[寸評]
処女作とは思えない面白さだった「百番目の男」に続くPSITの第2作。
前半はいい流れで事件が連続し、謎が深まり、糸口が見え出し、とテンポ良く進んでいく。
中盤以降、話が大きく広がりを見せ、最後の見せ場へと続くのだが、なにか面白味に欠ける。
悪人役はもっと濃いキャラでないと恐ろしさも盛り上がらないし、ライダーのロマンス相手のレポーターも魅力が薄い。
それにしても殺人事件関連グッズコレクターなんて気味が悪いですな。
[寸評]
作者初の時代小説。
ハードボイルド中心だった作風がやや変わり、15年くらい手を出すこともなかったので本当に久しぶり。
この時代小説デビュー作は、さすがベテラン作家だけあって十分に面白く、主人公が力任せのめちゃくちゃ剣法で渡り合う場面も迫力がある。
ただ時代小説独特の香り、人情の機微などがいまひとつ描けていないと感じる。
時を前後する書き方もスムーズでなく、文章も微妙に言葉足らずの部分がいくつか気になった。
[寸評]
2007年本屋大賞ノミネート作。
書店の若い女の子たちが好む"ほんわかミステリ"かと思ったら、一本突き抜けたファンタジーコメディーでした。
物語は、春夏秋冬それぞれの季節のエピソード4編から成り、主人公の男女が交互に語る形式。
とりわけ3編目、学園祭を舞台としたスピーディな展開の秋の椿事は、その語り口の独特さも相まって、今まで味わったことのない面白さ。
緋鯉のぬいぐるみを背負い堂々歩く彼女には参りました。
[寸評]
尊大、自信過剰、とんでもない勘違い男で、まさにバリキチの金剛地の常軌を逸した暴れ振りがとにかく物凄い。
カルチャーセンターの「文章の書き方講座」の講師をやるあたりの暴走振りは本当に半端でない狂気で、さすが戸梶は強烈と改めて実感。
車にはねられ記憶を失うという展開も期待度をさらに増したが、これ以降、物語の面白さという点では完全に外れてしまった。
書き殴っているような話の流れについていけず。
惜しい。
[寸評]
久し振りの作者で、ダイヤモンド警視シリーズではないのが(チラッと登場するが)ちと残念。
全体に盛り上がりに欠け、最後の犯人自体もその逮捕劇も何か唐突な印象。
登場人物は多いが、魅力ある人物が少ない。
やはりここはダイヤモンド警視であったなら、と悔やまれる。
かつて傑作を多く生み出してきた巨匠ゆえ少し厳しい評になったが、作家サークルの会員同士の辛らつなやり取りは面白い。
英国ミステリーの香りは楽しめた。
[あらすじ]
モビール市警のカーソン・ライダー刑事は同僚のハリー・ノーチラス刑事とともにPSIT(精神病理・社会病理捜査班)という専門班のメンバー。
2人は今年の市の最優秀刑事として表彰される。
そんな折、寂れたモーテルで女性の死体が発見される。
部屋には何十本ものキャンドル、そして女性のまぶたにも。
異常者の犯行として2人に捜査が命じられる。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
江戸時代、天保十三年。
神山佐平は、播磨栗山の地を根城とする譜代大名山城家の九代目当主山城恒則に見い出され、百姓の三男坊から武士に取り立てられた。
しかし2年ほどして恒則は病死。
佐平は栗山の地でつまらぬ揉め事から刃傷沙汰を起こし、脱藩して江戸へ戻って来る。
そして、以前佐平と一緒に取り立てられ姿を消した胞輩の足跡を追う。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
大学のクラブのOBが結婚することになり、内輪のお祝い会が四条木屋町の古風な西洋料理店で開かれた。
その席には、クラブの後輩で私が一目ぼれしながら未だ親しく言葉を交わせていない彼女も同席。
お祝いがお開きになり彼女を追うが見失ってしまう。
その彼女、祝いの席上で我慢していたお酒が猛烈に飲みたくなり、とあるバーに足を踏み入れる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
金剛地厳太郎は東西新聞芸能スポーツ部記者で、テレビの2時間ものサスペンスドラマの批評などを書いている。
自ら”評豪”などと名乗るが、本当は社の問題児。
今日もテレビ局の試写室で、他社のアホ記者どもと、市原悦子主演の水曜サスペンスアワーを観ているうちに眠り込んでしまった。
局を出て自宅で批評を書き上げファックスで社に送ったが裏返し。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
3年前に妻を病気で亡くし、14歳の娘と2人暮らしの郵政公社運転手ボブ・ネイラーは、押韻詩を作るのが趣味。
娘に町の作家サークルへの参加を勧められ、恐る恐る出向いてみた。
友好的に迎えられるが、会の途中に警察が会長のモーリスに任意同行を求めてくる。
以前、会で講演してもらった出版社経営のブラッカー氏が先日焼死した件で来たらしい。
[採点] ☆☆☆
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