[寸評]
カフカも苦笑するような設定だが、笑いと涙の交錯するお勧め本である。
とんでもないハンサムになっても心は昔のまま、美男子目当てによってくる女に生きた化石のようになじられ振られても、なお一途に自らを貫く主人公は涙もの。
また「下妻物語・完」と同様、独特の文章は慣れれば心地よいリズムを刻んでくれます。
異様なまでの"としまえん"の回転木馬へのこだわりも 、終いには納得かつ応援です。
こりゃメロドラマだな。
[寸評]
時空を超えたロマンスSF。
よく練られているとは思うが、想像通りの引っかけに続き、結末もあまり意外性がない。
終盤にいろいろ説明を入れるより、もっとシンプルに驚かせてくれないと。
また、登場人物に魅力が乏しく、気持ちの盛り上がりが伝わってこない。
せっかく時を超えた設定なのに話に広がりがないのも残念。
いろいろけちを付けましたが、アイデアがいいのでともかくラストまで眼が離せない物語ではあります。
[寸評]
"王道の冒険小説"という謳い文句に惹かれたが、たしかに次々に主人公に敵が襲いかかり、冒険に次ぐ冒険でラストまで読ませます。
アクション好きの人には十分な面白さでしょうが、物語中、主人公が、「周りの者がどんどん死んでいくのにあなたはいつも生き残る」と言われるように、理不尽な展開も気になる。
人脈も女性も豊富すぎるほどなのも首を傾げる。
時代遅れのスパイたちの"われらのゲーム"には白けました。
[寸評]
第1回「幽」怪談文学賞の長編部門大賞受賞作。
怖い、そして面白い。
読み進む手が止まらない物語です。
怖いんだけど、次がどう展開するのか、読まずにはいられない。
見事ですね。
最初は、子どもが薄気味悪い絵を描く程度だったのが、じわりじわりと怖さが増幅していき、後半は思わず悲鳴を飲み込むほどに。
終盤、書き急いだ感じで、もっとこの恐怖が広がりを持てるところだったと思いますが、大した怪談でした。
[寸評]
第2次大戦中、激しい本土空爆に見舞われたイギリスを舞台に、同性愛をテーマとして、同一登場人物たちの1941年、44年、47年の姿を、時代を遡って描いていく。
残念ながらミステリーではなく、娯楽色も薄い。
それでも交錯する人間模様の書きぶりは見事。
また、空爆に恐れおののく人々や堕胎手術とその後の場面の異様な迫力には圧倒されます。
時間があれば次は時代の経過に沿って41年→47年と読んでみたい。
[あらすじ]
ある朝、星沢皇児が眼を覚ますと恐ろしくハンサムな男になっていた。
生まれて30年、ずっと器量に恵まれず、不細工だったのに。
プロの漫画家としての大成を目指し、六畳一間の安アパートに住み、コンビニでバイトしながら少女マンガ「エルドラド」を9巻まで自費出版。
吉祥寺の路上で5年間自作マンガを売り続けてきたが、今まではまるで売れなかった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
旅行代理店に勤める北村志織は写真が趣味。
自宅アパートで自ら現像もするが、隣室の住人からいかがわしい写真でも扱っているのではと疑われ引っ越すことに。
ようやく見つけたところは画家が大家で、入居者の条件が芸術をやっていてよその部屋が借りにくい独身自活者というマンションの2階の部屋。
ある日、エアコンの穴から話しかけてくる声が。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
元英国秘密情報部員ジャック・ヴァレンタインは、隣人のジミーに検視審問への同行を頼まれる。
海岸に認識票が打ち上げられたが、その持ち主は50年以上前に航海中に消息を絶ったジミーの兄ロバートだった。
しかし検視審問は国防省の要請により無期延期される。
そして本件に興味を持ち調べていた若い女性記者がジャックと接触中に射殺される。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
ホラー作家の横田タクロヲは幼稚園児の娘の千秋と二人暮らし。
妻の三沙子は絵描きだったが、就寝中に千秋を抱いたまま急性心不全で死んだ。
妻が死んで1年ほどした頃から、千秋は色鉛筆とお絵かき帳を持って絵を描き始めた。
子供の玩具などには何の興味も示さずひたすら絵を描く。
奇妙で斬新な表現の絵だが、残酷で薄気味悪い題材ばかり。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
第2次大戦終戦間もない1947年のロンドン。
ダンカンはマンディ氏の関節炎の治療に付き添ってレオナード氏の施術院に通う。
ここの屋根裏には男性的な装いの彫りの深い印象的な女下宿人がいる。
その女性、ケイは空虚な日々を送っていた。
一方、ダンカンの姉ヴィヴは作家のジュリアと同居しているヘレンという女性と見合い斡旋の事務所にいた。
[採点] ☆☆☆★
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