[寸評]
"本格"の世界では名高い作者だが、この物語はまるで青春ミステリーのように読みやすい。
蓬莱倶楽部の調査と共に、地下鉄で自殺しようとしたところを助けた麻宮さくらと成瀬との交際、探偵時代の暴力団への潜入捜査などがテンポよく描かれる。
しかし、ミステリーイコール"本格"とのたまう作者ゆえ、後半とんでもない大仕掛けが待っている。
このトリックが凄い。
参りました。
ただ、凄すぎてその後の展開がかすんだ感じ。
[寸評]
何故こんな採点かと言えば、とにかく主人公のキャラが嫌い。
20才の新米で勤務先もタテ組織なのに、態度がやたらでかく先輩にタメ口。
他の組織の人にはタメ口以上のひどい言葉遣い。
公務員なのに酒飲んでバイク乗り。
いかつい体を利用して、ムカつくと人を睨みつけて黙らせては喜んでいる。
50過ぎで雄大にくっつくオヤジがまた気持ち悪いキャラで、人物造形がひどすぎる。
物語も中途半端なメッセージ性が鼻につく。
[寸評]
サスペンスたっぷりの時代劇で、脱出不可能な山頂からなんとか脱出しようと闘う武士たちの姿が実に潔い。
随所に息抜きを用意しながら、全編に緊張感を保った上手い話の運びに感心。
新聞広告にもあったが、懐かしの洋画「大脱走」を彷彿とさせる。
それだけでかなりのネタばれになってしまっているが、もちろんこの物語はそれだけでは終わらない。
奇想天外なラストがまた面白い。
後日談まで気持ちの良い娯楽作になっている。
[寸評]
物語の設定自体はさして特異なものではないが、滑らかな筆致で序盤は好調。
また、ウェインが依頼された"仕事"を果たす場面は、突然のショックを読者に与え、かなり衝撃的だ。
ここまでが3分の1だが、残り3分の2が少々物足りない。
プライスが徐々に狂気に陥っていく様子を、さりげなくかつ執拗に描いていくのだが、もう少し変化が欲しい。
警察の捜査があまりにざるなのも興醒めだが、それでも幕切れの怖さはさすが。
[寸評]
前々回の「安政五年の大脱走」と同じくトンネル脱走ものだが、こちらは謎解きがメインで、脱走が成功するか否かのサスペンスはあまりない。
にしても、イタリア軍の監視が緩すぎるというか、何本もトンネルが掘られ、土が外の花壇に積み上げられたり、緊張感に欠け、物足りない。
話の運びに退屈はしないが、死体発見の謎解きにしても、スパイ話にしてもやや間延びした感じで、囚われからの解放というドラマチックな盛り上がりもなし。
[あらすじ]
元探偵の成瀬は、今はパソコン教室講師や駐輪場警備員、映画のエキストラなどをしている。
フィットネスクラブ仲間のキヨシの頼みで、キヨシが想いを寄せる久高愛子の家人の交通事故に絡んだ調査をすることに。
その久高隆一郎は交通事故で死んだが、実は蓬莱倶楽部という会社が偽装した保険金殺人だという。
昔を思い出しながら成瀬は内偵を始める。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
大山雄大は赤羽台消防出張所の新米消防士。
やはり消防士で職務熱心だった父は昔殉職。
雄大は仕事は適当にやり、いずれ事務職に異動して定年までのんびりやるつもりだ。
今日の現場は古い木造アパートで、燃えさかる家から男を一人救出するが、結局死亡。
ここには不法残留の外国人が住んでいた。
警察に入国管理局が入り乱れての騒ぎとなる。
[採点] ☆☆
[あらすじ]
井伊鉄之介は彦根藩主井伊直中の十四男。
地元に居場所がなく、江戸へ出て他家への養子縁組を求めるが、養子先は見つからず彦根へ戻ることに。
その折、美蝶という津和野藩主の養女を見そめるが身分違いとあきらめさせられる。
それから20年余、運命の悪戯か、直弼と名を改めた彼は藩主かつ幕政の大老となった。
そして美蝶に似た女を見かける。
[採点] ☆☆☆☆
[あらすじ]
プライスはベストセラー作家だが、妻との離婚調停が長引き今はスランプだ。
図書館で彼は昔知り合いだったウェインと出会う。
ウェインはやはり作家だが近年は出版社から見放され、書き上げた小説はあるものの大学講師の仕事を探していた。
プライスは、その小説を自分の名前で作品化し出版社の前払金を山分けする代わりに妻を殺してくれるよう持ちかける。
[採点] ☆☆☆★
[あらすじ]
第2次大戦下、イタリア北部の捕虜収容所に収容されていたイギリス軍捕虜たちは、脱走用トンネルを密かに掘り進めていた。
ある朝、掘削チームがトンネルに入ると、天井の一部が落ち、スパイ疑惑のあったクトゥレス中尉が土砂に埋もれ死んでいた。
一人では進入不能のトンネルにいつどうやって入ったのか。
疑惑の中、他のトンネルへ死体は移される。
[採点] ☆☆☆
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▲映画「大脱走」
1963年のアメリカ映画。
第2次大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所に囚われた脱走常習の連合軍兵士たちの脱出に至る苦闘と逃避行をユーモアを交えて描くアクション映画。
当時は若手だったスティーヴ・マックィーンやチャールズ・ブロンスン、ジェームズ・コバーン、デヴィッド・マッカラムなどが出演。
マックィーンがオートバイに乗って駆け回る姿がカッコイイ。
「荒野の七人」のジョン・スタージェスが監督し、テーマ曲もヒットした。