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脳梗塞予防のための知識

健康コラム第1回  脳梗塞予防のための知識

 

脳卒中(脳梗塞、脳出血など)は、日本人の死因の上位を占め、また「寝たきり」の原因となる病気の第1位でもあります。 ある日突然襲ってくる恐ろしい病気ですが、その原因や起こりやすい状況を正しく知ることで、リスクを大幅に減らすことができます。

まずは、脳梗塞がどのようにして起こるのか、こちらの図をご覧ください。

 

脳梗塞は、脳の血管の「SOS」です

脳梗塞とは、文字通り脳の血管が「詰まって(塞がって)」しまう病気です。


脳の細胞は、血液が運んでくる酸素と栄養がなければ生きていけません。血管が詰まり血流が途絶えると、その先の脳細胞は短時間で壊死してしまいます。これが様々な麻痺や障害を引き起こします。

では、なぜ血管が詰まってしまうのでしょうか?
主な原因は、図の中央にあるように「血栓(けっせん)」と呼ばれる血の塊が血管を塞いでしまうことです。

この恐ろしい血栓ができる背景には、主に4つの大きな要因があります。

脳梗塞を引き起こす4つの「危険因子」

1. 動脈硬化(血管が狭く硬くなる)

本来、健康な血管はゴムホースのようにしなやかです。しかし、加齢や生活習慣の乱れによって、血管の壁が厚く硬くなったり、内側にコレステロールなどの塊(プラーク)が溜まって狭くなったりします。これを動脈硬化と言います。

狭くなった血管は詰まりやすく、またプラークが剥がれて血栓となり、先の方で詰まる原因にもなります。

2. 高血圧(血管に強い圧力)

高血圧は、常に血管の壁に強い圧力がかかっている状態です。これは血管を傷つけ、動脈硬化を加速させる最大の原因となります。自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれ、気づかないうちにリスクを高めてしまいます。

3. 不整脈(心臓内で血栓ができる)

脳の血管自体に問題がなくても、心臓が原因で脳梗塞になることがあります(心原性脳塞栓症)。 特に注意が必要なのが「心房細動」という不整脈です。心臓が細かく震えてうまく血液を送り出せなくなると、心臓の中で血液がよどんで大きな血栓ができやすくなります。これが血流に乗って脳へと飛んでいき、太い血管を突然詰まらせてしまいます。このタイプは重症化しやすいのが特徴です。

4. ヒートショック(急激な温度差)

冬場に多く見られるのがヒートショックです。 暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動したり、冷え切った体で熱いお風呂に入ったりすると、血管が急激に縮んだり広がったりして、血圧が大きく変動します。このショックが引き金となり、血管が詰まったり破れたりする原因となります。

 

脳梗塞予防のためにできること!!

脳梗塞は突然発症しますが、その原因の多くは、日々の生活習慣の積み重ねの中にあります。

◎塩分を控えたバランスの良い食事

◎適度な運動

◎禁煙

◎冬場の室温管理(脱衣所を暖めるなど)


まずはこれらを意識することが予防の第一歩です。


また、高血圧や不整脈を指摘されている方、動脈硬化が心配な方は、放置せずに医療機関を受診し、適切な管理を行うことが最も重要です。


当院(加藤脳神経外科)では、MRIなどを用いた脳の検査や、生活習慣病の管理を行っております。「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

 

2026年07月31日

めまいについての知識

健康コラム第7回  めまいについての知識

 

突然、天井がグルグル回り出したり、雲の上を歩いているように体がフワフワしたり…。「めまい」は、経験した人にしか分からない、非常に不快で不安な症状です。
「疲れているだけかな」と様子を見てしまう方も多いですが、めまいには様々な原因があり、中には一刻を争う脳の病気が隠れていることもあります。

今回は、めまいの代表的なタイプと、見逃してはいけない「危険なサイン」、そして原因を突き止めるための最新の検査について解説します

 

あなたのめまいはどっち? 代表的な2つのタイプ

めまいは、その感じ方によって大きく2つのタイプに分けられ、それぞれ原因となる場所が異なる傾向があります。

 

1. グルグル目が回る「回転性めまい」

自分自身や周囲の景色が、遊園地のコーヒーカップのようにグルグルと回っているように感じる激しいめまいです

 

  • 特徴:

  • 突然起こり、立っていられないほど激しいことが多い。

    強い吐き気や嘔吐を伴う。

    耳鳴りや難聴、耳が詰まった感じ(耳閉感)を伴うことがある。

  • 主な原因:

