1.撮影・調査 / 2.解体 / 3.剥落止め・表打ち / 4.旧肌裏紙除去・補絹
5.肌裏打ち・増裏打ち / 6.折れ伏せ・付け廻し / 7.総裏打ち・仮貼りと補彩・仕上げ
5.肌裏打ち・増裏打ち


5−1.肌裏打ち

 染美濃紙と小麦粉澱粉糊を用いて肌裏打ちをする

 新しい肌裏紙には美濃紙を用います。薄く滑らかで、強い紙です。当社では岐阜県美濃の太田弥八郎製を使用しています。
 第一層目である肌裏紙の色は、本紙表面の色合いに強い影響を与えます。そのため、新しい肌裏紙の選択は新調に行います。修理前の印象を変えないために、旧肌裏紙と同色の肌裏紙を用いる場合もあります。また、より絵画の表現がよく見えるように、トーンを変えた色を選択する場合もあります。いずれも天然染料を用いて、当社の技術者が染めます。
 肌裏打ちには小麦粉澱粉糊を使用します。この糊は接着力が強く、確実に肌裏紙と本紙とを接着させます。しかし、水分を与えれば再び外すことができる可逆性の糊です。

5−2.増裏打ち

 染美栖紙と小麦粉澱粉糊を用いて肌裏打ちをする

 新しい増裏紙には美栖紙を用います。胡粉が漉き込まれた、柔らかくふわりとした紙です。表具に厚みを持たせ、強度を増すために打つ裏打ちです。当社では奈良県吉野の上窪○○製を使用しています。
肌裏紙と同様に第二層目である増裏紙も、その色は、本紙表面の色合いに影響を与えます。そのため、本紙にあった色合いに美栖紙を染め上げます。
増裏打ちには小麦粉澱粉糊を約7年から10年寝かせた「古糊」を使用します。この糊は接着力が弱いのですが、柔らかさがあるため、表具の巻く性質に大変合った糊です。やはり、水分を与えれば再び外すことができる可逆性の糊です。


>>6.折れ伏せ・付け廻し