2020年02月29日
鹿山利明様 ご逝去
ご冥福をお祈り致します



(敬称は限りなく略しました)

<東京ナイフの研究について>

 まずお断りしておかなければならないのは、
これらの内容が、私個人のコレクションのみの見解で、
一般論を語るものでなく、先鞭者の意見を否定する
物でもない。ましてや製作者をけなすものでは
断じて無い事を明記しておく。
藤本氏と鹿山氏は、私が学生の時に会ったの
みなので、私個人が、何か言える立場では
無い事を承知であえて書かせていただいた。
ナイフショーでも、
「今日は、お祭りだから、OO円でいいよ。」と、
今は亡き川崎さんと声を掛けていただいたが、
学生だった私にはその半額すら出なかった。
それにも拘らず、ただ見ているだけの私にすら、
サイドロックの頑丈さを説明して頂いた


尚、当HPの記事と写真関しては、
三重の月山刃物様を通して、
鹿山様に掲載のご許可をいただいた。


東京ナイフについてお断り
その1(スチレットファースト・19丁他)
その2(彫金2丁、オールド、山卯?、べっ甲八丁、19丁他)
その3(コイン、シルバー他)
その4(大きさの比較)
その5(5丁、紙タグ、輸出シール他)
その6(鹿山赤堀、鹿山No1、鹿山久山、電工他)
その7(モアディープ)
考察1(ペーパーナイフ、ドル挟み、他)
戻る  (得物)


 詳細は、他のHPにもあるが、「他の誰かがやったら
アウトだが、藤本さんだと許される・・・」というくだりが
掲載されているが、これは言い得て妙なところで、
手にする喜びが勝るのである。
代表作のスチレットで、刃を起こしてロックした時点で、
ロックバーがハンドルに納まらずに出ている物が存在するが、
眺めていても気にならないのである。
それすら魅力に感じててしまう。
 刻印も今一つ不可解さが残り、探求欲をかき立てられる。
向かい馬、丸にYAX、TASSA、ROBUSO、
ORIENTAL、S.S.S、の定番ラインの他に、
タング部に「Y.FUJIMOTO」、ブレードに入る物
(大、小、筆記体、HANDMADE入り)、羽根F、
「Y」とだけはいる物や、「Y.F」といったイニシャルのみもある。
 シリアルNoの有無も興味深い。
 スタッグでも「DA」と「AD」、「D」があり、
パールも「UP」と「PU」、「PA」がある。
ウッドも「W」や「N」があり、マイカルタは「MA」である。
当然無印もあり、古い物では「STSINLESS」のみもある。
 ボルスターは、直線とラウンドとそれぞれの角落しの計4タイプを
主流にして、若干のアレンジが入る。
 ナイフマガジンのNo。94(2002年6月号P32)に
スチレットのファーストなるモデルが載っているが、
ボルスターは、ラウンドになっている。
 私の「D001」の方が、洗練されて無い気がする。
より成立の古いホーンタイプの古い物は、ストレートで角は落して
いないし、タング部に刻印が入る。
 いつもは、赤いスペーサーを入れるが、同時期で無いものもある。


  
(スペーサ-無しのロックはみ出しの無印)   (「N」って何?)


 ブレードの硬度は、製作上のロスを抑える理由や、
研ぎ易さといった考慮もあってか、低めに感じられる。
ブレードの薄さもあるが、少し力を入れて砥石にかけると、
みるみる削れていく。ダンボールや紙管を刺したり切ったりすると、
ポイントはめくれてしまう。
 生活ナイフとして、当然砥ぎ易さ重視である。
 石のグラインダーで比較的ゆっくりと整形される。
鍛造ではないので、焼き入れも多分一発勝負。
故に脱炭は、殆ど無い。
実に素晴らしい青黒に染まる。
 これが、切れ味と砥ぎ易さを兼ね備えたブレードになっていると
思われる。

 時代背景からくる鋼材関係の進歩においては、
鹿山氏が有利なのは言うまでもない。
 ただ、よく考えると、藤本製作所の量産部は、
限りなく「=鹿山」なのは言うまでも無いし、1980年当時は、
鹿山氏のナイフが、1800円~20000円だった訳である。
 これら一連のナイフ群をひっくるめて、「味」と言ってしまえば
それまでなのだが。
なにか、シックリ来ない自分がいるのも事実である。
「では何なのだ?」と問われても答える言葉は無い。
実用を超えた「何か」ではある。現実に
右ポケットにスパイダルコ、左ポケットに東京ナイフ。
仕事中はスパイダルコで、休憩中に出すのが東京ナイフという
とんでもない現実。