  • 多くは**「耳(内耳)」**の異常が原因です

    良性発作性頭位めまい症(BPPV):

    寝返りを打ったり、上を向いたりした瞬間に、耳の奥にある「耳石(じせき)」というカルシウムの粒が本来の場所からずれることで起こります。最も多い原因です

    メニエール病:

    内耳を満たしているリンパ液が増えすぎて水ぶくれ状態になる病気です。めまい発作を繰り返します。

  • 治療方法:

  • まずは安静にし、めまい止めや吐き気止めの薬を使用します。

    メニエール病の場合は、リンパ液の排出を促す薬(利尿剤など)を使います

    良性発作性頭位めまい症の場合は、頭を特定の方向に動かして耳石を元の位置に戻す「理学療法」が有効なことがあります(耳鼻咽喉科での治療が中心となります)。


2. フワフワ宙に浮くような「浮動性めまい」

体がフワフワと浮いているような感じや、ゆらゆら揺れている感じ、まっすぐ歩けないといった感覚のめまいです。

  • 特徴:

  • 回転性ほど激しくはないが、長時間ダラダラと続くことが多い。

    「頭がボーッとする」「雲の上を歩いているよう」と表現されることも。

  • 主な原因:

  • 原因は多岐にわたります。

    ストレス、自律神経の乱れ、更年期障害

    高血圧、低血圧、貧血

    薬剤の影響(降圧剤、睡眠薬などの副作用)

    そして、「脳」の異常(脳の血流不足など)も原因となります。

     

  • 治療方法:

  • 原因となっている病気(高血圧など)の治療が基本となります。

    ストレスを減らし、睡眠を十分にとるなど生活習慣の改善も重要です。

    自律神経を整える薬や、脳の血流を改善する薬が使われることもあります。

 

絶対に見逃してはいけない「危険なめまい」

最も注意が必要なのは、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脳腫瘍などの重大な病気が原因で起こるめまいです。特に、体のバランスを司る「小脳」や生命維持の中枢である「脳幹」に異常が起きると、強いめまいが現れます。

 

以下の症状を伴う場合は、ためらわずにすぐに救急車を呼んでください

  • 【今すぐ受診!危険なサイン】

    〇激しい頭痛を伴う

    〇手足がしびれる、力が入りにくい(片側の麻痺)

    〇ろれつが回らない、言葉が出にくい

    〇物が二重に見える

    〇意識が遠のく

原因究明の鍵! MRI検査と「MR cisternography」

めまいの原因が耳なのか、脳なのか、それとも他にあるのかを診断するためには、専門医による診察と検査が不可欠です。
特に、命に関わる脳の病気を除外するために、頭部MRI検査は非常に重要です

内耳周辺を詳細に調べる「MR cisternography(MRシステノグラフィー)」

一般的な脳のMRI検査に加えて、めまいの診断では「MR cisternography」という特殊な撮影方法が大きな力を発揮します。

この検査では脳の表面や隙間を満たしている「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という水を強調して撮影する手法です。水の中に浮かぶように存在する微細な神経(聴神経や平衡感覚を司る前庭神経など)や血管の走行を、まるで透かして見るように鮮明に映し出すことができます。

 

  • これにより一般のMRIでは発見の難しい
  • 〇内耳の奥の小さな異常

    〇血管が神経を圧迫して起こるめまい(神経血管圧迫症候群)

    〇非常に小さな聴神経腫瘍

    などを発見するのに大変役立ちます。

 

◎まとめ

たかがめまいと自己判断せず、まずは「脳に異常がないか」をしっかり確認することが大切です。 当院では、最新のMRI装置を用いた精密検査(MR cisternographyを含む)が可能です。めまいでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。脳に異常がない場合は、適切な診療科(耳鼻咽喉科など)と連携して治療を進めてまいります。

2026年08月08日

脳梗塞治療の一般知識

健康コラム 第2回 脳梗塞治療のための知識

 

 

脳卒中(脳梗塞、脳出血など)は、日本人の死因の上位を占め、また「寝たきり」の原因となる病気の第1位でもあります。 ある日突然襲ってくる恐ろしい病気ですが、その原因や起こりやすい状況を正しく知ることで、リスクを大幅に減らすことができます。

まずは、脳梗塞がどのようにして起こるのか、こちらの図をご覧ください。

 

