[寸評]
最近出版の相次ぐウィンズロウの「ボビーZの気怠く優雅な人生」の前に書かれたという作品。
どの作品も4つ星級の作者だが、これは若干首を傾げた。
50年代ニューヨークの世相、風俗、スポーツに少々入れ込みすぎた過度にノスタルジックな描写が気になる。
またひねりを利かせすぎた台詞回しなども、訳者が今までの作品と異なるせいなのか、日本語の違和感が大きい。
ケネディ、モンローらを彷彿とさせる登場人物は魅力的。
[寸評]
800ページに及ぶ長編だが、面白さは最後まで弛むことなく、これはまさに劇画の世界。
主人公のボブは寡黙で常に冷静、仕事はきっちり片を付ける男で、さしずめ”ゴルゴ13”をやや軟らかく朴訥にした感じ。
敵味方の描き分けも明確だし、ランボーまでミックスされたような戦闘場面等々大げさな話も劇画ということなら許せる。
あくまでアメリカ的ではあるものの、ラストも予想を裏切る鮮やかさで拍手。
[寸評]
作者の今までのホラー路線から外れたミステリードラマ。
主人公が高校2年生にしては少々知識も行動力もありすぎるような感じはするが、青春ドラマとしてもよく描かれているし、物語は淀みなく進み読みやすい。
しかし物語の設定にしろ運びにしろかなり古いスタイルのもので、なぜ今さらこういう話をという気もしますね。
ラストもやっぱりこの終わり方しかなかったのかなぁと少々残念でした。
[寸評]
ホラー小説大賞を受賞した表題作と書き下ろし3作の土俗ホラー短編集。
私は受賞作よりも他の3作品に感心しました。
いずれも明治時代中期の農漁村の風俗、習慣、民衆の姿、考え方が非常にリアルに描写され、作品全体をどんよりとした恐怖が覆い、
独特の世界が造りあげられていてとにかく凄い。
一番怖ろしいのは物の怪ではなく人間の心だというのがよく分かる。
受賞作はややホラーにおもねった部分も見られた。
[寸評]
私は未読だが「催眠」の続編で、続々編を予見させる造りにもなっている。
人の考えていることをズバリ言い当ててしまう千里眼の病院長とその1番弟子とも言える元自衛隊パイロットのカウンセラーの女性コンビが興味深い。
肝心の真相部分があまりに”なぁ〜だ、やっぱり”なのは興醒めだったが、特に後半は女性版「ダイ・ハード」といったサスペンスと仰天アクションの連続で、無心に楽しめました。
[あらすじ]
1958年、米ソ冷戦の時代。
北欧で工作活動をしていたCIA工作員のウォルターはスパイを辞め、ニューヨークの民間調査会社に勤めていた。
将来の大統領を嘱望されているケニーリー上院議員のパーティーで、議員の妻マデリーンを警護する仕事を委される。
ちょっとした騒動を無難に片づけた彼は、議員夫妻と親しくなる。
そこには議員と親密らしい女優もいた。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
ボブ・リー・スワガーはベトナム戦争で87人を射殺した記録を持つ狙撃手だったが、
負傷除隊し現在は奥深い山裾で銃を唯一の仲間として隠遁生活を送っていた。
そんな彼に退役大佐を名乗る男から仕事の依頼が。
ベトナムでボブを狙撃し負傷させたロシア人スパイナーがアメリカ大統領を狙っているという。
ボブはいつどこから狙撃が行われるか検討を始める。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
櫛森秀一は湘南地方の高校2年生。
母と妹の3人暮らしだったが、母と10年前に離婚した曽根隆司が10日ほど前から突然家に転がり込んできていた。
秀一の父は交通事故で死に母は曽根と再婚したが、曽根は酒乱でギャンブル狂い、女癖も悪いため離婚となったのだった。
曽根は昼間から酒を飲み、3人は怯えて暮らしていた。
秀一は曽根を排除する計画を練る。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
明治時代の岡山県を舞台とした短編集。
表題作:遊郭で醜い遊女が客に怖ろしい寝物語を語り聞かせる。
密告函:山間の貧しい村役場にコレラ患者を密告する箱が置かれ、役場で一番若い弘三は箱の開封と被疑者の調査を命ぜられる。
あまぞわい:町から瀬戸内の漁村に嫁いだユミは村人からよそ者と疎まれ夫からも暴力を受けるようになる。
外1作。
[採点] ☆☆☆☆
(追記:私も岡山に5年程いたので少々気になるのですが、表題作のタイトルの言い回しは「ぼっけえ、」ではなく「ぼっこお」か
「でぇれえ」が正しいのではないでしょうか。)
[あらすじ]
茨城県の山中にある古寺が突然爆発炎上する。
この1か月間に全国各地で爆発事件が起き、恒星天球教というカルト教団のテロ活動とみなされていた。
その日、米軍横須賀基地のミサイル制御室に男が侵入し発射コマンドを入力、そのうえ解除用暗証番号を変更して立て籠もる。
千里眼と呼ばれる催眠療法のエキスパートの女性カウンセラーが政府首脳に呼ばれる。
[採点] ☆☆☆★
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