[寸評]
30年に及ぶ麻薬戦争を描いた1000ページを超える大作で、今までのウィンズロウの作品とはまるで異なり、全編暴力に満ちたダークな物語。
そこには、慈悲も救いも一切なく、あるのは欲望のおもむくままに男たちが繰り広げる対立抗争と裏切りの世界で、これが延々と続いていく。
麻薬撲滅の戦いは、国家の存亡をかけた戦争でもあり、日本人には想像もできない世界だ。
まさに、世に悪人の種は尽きまじ、です。
[寸評]
1935年生まれの作者は、50年代から60年代に作品を発表し、和製ハードボイルドの走り的存在とされていたが、やがて沈黙。
今回なんと37年ぶりに「ミステリーズ!」誌に短編を連載し、一冊にまとめられたもの。
さすがに、物語や文体に勢いや躍動感は薄いが、江戸時代から大きく変わりつつある明治中期の函館の、通商が盛んで活気のある雰囲気が実に興味深い。
登場人物も魅力的で、警察小説として水準以上。
[寸評]
傑作「赤朽葉家の伝説」から派生した物語。
作者お得意の幻想的な味付けを加え、小豆の突っ走るような暴れ振りが凄い、疾走感を感じさせる話だ。
しかし、物語は鳥取から他県へ勢力を広げていく様子が続いていくだけで、ただ暴れて勝った、というのを読まされ続けるため途中で飽きる。
結局内容がそれだけなのは何とも残念。
暴走族の話なのに、バイクがまるでマンガのようにしか描かれていないのもがっかり。
[寸評]
作者が「闇の楽園」でデビューする前に執筆していた作品を11年ぶりに全面改稿したもの。
要はゾンビもので、作者がそれをぶっ飛んで描いているのだが、ぶっ飛び度は他の諸作に比べると若干おとなしめ。
それでもかなりの刺激度だが、展開もなめらかなので、十分話についていける範囲。
なぜこんなことが、という部分は一切説明なしだが、ゾンビものだから当たり前。
ちょっとクーンツを連想させる面白本でした。
[寸評]
1950年製作のハリウッドの名作映画「サンセット大通り」の設定を借り、往年の大女優に暴力的な中年男を絡ませた犯罪劇。
酔いどれものの多い作者だが、この物語の主人公ミッチェルも、酒に加えてヤクもやり、激情にまかせて喧嘩から殺しまでやってしまう生来の暴力男。
人物はともかく、無駄のない話の流れで面白く読めるが、全体にちょっと書きなぐったような作品ではある。
映画と異なるラストのひねりがいい。
[あらすじ]
1975年、メキシコのシナロア州。
アメリカに流通する麻薬を断ち切るため、アメリカ麻薬取締局(DEA)が、表向きはメキシコ軍の作戦行動として、谷間のけし畑を燃やし、農園主らを蹴散らす。
アートはCIA出身のDEA捜査官。
西半球の麻薬取引の中心地クリアカンで、彼はふと立ち寄ったボクシングジムでスパーリングの相手をしたことで、州警察警官であり知事特別補佐官のバレーラと顔見知りになる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
明治24年、函館には港内を管轄区域とする水上署が設置されていた。
署次席の五条警部は、父が駐米公使館員だったことから、明治11年に渡米し、4年間アメリカで気ままな生活を送った。
勤めていた酒場経営者のハンガリー人からフェンシングを仕込まれたことから、帰国し、英語力とサーベルの腕を買われて、外国船の多い函館で警察勤務をしている。
夏の夜、海の方から銃声が一発聞こえた。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
1979年3月、鳥取県赤珠村。
中学校の卒業式前夜、新しい総番を決めるためのバイクによるチキンレースが行われていた。
埠頭を海に向けて突っ走り、一番端に近くで停まった者が総番。
タケルはわずか10数センチまで迫って停まる。
新たな王の誕生。
見物人の中に、背が高く三つ編みに真赤なリボン、真赤なランドセルを背負った小学生がいた。
地元の製鉄会社一族の長女、赤緑豆小豆。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
トニーは香港の闇社会の組織”大義安”の二級工作員。
組織と関連のある映画プロデューサーから女優を横取りした野郎とその女優を仕置きする、というつまらん仕事でトラブルを起こし、トニーはアメリカ行きを命じられる。
昔馴染みのロニーは頭の良さを買われてアメリカに派遣されていたが、組織の金を持ち逃げして消えたという。
トニーは1か月間でロニーを捕まえて始末しなければならない。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
ミッチェルは重傷害で3年服役し、出所した。
ギャング仲間のノートンが刑務所前に迎えに来てくれ、借金のかたに取ったフラットを用意してくれていた。
若い連中に絡まれていたところを助けた女に仕事を紹介される。
伯母の住む屋敷の修繕係の口だが、伯母はちょっと気難しいという。
屋敷へ行くととんでもない大邸宅で執事もいる。
応接室には屋敷の主人が主演した芝居のポスターが飾られていた。
[採点] ☆☆☆★
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