[寸評]
昨年のミステリー関係のベストテンで翻訳物のベスト1を独占した感のある作品。
遅ればせながら読んでみました。
確かにこれは本好きにはたまらない記述がそこかしこに。ただし当然洋ものばかりですが。
ミステリーとしても、前半はアメリカもの、後半はイギリスものの雰囲気で、長さの割に非常にコンパクトにまとまっている感じ。
ちょうどこれを読んでいるとき東京出張中だったので、つい神田の古書店を回って雰囲気に浸ってしまいました。
[寸評]
本格推理小説です。
各章のはじめには注意事項やヒントらしきものが書かれ、推理マニアは結構そそられるのでは。
このたぐいの本は長尺のものが多いけれど、これは長さもほどよく楽しめました。
しかし終盤の推理の展開は私にはちょっとつらかった。
'本格'は読む側にもそれなりの覚悟がいりますね。
まぁこれは少しオーバーですが、ただ殺人の動機が弱いのが気になりました。
[寸評]
戦後最高の密室ミステリと激賞される名品とのこと。
さぞや西澤保彦もびっくりの驚天動地のトリックが拝めるのかと思いきや、1951年の英国推理小説であり、
映画「探偵(スルース)」で名高い作者のものだけあって、しっかり正統派の謎解きでした。
全編イギリス流ユーモアで包まれていますが、国王や宗教論争など日本人の感覚では分かりづらい所もあります。
古さは感じませんが、現代の感覚で点数付けるとこれぐらいかなぁ。
それよりなぜ45年も経ってから日本初刊行なのか、これがまたミステリーですね。
[寸評]
第1回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作。
とても良くまとまっています。
最近は耳慣れない職業を登場させてそれでもたせるような本が結構あるが、これは米作りというミステリーではほとんど扱われないジャンルでありながらそういった'あざとさ'は感じられません。
登場人物も多彩でそれぞれに良く描けており、話にテンポがあって長さもほど良く、すべてに平均点以上。
逆にあまり新鮮味が感じられず、少しは毒があってもいいかな、と欲張ってみたくもなるほど。
ただ犯人の描き方が少し足りない気がしました。
[寸評]
インディアナポリスと伊号を交互に描写することで、緊迫感が最後まで途切れず大変スリリングな戦争活劇となっている。
2人の指揮官の知恵比べも面白い。
ただ、2人に焦点をあわせすぎて重巡洋艦の大きさや潜水艦の閉鎖感がもうひとつ伝わってこず、他の乗員の姿も希薄な印象。
原子爆弾を3基運ぶあたりのアメリカ国内の上層部の駆け引きなど、もっと描き込めれば物語世界がぐっと広がったと思います。
[あらすじ]
古書の山から値打ちものを見つけ出す"堀出し屋"が殺され、将来古書店開業を夢見るクリフ巡査部長が捜査を担当することに。
しかしクリフは別件で反目していた男と決闘まがいの乱闘を演じ辞職、本当に古書店を開業する。
ところが従業員の娘が何者かに射殺され、堀出し屋の事件との関連を疑った彼は単独で犯人を追う。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
広告会社に勤める和夫は嫌みな上司を弾みで殴ってしまい、タレント文化人星園詩郎の付き人に。
星園と和夫はひなびたコテージ村のイメージアップの仕事で秩父の山奥の山荘に向かう。
UFO研究家と売れっ子女流作家も加わったところで殺人事件発生。
おまけに折からの真冬の嵐で山荘は雪に閉ざされてしまう。はたして犯人は誰か。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
イギリスの田舎町に住むヴェリティ氏は警察にも一目置かれる有名な探偵。
ある日、ホテルの前を通りかかった彼は2階の窓から隣室へ移動する男を発見。
支配人に知らせに行くとその男が、人が殺されていると叫びながら2階から降りてくる。
その部屋はドアも窓もすべて施錠されており、はたして中では男が射殺されていて、衣装戸棚からは縛られたウェイトレスが出てきた。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
無農薬有機米作りに固執する米名人大下の田圃で既存の農薬の効かないウンカが発生する。
食品会社で有機米を使った冷凍ピラフを担当している陶部映美はこのウンカ渦に対処する一方、友人の自殺原因を調べていた。
富山では映美の大学時代の恋人で農業試験場に勤める五本木が周辺の田圃への影響を懸念して大下に新しい農薬の散布を勧めるが拒否される。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
太平洋戦争終結間近の昭和20年7月。
アメリカ海軍の重巡洋艦インディアナポリスは原子爆弾3基を積んでグァム経由でレイテへと向かっていた。
同じ頃、日本海軍伊号五八潜水艦はフィリピン東方海上における敵重要艦船の攻撃命令を受け呉軍港を出港していった。
途中、伊号は敵潜水艦により全滅した商船団の司令永井少将を海上で救出する。
[採点] ☆☆☆★
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▲ 「探偵(スルース)」
登場人物はイギリスを代表する演技派ローレンス・オリヴィエとマイケル・ケーンの2人だけ。
推理作家と妻の浮気相手の2人が2時間18分にわたってサスペンスたっぷりの丁々発止のやりとりを繰り広げる。
20年ばかり前の作品ですが、私はこれ映画館で見ました。
▲ 「新潮ミステリー倶楽部賞」
中止となった日本テレビ主催「日本推理サスペンス大賞」を新潮社が引き継いだものだそうです。
新潮ミステリー倶楽部の作品は水準が高いものが多く、私もかなり読みました。
佐々木譲の第2時大戦3部作や真保裕一の「ホワイトアウト」、藤田宜永の「鋼鉄の騎士」、船戸与一の「蝦夷地別件」、
高村薫の「リヴィエラを撃て」、白川道の「海は涸いていた」、綾辻行人の「霧越邸殺人事件」、帚木蓬生の「臓器農場」、
折原一の「異人たちの館」等々面白い本が目白押しです。