 
   
<左>
 セン抜きと缶切りとその背バネと真中のスペーサーはステンレス。
 ライナーは、両方共真鍮。メインブレードとその背バネは、スチール。
 実用と電位差を考慮した#35。
 上は、ビクトリノックスのエレクトリッシャン。
 恐らく、キャンピングではない。白米と缶づめという弁当が労働者に
普及しだした頃の「栓抜き缶切り付き」の電工。昭和を働き抜いた
一本。脱炭の加減か、ブルーイングは綺麗に仕上る。
<右>
 前の持ち主が、青森県青森市で入手した藤本スチレットの
初期作品。
カシメは、かなり雑。
初期の作品には、よくあるネイルマーク周辺の
キズがある。
「y.fujimoto」は、リューターではなく、刻印の様である。
「向い馬」とのWネーム。シリアルと鋼材名は、入らない。


  
 
<左>
 「KIKUHIDE」と「羽根F」のWネームの豆八丁(スタッグ)と
銀貼りの「羽根F」。銀貼りは、ハンドルにテーパーが掛かっている。
現行は、マイナスドライバーと缶切りだが、スモールブレードと鎌に
入れ替わっている。「STERLING」なので、比較的古い。
豆八丁で、缶を開ける人は少ないので、むしろ実用的。
<右>
 新発見の「Y.F」刻印のベビーホーン。
もしかすると、試作で作ったパーソナルナイフの可能性もある。
 銃刀法に合うようにとの新作紹介の記事もあった。
 ベビーホーン自体は、日本の銃刀法に合うようにと、
比較的後期に藤本氏が考案した。
多分その中でも、この刻印は古いと思う。
古川氏も、ランドール氏に奨められ、デザインをしてもらった
刻印を入れ出したとの事だった。
 他の草創期のビルダーも、ほとんど自分の名前を入れる概念が
薄かった。それだけ商品に特長があり、人数も少なかったので
、誰の作品かすぐに判った為かも知れない。
田崎氏の作品も名前無しが存在する。
 当然藤本製作所では、個人名はいれていない。
 下に敷いてあるのは、多分綾子婦人が縫ったサック。




 個体の確保難から、雑誌での特集が難しいのは
当然なので、せめて後学の僅かな手助けになればと思い、
自己満足半分に列記させて頂いた。

 東京阿佐ヶ谷のしんかいさんにもお世話になりっぱなしで、
感謝の意を表したい。

 尚、本HPは、
主に作品の紹介に重点を置かせていただいたので、
両氏の生い立ちや、プロフィールは、割愛させていただいた。

<カタログ写真のシリアルNo>

D80(サイドロック)     -ウッド      W010
D80(サイドロック)     -スタッグ     D025
D70(サイドロック スリム)-スタッグ     DA001
D70(サイドロック スリム)-ウッド      BA001
ブーツホーン         -ウッド      BA001
F75(フロントロック)    -スタッグ     D009
スチレット           -スタッグ     D041
スチレット           -ウッド      W001
ブーツS            -パール     PA003
ブーツS            - ?       EA001
ダガーA            -スタッグ    DA003
  :              -ウッド      W001
H(ホーン)型                    不明
H・J(ジュニアホーン)型             不明

 以上が、藤本氏が亡くなる直前に印刷された、藤本氏の
カタログに載っている写真のシリアルNoである。
 藤本氏は、このカタログが出来あがり、間もなく亡くなった為、
ほとんど配布されなかったとの事。この中には、ベビーホーンと
ジュニアスチレット、インターフレームの記載は無い。
 ダガーAは、どう見ても普通のナイフで、「ダガー」には
見えない。ブーツSも、何故これを「ブーツ」と呼ぶのか不明。
「ブーツホーン」は、ホーンタイプのブレードの峰が、フォール
スエッジになっている。
 またヤフオクでは、
 スチレットのウッド W058
 ホーンのスタッグ D091
が確認されている。ただし、スチレットには、シリアルNo無しも多い。
 代表作は、本数が多い。一本ものも多いので、何とも言えないが、
今更ながら寡作であった事を痛感させられる。



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