[寸評]
以前読んだ「逃げ出した秘宝」と同じく泥棒ドートマンダーシリーズの第8作にあたる。 前半、舌をかみそうな名前の両国の外交官やニューヨーク大使館の描写が傑作で、快調なテンポで進む。 しかし捕らわれたドートマンダーがようやく脱出、仕返しの大一番となる後半は話が入り組んでいてなかなかついていけない。 ギャグのセンスも日本人とはかなり異なり、持って回った感じで、痛快な終盤を迎える前に読み疲れてしまった。
[寸評]
人間、周りに惑わされず自分の好きに生きればいいじゃないかと全編にわたって語られ、何か元気が出てくるような物語。 とんでもなくバラバラでありながら強い家族の絆を感じさせる。 片岡家4人それぞれのエピソードがどれも甲乙つけがたいほど面白く、20年にわたる物語は実に変化に富んでいる。 4人のものの考え方がストレートに伝わってきて痛快。 ただし全体にやや長く、またラストの7ページは不要。 後味が悪くなってしまった。
[寸評]
軽快なテンポで進むライトコメディー。 お客様相談室でのエピソードも半ばお約束のものだが、素直な文体、軽妙な語り口がいい。 多彩な登場人物たちの割り振りも上手く、それぞれのキャラクターも実に分かり易い。 意外性がないと言ってしまえばそれまでだが、安心して楽しめるのは十分評価できる。 それでも終盤の爆発を期待したが、定石通りの展開でさらっと終わったようで、さすがに少々物足りなさを感じました。
[寸評]
「ミスティック・リバー」を書いた作者の、探偵パトリックとパートナーであるアンジーを主人公に据えたシリーズものの第5作。 前4作を読んでいなくても十分に面白い。 謎、意外な展開、スリルとアクション、全編だれることなく読ませる。 また、単なるアクションものではなく「ミスティック・リバー」同様、人物がしっかり描かれ、主人公らの感情のうねりが感じられる。 救いのない話だがブッパを加えた3人の人間的な関係がそれを和らげている。
[寸評]
乱歩賞受賞「顔に降りかかる雨」に端を発する"村野ミロ"サーガの40才を挟んだ数年間の物語。 待ち続けた男がすでに亡いことを知り、40才になったら死のうと思ったミロが、いかにしてその後を生き抜くこととしたか。 意外と分かり易い結末だが、激しさの中に人間とはやはりこういうものだという何かほっとさせられる部分もある。 日本と韓国を往復する全編急展開の連続で、脈絡に欠けるがとにかく面白い。 厚さに気後れせず読んで欲しい。