[寸評]
読み終えて結局何の話だったのか、作者は何を描きたかったのか、分からないままでした。
「山」というのは特別な場所、てことですかね。
思い入れの強い登場人物たちに疲れを感じるのは私だけですか。
11歳の少女が紅蓮の焔が燃え立つような激情に駆られ、鏡に淫らで美しい女の顔を見る、という描写には引いてしまいます。
自らの技巧に酔ったような言葉の使い方も違和感だけが残った次第。
[寸評]
猟奇的な殺人の犠牲者の過去が明らかになるにつれ、話が広がり、謎も深まり、スケールも大きくなってゆき、後半に期待を持たせる。
それが結局この展開になるとは…。
状況や登場人物の行動が理屈に合わないというか、首を傾げるところ、中途半端なところが多い。
終盤のアクションの連続も作者は目一杯力が入っている感じだが、読んでいる方は、どうせ結末見えてるし早く決着付けてよ、でした。
[寸評]
書店で文庫本が大量に平積みされていたので読んでみようと。
3年半前の作品で、作者はすでに故人。
迫力と緊張感を持ったパニックアクションものです。
とりわけ前半のサスペンスの積み上げはなかなかでしたが、後半は少々グロ過ぎで、あれだけ否定していたのに結局これかよ的な真相にはちょっとがっかり。
また凛子など女性の描き方が類型的で、いかにも男が描くキャラなのが気になりました。
[寸評]
アメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀新人賞を「逃亡のガルヴェストン」等と競い、見事受賞した作品。
私はむこうに軍配を上げるが、こちらもかなりの面白本だ。
作者は40年以上のキャリアを誇るジャーナリストだそうで、引き出しも豊富。
娯楽作としてのツボを押さえ、定石を踏まえた展開や登場人物たちなど、安心してその面白さに浸れる。
ラストはどうにも収まりがつかなくなったのか、決着の付け方は残念。
[寸評]
圧倒的な人間ドラマ。
人間という不完全な生き物が行う、法律という決め事の中では”犯罪”と位置付けられる行為を描く11編の短編集。
作者はドイツでも屈指の刑事弁護人で、この作品集も実際に弁護した事件を基にしているそうだ。
中には背筋の寒くなるもの、おぞましい所業もあるが、実に淡々とした無駄のない筆致。
救いのあるものないもの様々だが、最後のエピソード、甘さで締めくくられてホッとした。
[あらすじ]
伊久男と日名子の夫妻はもう70歳を過ぎているが、花粧山の中腹、麓の町から20キロはある、人と山との臨界に位置するところに住んでいる。
もちろんあたりに他に家などはないし、ここから先は難儀な山道一本きりだ。
雪の降る朝5時過ぎ、山が目覚めるころ。
玄関前に誰かが佇んでいる。
ためらっている。
声をかけるとようやく入ってきたのは、凍てついた二十歳前の娘だった。
[採点] ☆☆★
[あらすじ]
捜査畑を歩いて12年という槇畑も思わず目を背けるほど、その死体は原形を留めない代物になっていた。
所沢市の集落から1キロほど離れた沼地に肉片と骨が散らばっている。
カラスにも啄まれたらしい。
コートに入っていた社員証によるとスタンバーグという会社の社員、桐生隆30歳。
スタンバーグはドイツの製薬会社で、社員証にある研究所は2か月前に閉鎖されていた。
[採点] ☆☆★
[あらすじ]
長野県南安曇郡、北アルプス常念岳の麓に位置する堀金村。
烏川本流の沢で骨が見つかり、地元の生駒建設の社員、三井周平の妻杳子のものと確認された。
彼女は半年ほど前、烏川支流の二の沢に茸狩りに出かけ消息を絶ったのだった。
周平が妻の行動を思い描きながら二の沢に向け歩いていると、サルの確認調査をしているという大学の研究所所属の山口凛子に出会う。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
リアム・マリガンはロードアイランド州プロヴィデンス市にある地方新聞の記者。
ここ3か月で火災が9件発生、うち7件は明らかに放火だ。
犠牲者も5人にのぼる。
市警の放火課はまるで当てにならない。
マリガンは独自に調査を行うが、編集長からは読者が心温まる犬のネタをさっさと記事にするよう言いつけられている。
犬の取材に車に乗り込むと警察無線がまた火災発生を告げた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
フリートヘルム・フェーナーは長くロットヴァイルの開業医だった。
24歳のとき、イングリッドと知り合った。
女性体験に乏しい彼はイングリッドの巧みなリードにのぼせあがりすぐにプロポーズ。
新婚旅行のカイロで彼女は「あたしを捨てないと誓って」と叫ぶ。
間もなく彼女はフェーナーに際限なく小言を繰り出すようになり、数年後には罵声が飛び出し始めた。
彼は妻に疲れていった。
[採点] ☆☆☆☆★
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