英国海外情報局員ハービーは、大戦中ノストラダムスの予言を利用して
ドイツの親衛隊と国防軍を反目させようという諜報作戦に行き当たる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
結木輝和は東京郊外の旧家の跡取り息子。
しかし農家に嫁のきてはなく、40歳を前にしてとうとう出稼ぎのネパール女性と集団見合いし、カルバナと結婚する。
しかし彼女は結木家の暮らしに馴染めず何か月たっても日本語は片言しか話せない。
そのうち不思議なことが家の中で起こり出し、彼女の神がかり的な振る舞いが始まる。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
2年前、警視の職を自ら辞し定職の無いダイヤモンドのもとにかつての職場の刑事が訪れた。
彼が4年前に逮捕して刑務所へ送り込んだ殺人犯マウントジョイが脱獄し、副署長の娘を誘拐したという。
マウントジョイは冤罪を主張し真犯人探しをダイヤモンドに要求する。
女性警部と2人でダイヤモンドは久しぶりの捜査活動に入る。
[採点] ☆☆☆☆★
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▲「クリスマスのフロスト」
イギリスの田舎町で起こった少女失踪事件を捜査する仕事中毒にして下品で押しの強い名物警部フロストを中心に描く警察小説。
とにかくフロストのキャラクターが最高で、連発する下品なジョークも爆笑もの。
複雑なストーリーも良く整理されている。
R・D・ウィングフィールド作。創元推理文庫。94年の週刊文春傑作ミステリー1位。