- 書 名 その雪と血を (BLOOD ON SNOW)
- 作 者 ジョー・ネスボ (訳・鈴木 恵)
- 出版社 早川書房
- 新書版 177ページ 1400円
[導入部]
オーラヴ・ヨハンセンは麻薬業者のホフマンから仕事を請け負う殺し屋。
ホフマンのライバル業者である”漁師”の手下のひとりを始末し、電話ボックスからホフマンに仕事がすんだことを伝える。
すると翌日新たな依頼が。
なんとホフマン自身の妻を始末してくれと言われる。
オーラヴはホフマンのアパートの向かいにあるホテルの部屋から、妻コリナの行動を監視する。
襲うのに最も適した時間を割り出すためだ。
[採点] ☆☆☆☆
[寸評]
短い物語だが、しんしんと降る雪のような静かな余韻が味わえる作品。
狂気を孕んだ殺し屋と二人の運命の女を主要登場人物とする暴力と裏切りの物語は、作者自身が好きな作家の筆頭に挙げるというジム・トンプスンの暗黒小説の世界から、ブラックなユーモアを削ったような雰囲気を感じさせる。
そぎ落としたような簡潔な文章で物語はテンポ良く進み、あっという間に終わってしまうような作品だが、最後の愛を請う男の姿は見事に切なく美しい。