脳梗塞は、脳の血管の「SOS」です

脳梗塞とは、文字通り脳の血管が「詰まって(塞がって)」しまう病気です。


脳の細胞は、血液が運んでくる酸素と栄養がなければ生きていけません。血管が詰まり血流が途絶えると、その先の脳細胞は短時間で壊死してしまいます。これが様々な麻痺や障害を引き起こします。

では、なぜ血管が詰まってしまうのでしょうか?
主な原因は、図の中央にあるように「血栓(けっせん)」と呼ばれる血の塊が血管を塞いでしまうことです。

この恐ろしい血栓ができる背景には、主に4つの大きな要因があります。

脳梗塞を引き起こす4つの「危険因子」

1. 動脈硬化(血管が狭く硬くなる)

本来、健康な血管はゴムホースのようにしなやかです。しかし、加齢や生活習慣の乱れによって、血管の壁が厚く硬くなったり、内側にコレステロールなどの塊(プラーク)が溜まって狭くなったりします。これを動脈硬化と言います。

狭くなった血管は詰まりやすく、またプラークが剥がれて血栓となり、先の方で詰まる原因にもなります。

2. 高血圧(血管に強い圧力)

高血圧は、常に血管の壁に強い圧力がかかっている状態です。これは血管を傷つけ、動脈硬化を加速させる最大の原因となります。自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれ、気づかないうちにリスクを高めてしまいます。

3. 不整脈(心臓内で血栓ができる)

脳の血管自体に問題がなくても、心臓が原因で脳梗塞になることがあります(心原性脳塞栓症)。 特に注意が必要なのが「心房細動」という不整脈です。心臓が細かく震えてうまく血液を送り出せなくなると、心臓の中で血液がよどんで大きな血栓ができやすくなります。これが血流に乗って脳へと飛んでいき、太い血管を突然詰まらせてしまいます。このタイプは重症化しやすいのが特徴です。

4. ヒートショック(急激な温度差)

冬場に多く見られるのがヒートショックです。 暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動したり、冷え切った体で熱いお風呂に入ったりすると、血管が急激に縮んだり広がったりして、血圧が大きく変動します。このショックが引き金となり、血管が詰まったり破れたりする原因となります。

 

脳梗塞予防のためにできること!!

脳梗塞は突然発症しますが、その原因の多くは、日々の生活習慣の積み重ねの中にあります。

◎塩分を控えたバランスの良い食事

◎適度な運動

◎禁煙

◎冬場の室温管理(脱衣所を暖めるなど)


まずはこれらを意識することが予防の第一歩です。


また、高血圧や不整脈を指摘されている方、動脈硬化が心配な方は、放置せずに医療機関を受診し、適切な管理を行うことが最も重要です。


当院(加藤脳神経外科)では、MRIなどを用いた脳の検査や、生活習慣病の管理を行っております。「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

 

2026年08月01日

よくある頭痛についての一般知識

健康コラム 第6回 よくある頭痛についての知識

 

日本人の約4人に1人は「頭痛持ち」と言われるほど、頭痛は私たちにとって非常に身近な症状です。
「いつものことだから」「市販薬を飲めばなんとかなるから」と、痛みを我慢してやり過ごしていませんか?一口に「頭痛」と言っても、その原因やメカニズムは様々です。
実は頭痛のタイプによって「効く薬」や「予防法」が全く異なるため、自分の頭痛の正体を知ることが、つらい痛みから解放される第一歩となります。

今回は、代表的な慢性頭痛である「緊張型頭痛」と「片頭痛」を中心に、その違いと治療法、さらに最近話題の「天気頭痛」についても解説します。

 

 

まず初めに:「危険な頭痛」を見逃さないで

慢性頭痛の解説に入る前に、絶対に放置してはいけない「危険な頭痛」について触れておきます。 これまで解説してきた「クモ膜下出血」や「脳出血」などは、発症時に激しい頭痛を伴います。

 

「今までに経験したことのない」突然の激しい頭痛
 バットで殴られたような衝撃のある頭痛
 手足のしびれ、麻痺、言葉が出にくいなどを伴う頭痛

このような症状があった場合は、慢性頭痛ではありません。ためらわずに救急車を呼んでください。


あなたの頭痛はどっち? 代表的な2つのタイプ

MRIやCT検査で脳に異常がない場合、慢性頭痛の多くは以下の2つのタイプに当てはまります。

 

