[寸評]
事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、どれだけ作者の創作が入っているのか分からないが、実在の人物の波乱万丈の物語はとにかく面白い。
元祖アイドル物語で、われ知らず頂点に向って一目散にかけ登っていく様子、周囲の熱狂ぶりと興業界の思惑、そして引退騒動など、現代のアイドルものと全く変わらない。
頂点に立ってからの後半はややペースが落ちるが、前半の面白さは尋常でない。
[寸評]
日常の恐怖、じわりじわりと締め付けてくる心理サスペンスなど、30ページ程度の9編からなる多彩なホラー風味の短編集。
中年女性が一人で暮らす山荘に迷い込んできた都会の青年の話”ヤモリ”、
庭仕事を頼んだだけの植木屋が樋の修繕、物置小屋の修理とエスカレートしていく”テンガロンハット”、
殺人ゲーム”普通じゃない”など面白い話が多い。
女性作家による女性の視点での極上の恐怖劇。
[寸評]
最後の最後で隠された意味が分かる作品で、普通ならその切れ味に驚嘆するところだろうが、それまでがどうも動きが少なくて、200ページ以上も何かもたもたした印象。
なんとか最後までそれなりに面白く読み進めることはできるが、登場人物も緩くて緊迫感に欠けるのでラストの急展開が活きないし、事件の真相も首を傾げてしまうものでした。
そもそも題材がチェスである必要があったのか、疑問です。
[寸評]
激しい殺戮劇で、とりわけ後半は血腥い暴力の嵐が吹き荒れる物語だが、殺人を繰り返すフィーガンに対しては、必死で心の平穏を求める姿に哀れみさえ感じてしまう。
フィーガンは狂気に取り憑かれたということだろうが、復讐に取り憑かれた亡霊たちは現実味たっぷり。
北アイルランドの闘争についてはたいした知識もなかったが、イギリスへの根深い憎悪には驚きました。
読み手を捉えて離さない500ページ。
[寸評]
寛政6年、浮世絵界に突然現れ、10か月間に140点も出版して姿を消した謎の絵師、写楽の実像に迫るミステリー。
大長編の前1/3は佐藤に降りかかる悲劇と写楽に傾倒していく姿がテンポよく描かれるが、中1/3は推論が行きつ戻りつ延々続きエンタメ作品としては苦しい。
続く後1/3は当時の江戸の様子を交え一気読みの面白さ。
佐藤の話に何の決着も見ていないのは疑問だが、後書きで続編が匂わされている。
[あらすじ]
明治19年、大阪は心斎橋近くに綾之助、本名は藤田園という女児が住んでいた。
11歳だが、戸籍の届出が遅れ2歳年下で通っている。
実家の石山家は子供が多く、父の妹で早くに夫を亡くしたお勝に育てられた。
遊び相手は近所の男児だが、彼らが小学校に行ってしまうと近所の義太夫節の師匠の家に遊びに行った。
そこで門前の小僧よろしく話を覚えてしまい、見事な声で語るようになる。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
息子の篤史は34歳になった。
息子にとっては祖母である姑がいなくなってから12年。
今でもひょっこり帰ってくるんじゃないかと思う、と息子は言う。
あの日の夕方、大学生だった息子が車で帰宅した時ガレージでゴミにぶつかったから片付けといてと言って飲み会に飛び出していった。
ガレージへ行くと姑が倒れていた。
まだ意識のあった姑の目はためらわず篤史を守れと告げていた。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
元警視庁SPで要人警護をしていた冬木安奈は、六本木のバー”ダズン”のカウンターで働いている。
クラブのホステスが手に負えないアフター客をダズンに連れてくると、安奈が昔の逮捕術をほんの少し使ってタクシーに乗せてお帰り願うようなことも。
その様子を見たロスから来た留学生の宋という女性客が助けを求めてきた。
チェスの世界チャンピオンの警護を依頼したいと言う。
[採点] ☆☆☆
[あらすじ]
北アイルランドの首都ベルファスト。
ゲリー・フィーガンはイギリス政府からの独立闘争を行った元IRAの兵士で、ここでは英雄視されている。
しかし彼は、彼が殺した12人の亡霊に取り憑かれていた。
イギリス兵や警官や民間人で、中には赤ん坊とその母親もいた。
亡霊たちはフィーガンに殺人を命じた者らを処刑するよう彼に要求していた。
フィーガンは彼らに従い殺人を繰り返す。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
佐藤貞三は日本浮世絵美術館の研究学芸員として活躍し、北斎研究家として知られていたが、その後美術館を追われ、今は学習塾を営んでいる。
今日は6歳のひとり息子と高層タワーの六本木ガーデンに向った。
近くの路上パーキングでもたもたしているうちに息子は車を降りて建物に走って行ってしまった。
急いで建物に向った佐藤の目に入口の回転ドアに挟まれた息子の姿が。
[採点] ☆☆☆☆
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