[寸評]
年末恒例の「このミス」と「文春」で2冠王に輝いた作品。
我が愛しの「少年時代」(いずれも2位)を追い越したのはどんな本か、と恨み半分、期待半分で読んだのです。
結果、う〜んこれがベスト1なの?、でした。
面白くなくはないが、私の読み方が悪いのかなぁ。
ロザリンドの恋人になる元警官の店が襲撃されるのも話がごちゃごちゃしていて分かりにくく、事件についてのロザリンドの推理もやや強引な感じで、思わせぶりなラストもどこかで読んだことがあるような。
[寸評]
この作者お得意のフランスもので、相変わらずいい味が出ている。
ただ、前回読んだ「じっとこのまま」のようなじーんとくる味わい深さがない。
元レスラーが、11年も待った恋人の出所の前日あっけなく死ぬが、実はその女は恋人でも何でもなかった、とか昔の決着をつけるため孫と教え子の代わりに決闘する男たちなど、どれも読み手の思ったように話が展開してしまう。
しかし、それなりに”読ませてくれる”のはさすが。
[寸評]
これは拾いものの面白さ。
作者はアメリカ映画にヒントを得たそうだが、この突拍子もない設定が実に面白い。
祖父を救おうと何度も繰り返す同じ日に朝から自分の行動のひとつひとつを変えたり、犯人と思われる者を封じ込めながらなお繰り返される祖父の死。
ラストの謎解きも納得。
変に理屈をこねることなく主人公の奮闘ぶりに的を絞って描かれており、この本は面白い!。
ただ、登場人物の名前が凝っていてやや読みづらかった。
[寸評]
いつもエンタテインメントの類ばかり読んでいる私としては、この本は大きなショックだった。
ほんの2、3時間前に言葉を交わした息子が、同じ家の中で自殺を企て、それを一番に発見した父親。
その苦しみ、悲しみを背負って、息子がこの世に生きた証を残すために綴る作者の姿に、同じく子供を持つ親としてたまらない気持ちでした。
脳死・臓器移植論について感想を述べるような知識も無いが、たとえ脳死状態となっても肉親にとってはまだその身体、その人は当然生きているのですね。
[あらすじ]
フリーライターのロザリンドは、出版社から母と姉を殺害し死体を切り刻んだオリーブ・マーティンについて本を書くことを依頼され、恐る恐る刑務所へ向かう。
彫刻家と渾名されるオリーブは醜悪に太っていたが、彼女と話すうちに徐々に事件の真相に疑問を持ち始め、当時の関係者を訪ね歩く。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
高校教師の片桐隆一は、父の死後、父が幼い頃に死んだと聞いていた祖父が実は家族を捨て、30年代にパリで放蕩無頼の生活をしていたことを知る。
祖父の足跡を辿るため教師を辞めパリに来たものの、消息探しはなかなか思うに任せず、魔都パリに魅入られ何でも屋をしてその日暮らしの生活を送っている。
祖父の影を感じさせる出来事6編の短編集。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
高校1年生の大庭久太郎は生まれつきの特異な体質の持ち主で、年に何度か突然同じ日が9日間繰り返す”反復落とし穴”に落ちてしまう。
その彼が、正月に本家に親戚一同が集まり財産相続問題で揺れる中、祖父の死に遭遇する。
その日に反復落とし穴に落ちた彼は、何とか祖父の命を救おうと繰り返す日々孤軍奮闘する。
[採点] ☆☆☆☆★
[あらすじ]
作者の次男洋二郎さんが中学時代の怪我がもとで神経を病んだ末、25才で自殺を企てる。
作者が発見し、救命救急センターで蘇生するものの脳死状態となり、11日後に亡くなるまでを描いている。
またその経験をもとに、臓器移植法案の審議と絡めて、独自の脳死・臓器移植論を展開する。
[採点] ☆☆☆☆(点数を付けるのは失礼ですが)
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▲「このミス」と「文春」
「このミス」=「このミステリーがすごい」 宝島社がミステリー&エンターテインメント作品について、評論家や大学のサークル、翻訳家、作家などの読書の鉄人(?)のアンケートにより、毎年発表しているベスト10。
「文春」=「週刊文春傑作ミステリーベスト10」 週刊文春が日本推理作家協会の全会員のアンケートにより、毎年発表しているもの。
▲「じっとこのまま」
それぞれに人に言えない過去を引きずりながら生きているネオン職人、写真屋、美容師など様々な職業の中年職人の姿を淡々と味わい深く描いた短編集。
派手な見せ場はないが、心に残る。