[寸評]
ふわふわした感じの描き方で、主人公はすぐ涙が出てしまう女の子だが、一方、小説家になるという自らの目標に向ってしっかりと歩いていく女性の物語でもある。
かなり長い期間の話で様々な展開があるのに、淡々とした流れの筆致で凹凸が抑えられている印象。
短すぎて、もう少しエピソードを書き込んでもいいのでは。
それにしても帯にある「無冠の帝王」という謳い文句は、作者も気恥かしいでしょう。
[寸評]
連作短編5編。
第1話はサハラ砂漠、第2話はスペイン、第3話は南ロシア・・・と、ミステリ世界旅行といった趣の作品で、設定がバラエティに富み、多彩な仕掛けが楽しい。
修道院にある250年の時を経て腐敗していない遺体とか、アマゾン奥地の50名足らずの部族を襲うエボラ出血熱の恐怖など、大胆な仕掛けと、その設定の発想は驚きだ。
物語はあくまで本格推理ものだが、苦手な人でも楽しめます。
[寸評]
組織としての落とし前と妹のかたき討ちにやってきた女に、ロシア人旅行者の東京滞在をアテンドする旅行代理業者の男が巻き込まれ、追手に反撃しつつの逃避行が緊迫感たっぷりに描かれる。
近年作者はこういった作品が多い印象で、サスペンスの持続はお手のもの。
少しもだれることなく、アクションを織り交ぜてラストまで進む。
長い逃避行の結末をどうつけるかは難しかったと思うが、こうならざるを得ないか。
[寸評]
大学の奨学係の女性から紹介された不思議で謎めいたバイトの顛末を描く連作短編5編。
第1話は完全な怪談話だが、そのほかは本格っぽいもの、どんでん返しっぽいものなど、技法はいまいちだが、内容はヴァラエティに富み、かなり楽しめる。
表題作などはもう少しひねらないといくら短編でも保たないと思いながらも、どの作品も語り口が清々しく、人のつながりの大切さを綴る姿勢に好感が持て、採点は甘め。
[寸評]
30〜50ページの7編の連作短編集で、ジャンルで言えば幻想小説ということになるのでしょうか。
実に怪奇で不可思議な世界を面白く見せてくれる。
120歳にしてなお若さを保っている女呪術師ユナの物語でもあるが、彼女はほんの端役であったり登場しない話もある。
中に「叫びと祈り」の話によく似た設定が出てくるが、それはまぁ偶然か。
普通、徐々に興趣が下がるところ、最終話が最も面白いのは立派。
[あらすじ]
紙川さんは、私と同じ1978年生まれだが、早生まれなので大学は1年先輩だった。
女の子によくもてる人で、共通の知り合いがいたことから私も知り合いになった。
紙川さんは大学を卒業はしたが就職せず、フリーターで、学習塾のアルバイト講師をしている。
私は小さい頃から小説家になるという目標を持っているが、社会経験も必要だと思うので、教育出版系の会社の内定をもらっていた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
サハラ砂漠を進む30頭のラクダによるキャラバン。
海外動向を分析する会社に勤める斉木は、砂漠に残る塩の道の取材としてキャラバンに加わっていた。
過酷な旅の15日目、ようやく集落に着く。
そこでサハラの塩をラクダに背負わせ、出立。
そして4日目、”毒の風”と呼ばれる猛烈な砂嵐がキャラバンを襲う。
ようやく嵐が去った後にキャラバンの長が死体となって横たわっていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
東京の暴力団組長の西股は、ロシアの組織の仲介で出稼ぎにやってきた女をはずみで殺してしまった。
味見をしてやろうとしたところ、拒否され殴りかかってきたので、怒りにまかせて殴り蹴ったのだ。
弟分に死体を東京湾へ捨てさせ、娘は失踪したことにした。
死体が港内で見つかった2日後、新潟からロシアの組織の男が2人やってきた。
しかし金で解決する交渉はまとまらなかった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
北海道H大学4年の高橋健二はバイトを探すため学生部の奨学係を訪れる。
そこで奨学係の女性職員から一枚の求人票を差し出され、あなたは行くべきで断らないで、と言われる。
勤務時間は今夜から明朝までで報酬は5万円。
内容も知らず、高額にひかれ高橋はN駅に降り立つ。
迎えに来たのは寺の坊主だった。
昨夜亡くなった老婆の遺体に一晩添い寝するのが仕事だと言う。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
夏、湘南の海水浴場。
海沿いのホテルにタカシと家族は4日ほどの予定で宿泊していた。
実は両親は巨額の借金を抱え、一家心中を考えていた。
ホテル近くの駐車場に停まるワーゲンバスの移動店舗。
その店の女性の手引きで、タカシはトロンバス島と言う南洋の島に送られ、両親は別々の島で働くことになった。
その島には学校もあり、67人の児童がいるが、言葉が分からない。
[採点] ☆☆☆☆
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