[寸評]
久しぶりの宮部みゆき。
最近は大長編が多くて手を出しそびれていました。
作者の職人技から繰り出される不可思議なお話の数々は、思わず上手いなぁと感心する奇抜さと面白さ。
聞き手のおちかの過去もミステリぽく織り交ぜて興味をそそる。
ただ、大団円となるはずの最終話が残念。
ここまで盛り上げたのだから、もっと恐ろしい、迫力のあるやり取りでないと・・・。
今ひとつ締まらない結末ではあるが面白さは十分。
[寸評]
日本推理作家協会賞短編部門受賞の表題作以下、4編の短編集。
”傍聞き”とは、直接聞いたことは疑ってしまうが、漏れ聞いたことは信じやすい、ということだそうな。
4編とも50ページほどの短かさながら、巧みな設定と思わせぶりな物語の流れで読み手を誘い、最後はいずれも中くらいの驚きを味あわせてくれる。
一方、人間の描き方はまだ少々足りないと思わせるが、これから期待できる作家だと思う。
[寸評]
名探偵ホームズものを西部劇の中で再現させたキワものかと思っていたら、しっかりした正統派の推理小説であり、かつウェスタンとしての面白さも兼ね備えた面白本でした。
密室あり、一つの死体に時間をおいた2度の銃声ありといった推理劇も十分納得させるまとめ方だし、西部の荒くれ者に、イギリス貴族、美しい令嬢等々、登場人物も多彩。
加えて荒くれ田舎者のへらず口やジョークを交えた語り口がまた楽しい。
[寸評]
「青に候」に続く作者の時代小説。
比較的評判の良かった前作にはあまり感心しなかったが、今度は見事な小説だと素直に思える出来。
”自分”をしっかりと持って、前向きに懸命に生きる清吉の姿が、深刻にならず実にのびのびと描かれ、気持ちの良い小説になっている。
激しい殺陣があるわけでなく、ドラマチックな出来事が連続するわけでもないが、十分面白い。
ただラストはどうか。
そこまで”みのたけ”に徹するか。
[寸評]
アメリカのホラー作家協会によるブラム・ストーカー賞などを受賞したホラー短編集で16編が収録されている。
作者はかのスティ−ヴン・キングの息子だが、親の七光りなど無関係の、変幻自在、見事な奇想作品集。
ホラー色の濃淡はあるが、これだけ粒のそろった短編集も珍しいのではないか。
どうしてもひとつだけ挙げるなら、異世界につながる段ボールの迷路を描いた「自発的入院」が最も印象的だった。
[あらすじ]
江戸は神田三島町の一角にある袋物屋の三島屋。
主人の伊兵衛は川崎宿で旅籠をしている長兄から娘のおちかを預かっている。
おちかはわけあって川崎宿にはおられず、三島屋で行儀見習いのようなことをしていた。
おちかは外出を嫌い、率先して女中仕事に忙しく過ごしていた。
ある日、客人が来るのに叔父夫婦が急用で外出することになってしまい、おちかが応対することに。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
羽角啓子は強行犯係の刑事。
夫も刑事だったが、4年前に車に轢かれて他界し、今は小学6年の娘の葉月と2人暮らし。
仕事柄帰りも遅く、葉月とはよく親子喧嘩している。
通り魔殺人を捜査して2週間。
進展もなく帰宅の途につくと、近所の家の前に覆面パトカーと鑑識課の車が。
80過ぎの老婦人一人暮らしの家に泥棒が入ったのだ。
眼の下に傷のある男の目撃情報が。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
20世紀も間近かのアメリカ西部モンタナ。
グスタフとオットーの兄弟はバー・VR牧場に雇われることになった。
グスタフは読み書きはできなかったが、シャーロック・ホームズに心酔していた。彼の物語を読むのは弟の役目だ。
突然の雷雨の中、牛たちを高台に非難させた日の翌朝、牛の暴走に踏みにじられた死体が発見される。
機能から牧場の支配人のパーキンズが戻っていなかった。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
幕末の頃。
榊原清吉は北但馬の貞岡という町に近い西山村の郷士。
名字を持ち刀はあるが、生活は百姓と変わらず、父は亡くなり、母と奉公人の与助の助けを借りて、なんとか養蚕で食いつないでいる。
清吉は貞岡にある三省庵という私塾で学問を、尚古館という道場で武芸を習いに時折通っていた。
ある日、仲間の民三郎が性質の悪い武士と刃傷沙汰を起こしてしまう。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
アレックが最初にイモジェーンを見たのは15歳の時だった。
兄が南太平洋で戦死したことを知った6日後、学校には行かず、映画館”ローズバッド”に潜り込み空席に腰をおろした。
上映作品も知らずに入ったが、アニメ映画だった。
すると若い女がささやきながら体を寄せてきた。
とびきりの美人だが、鼻血が出ている。
やがて蛾が女の髪に入っていく。
他の観客には女は見えないらしい。
[採点] ☆☆☆☆
ホームページへ 私の本棚(書名索引)へ 私の本棚(作者名索引)へ