[寸評]
「ウエストウィング」で小学生だったヒロシの中学3年の1年間を描く。
とかくありがちな大人のような中学生ではなく、等身大の子供たちが描かれ、素直な人物描写、台詞回しに好感が持てる。
波乱で読ませるというより、淡々としたリアルな日常描写の合間にちょっとした事件や文化祭等の行事が挟まれるという構成。
それでもリズムの良い文章で、読んでいて楽しくなる。
登場人物たちは卒業により全員別の進路となるのも潔く、また彼らに会ってみたい。
[寸評]
人を支配していく過程を執拗に描く、何とも不愉快きわまりない、薄気味悪い物語だが、ページをめくる手は止まらない。
脅迫・洗脳事案は現実にもみられる犯罪行為で、嫌悪感を感じるような話だが、とにかく次がどうなるのか、どう展開するのか、この家がどのように転落していくのか、怖いもの見たさで読み進めてしまう。
ところが終盤の展開は、それまでの徹底した冷酷さに比べるとちょっと意外なもので、やや甘い方向に収められたと感じた。
[寸評]
中短編の多い作者には珍しい長編。
これだけの長さでも十分に読ませます。
多くの人の人生、繋がりと離別の物語ではあるが、作者らしく、激したところはなく、淡々と、しかしドラマチックに話は進んでいく。
多くの死が語られるが、一方、前向きに生きる姿も多く描かれる。
ネット書評では村上春樹を想起させるという感想が多いが、私はポール・オースターを読んでいるような気分だった。
女性の謎は解明されずだが、作品において大した問題ではない。
[寸評]
アメリカの本格推理作家の1945年の作品。
人間消失と密室殺人の二つが出版社が謳う看板だが、あれっと拍子抜けするような脱力感の後、より大きなかつ見事な驚きが用意されている。
70年も前の作品で、後半に名探偵が登場して謎解きをするという展開にもさほどの古さは感じさせないし、スピード感よりも悠揚とした語りがこの作品には好ましい。
限られた環境の中に多彩な人物を登場させ、人物関係・伏線を見事に繋ぎ合わせた名品。
[あらすじ]
中学3年、クラス替えの表が掲示板に貼り出された。
ヒロシは3組。
2年の時つるんでいた連中とは全員離れてしまったが、共通の話題はあまりなかったのでそんなに残念でもない。
席は窓側の最後方、前の席は背の高い矢澤。
彼のことはよく知らないが、いつも一人でいる印象。
ヒロシはクラスが一緒になったソフトボール部の野末が気になっている。
家に帰ると、母が、再婚するかもと口にする。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
皆川留美子は三人の女の子を産んだ9年後、ようやく男の子に恵まれた。
溺愛した智未は幼稚園の野外授業中に突っ込んできた居眠り運転のトラックに轢き殺された。
以来まともに眠れていない。
そんなある朝、4,5歳くらいのひどく痩せた男の子が突然家にやってきた。
児童虐待から逃げてきたのではないか。
留美子は朋巳という名のその男児に死んだ智未の服を着せ世話を始める。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
国交省のキャリア官僚の佐藤は霞ヶ関で4年過ごした後、あえて現場を希望し、奥利根の矢木沢ダムの事務所に勤務している。
冬には全面結氷する厳しい環境だ。
ある冬の晴れた夜、星を見るため事務所を出ると、大柄で登山装備の黒人が「サトーサトー」と呼びかけながら近付いてきた。
フランス人のイルベールと名乗る男は、佐藤が昔付き合っていた女性を探しており、助けが欲しいと言う。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
ドイツが降伏しヨーロッパでの戦闘に幕が下りた時期、アメリカ海軍の予備役大尉にして精神科医のダンバーは、スコットランドで休暇を過ごすという名目で、旅客機に転用された爆撃機の機内にいた。
機にはスコットランドのネス伯爵も同乗しており、空港から休暇地まで伯爵の車で送ってもらうことになる。
ダンバーは車中で、休暇を過ごす家の隣家に、家出を繰り返す少年がいるという話を聞く。
[採点] ☆☆☆☆
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