[寸評]
この計画は壮大で歴史的に大きな意味を持つものとして描かれているが、どうも盛り上がらず緊迫感も無い。
せっかくのモンローの描き方も物足りない。
身辺警護役の絵馬巡査部長がモンローたちをおいてあちこち歩き回るのも不思議だし、福岡市警から捜査協力を無理に頼まれるあたりも意味がわからず。
ラストボロフ事件も繋がりがあるような無いような。
というわけで、せっかくの素材が残念ながら上手く料理されなかったようです。
[寸評]
今年の江戸川乱歩賞受賞作。
作者は映画やTVのベテラン脚本家だそうで、物語はドラマチックでなかなか面白い。
ホラー小説大賞に出してもいいくらい人間の底知れぬ悪意が上手く描かれ、瑤子が狂気に陥っていく様は迫力がある。
ただ全体にこじんまりした印象で、話の運びも作者は誰を犯人として読者に読ませたいのかがはっきりしない。
終わり方も賛否両論あるだろうが、私はやや疑問でした。
[寸評]
作者自ら「危険な小役人シリーズ」と呼ぶ作品群の新作短編集。
さすが駄作無しの作者だけあって4編それぞれ退屈させずに読ませる。
しかしどれも面白い題材なのに短く終わってしまうからか、危険な職業の緊張感がなかなか伝わってこないし、もっとそれぞれの仕事そのものについても書き込んでほしかった。
男のドラマなのだろうが、その男を家庭などで待つ妻や恋人の話がどの短編にも出てきてワンパターン気味なのも残念。
[寸評]
毎月1冊、半年にわたって刊行というものを作者の意図に反して1度に通して読んでしまいました。
面白い。読みやすい。いろいろな趣向が詰め込まれ、見事に料理されて余韻をもったラストを迎えます。
とにかく三途の川の一歩手前というぎりぎりの状況が緊迫感を持続させる。
恐怖小説であり、サスペンスものであり、奇跡と感動のドラマでもあり、また思わせぶりな描写を随所にまいて読み手の気をそそるキングの筆力にまいりました。
続きを読まずにいられない、一気読み間違い無しです。
[寸評]
2年ぶりの「新宿鮫シリーズ」第6作。
前作「炎蛹」では脇役程度の存在感だった鮫島警部が主役に復帰し、持ち前の反骨精神で活躍する。
設定がやや込み入りすぎて特に前半は右も左もわからない状態が続き、ちょっとしんどい。
このあたりもう少し短く整理して欲しかったところ。
しかし中盤以降は人間的な悩みを抱えながらも不正に敢然と立ち向かう鮫島の姿は迫力があり、サスペンス十分の展開。
新宿鮫らしい一編。
[あらすじ]
昭和29年、米ソ冷戦時代の日本。
東京にあるソ連領事部の二等書記官ラストボロフの失踪事件が世間を騒がせていた。
折しもハリウッドの大女優マリリン・モンローが夫の元大リーグ選手ジョー・ディマジオと新婚旅行に来日してきた。
警視庁広報課勤務の絵馬亜沙子巡査部長は日本側の連絡係兼身辺警護のためモンローらと東京から博多へ行動を共にすることになる。
[採点] ☆☆★
[あらすじ]
遠藤瑤子は民放TV報道番組の看板コーナーを受け持つ編集者。
時の話題にするどく切れ込む彼女に、春名という郵政省職員が弁護士の不審な死亡事故に絡む内部告発ビデオを持って現れる。
そこに犯人としてほのめかされていた男を瑤子は得意の編集テクニックで顔もそのまま電波に乗せる。
しかし証拠に乏しく警察も男の逮捕に踏み切れない。
やがて春名の死体が発見される。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
佐崎康俊はVIPの警護を担当するSP(警視庁警護課員)で、野党の政調会長である鳴川代議士警護チームに組み入れられている。
鳴川は出身地での後援会の帰途ライフル狙撃に遭い間一髪難を逃れるが、SPの大橋が弾に当たり重傷を負う。
大橋は、佐崎の姉の夫だった。
その他消防士など危険と隣り合わせの職業に就いている者たちを描く短編集。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
もと刑務所の死刑囚舎房看守ポール・エッジコムは、老人ホームで最も印象的で強烈な体験だった1932年の出来事を綴っていた。
この刑務所では死刑囚が電気椅子まで歩く通路が緑色のためグリーンマイルと呼ばれていた。
当時舎房には殺人放火犯のドラクロア、悪事の限りを尽くした精神病質者ウォートンそして双子の白人少女を強姦殺人したという黒人の大男コーフィの3人が収容されていた。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
新宿警察署の鮫島警部は日系コロンビア人の故買屋を監視していたが、西新宿のホテルでのアメリカ人射殺事件発生と同時に姿を消されてしまう。
一方その射殺事件も所轄から突然本庁公安部がさらっていく。
しかし鮫島は圧力を受けながら自分の担当事件との関わりから管轄を越えて捜査を続行。
公安警察から政界に至る根の深い事件の構図が徐々に見えてくる。
[採点] ☆☆☆☆
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▲ 「危険な小役人シリーズ」
乱歩賞受賞作の「連鎖」では検疫所の食品Gメン。続く「取引」では公正取引委員会の審査官。
3作目「震源」は気象庁の地震火山研究官と、現場で働く下っ端役人を主人公にした作品が続いた。
日本版ダイハードの「ホワイトアウト」も役人ではないが、ダムの職員が主人公だった。
近年は「奪取」のようには作品の幅がかなり広がっている。