[寸評]
異界の物語11短編から成る。
どれも「面白い!」とわくわくする類の話ではない。
なんだか背筋がうすら寒いような、この世界の裏側にもうひとつ少しだけ歪んだ世界があり、そこを覗き見ているようなそんな感覚。
長さは10ページに満たないものから40ページまで様々で、内容も各作まったく異なり、11の異形の幻想世界を創り上げた作者には驚き。
理屈っぽい語りもあるが、少々我慢しても読みたい作品集。
[寸評]
読み始めて主人公が元警官ということだけが思わせぶりに書かれているので、?と思ったら、実はシリーズものだったそうで、それも前作から13年ぶり!
22年ぶりの実家というあたりも前作を読んでいれば感慨もひとしおかも。
非常に素直なミステリで、スラスラ読めます。
端緒が少し弱く、最後はちょっと主人公が鋭すぎた感じ。
家族小説としての評価の方が高いと思います。
その点では心に沁みる佳作。
[寸評]
無理にジャンル分けすればSFになるのだろうが、エンタテインメントとして第一級の作品と感じた。
600ページ近い長さを一気に駆け抜ける面白さがある。
話のスケールが圧倒的に大きく、専門用語などをちりばめて適度に現実味を持たせ、荒唐無稽と感じさせない筆力がある。
流れから是非とも続編が読みたい物語。
ただ、日本人傭兵の描き方とか、なんとなく日本に対して厳しいと感じたのは私だけかな。
[寸評]
「雨に祈りを」以来、久々のパトリック&アンジーのシリーズ第6作にして最終作。
物語としては第4作に続くもの。
派手な暴力描写やアクションばかりでなく、常に人間を描くことを忘れない作者だが、今回はそのあたりで心を動かされることがないのは残念。
いかにもアメリカ的な”個”の強い台詞ばかりで、悪人の代替わりドラマを見せられた感じ。
娯楽作としては及第点だが、幕引きのための作品でしたね。
[寸評]
この本の選択理由は、私と名字が同じで、かつて5年間住んだ岡山が物語の舞台のひとつだったから。
よって地名や方言は懐かしかったが、内容は少なくとも私が勝手に想像していた青果店を舞台にしたライトコメディではなかった。
母と娘の長く苦い情愛の物語で、採点はまぁ可もなく不可もなく、といったところ。
主人公の女性の魅力と言うか、肝心なその人だけが描かれていなかったという印象でした。
[あらすじ]
僕の一家は見世物興行で暮らしている。
お父さんは昔は旅芝居の花形だったが、脱疽にかかり今は脚無しだ。
僕は生まれつき腕無しで指は肩から生えている。
昭助兄さんは怪力の一寸法師。
桜は腰から下がくっついた結合双生児だったが片方が死に、分離手術を受けて生き延び蛇女を演じている。
人と牛のあいのこがいるとの話を聞き、一家総出で岩国に出向く。
(「五色の舟」)
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
阿南省吾は大学を卒業し警察官になったが不祥事を起こして辞め、職と住居を転々とする生活を続けていた。
今は介護福祉士の国家資格をとり、介護の事業所で働いている。
実家の姉から父が危篤との連絡を受け、22年ぶりに生まれ育った家を訪れた。
父はかなりボケも入って家族の世話が必要になっていたが、危篤ではなかった。
しかし父の口から意外な言葉が漏れる。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
アメリカ陸軍に所属していたイェーガーは、息子が不治の病にかかり、その治療費捻出のため軍籍を離れ、民間軍事会社のいわゆる傭兵となった。
イラク勤務を終えた彼に破格の条件の仕事が持ち掛けられる。
南アフリカで3人の男とチームを組むことになり、訓練を経てコンゴに潜入するという。
テントの中の敵を掃討する訓練で、中に置かれていたのは子供のマネキンだった。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
探偵稼業をしているパトリック・ケンジーにビアトリスから電話が。
12年前、彼女の姪のアマンダが市の警察官に誘拐され、パトリックが姪を探し出し、姪の母親とビアトリスが共有していた家に届けたことがあった。
母親はビアトリスの義妹だが、母親向きの女ではなかった。
そのアマンダがまたいなくなったと言う。
アマンダには市からの賠償金200万ドルの信託財産がある。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
鈴子は夫の誠一郎と盲導犬の茶々とともに、ニューヨーク州北部の田舎町に暮らしている。
10年前に夫婦で渡米。
全盲の音楽家である夫はカレッジでピアノと作曲を教えていたが、3年前に引っ越し、朝食付きの民宿を営んでいる。
数日前、岡山の実家の父から、母の容体が思わしくないとの電話が入り、急遽里帰りを決めた。
しかしこの一帯は激しい雪嵐の予報が出ていた。
[採点] ☆☆☆
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