1. 日本人に最も多い「緊張型頭痛」

首や肩の筋肉が緊張し、血行が悪くなることで起こる頭痛です。ストレスや姿勢の悪さが主な原因です。

 

 

痛みの特徴

  • 痛みの特徴

    頭全体が、ヘルメットやハチマキでギリギリと締め付けられるような鈍い痛み。

    毎日のようにダラダラと続くことが多い。

    「重苦しい」感じで、動いても痛みは悪化しない。

  • 主な原因

    長時間のデスクワークやスマホ操作による眼精疲労や姿勢の悪さ(ストレートネックなど)

    精神的なストレスによる筋肉の緊張。

  • 対処法と治療

    温める・ほぐす

    入浴して首や肩を温めたり、ストレッチで筋肉をほぐしたりするのが効果的です。

  • 薬物療法

    一般的な鎮痛薬(ロキソニンやイブプロフェンなど)や、筋肉の緊張を和らげる薬が使われます

2. ズキンズキンと脈打つ「片頭痛(へんずつう)」

脳の血管が急激に拡張し、周囲の神経が刺激されて炎症が起こることで生じる頭痛です。20代~40代の女性に多く見られます

 

  • 痛みの特徴

    頭の片側(両側の場合もある)が、心臓の拍動に合わせてズキンズキンと脈打つような痛み

    月に数回~週に1回程度発作的に起こり、一度始まると数時間~数日間続く。

    体を動かすと痛みが悪化する。

    吐き気を伴ったり、光や音に敏感になったりする。

    (人によっては)頭痛の前に目の前がチカチカ光る「前兆(閃輝暗点)」が現れる。

  • 主な原因(誘因)

    ストレスからの解放(週末など)、天候の変化(低気圧)、ホルモンバランスの変化(生理周期)、特定の食べ物、睡眠不足や寝過ぎなど、様々な刺激が引き金になります。

  • 対処法と治療

    冷やす・静かに過ごす:

    痛む部位を冷やし、光や音を避けて暗い静かな部屋で横になると和らぐことがあります。

  • 物療法(ここが重要!)

    一般的な鎮痛薬も使われますが、効果が不十分なことが多いです。

    片頭痛には、市販薬とは異なる専用の特効薬(処方薬)があります。例えばマクサルトやゾーミック(※)といった名前のお薬です。

これらは広がった脳の血管を元に戻し、炎症を抑える作用があり、発作の初期に飲むと非常によく効きます。 (※商品名は一例です。患者さんの体質に合わせて適切なお薬を選択します。)

  • 知っておいてほしい薬の副作用と注意点

    れらの片頭痛専用薬は非常によく効きますが、血管に作用するため、服用後に以下のような副作用が出ることがあります

  • 〇胸がドキドキする、締め付けられる感じがする

    〇喉が詰まるような感じ、首筋が張る感じ

    〇眠気、だるさ

これらは薬が効いている証拠でもあり、多くは一時的なものですが、初めて飲むと驚かれるかもしれません。
※重要:血管を収縮させる作用があるため、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞などの既往がある方、コントロール不良の高血圧の方は使用できない場合があります。診察時に必ずご相談ください。

 

【コラム】雨が降ると頭が痛い…「天気頭痛」の正体とは?

「雨の日や台風が近づくと頭痛がする」という経験はありませんか?
これは「気象病」や「天気頭痛」と呼ばれ、決して気のせいではありません。実は、上記で解説した片頭痛や緊張型頭痛が、気圧の変化をきっかけに引き起こされている状態なのです。

 

なぜ気圧で頭痛が起こるの?(メカニズム)

 

鍵を握っているのは、耳の奥にある「内耳(ないじ)」という器官です。内耳は、平衡感覚(バランス)を司るだけでなく、気圧の変化を感じ取るセンサーの役割も持っています。

  • 1:台風の接近などで気圧が下がると、内耳のセンサーがそれを敏感に察知します。

    2:その情報が脳に伝わると、脳がストレスを感じて自律神経のバランスが乱れます(特に交感神経が活発になりすぎます

    3:自律神経が乱れると、血管が無理に収縮・拡張したり(→片頭痛)、筋肉が緊張したり(→緊張型頭痛)して、頭痛が引き起こされるのです

  • 特に乗り物酔いしやすい人や、耳が敏感な人は、内耳のセンサーが過敏に反応しやすく、天気頭痛が起こりやすい傾向にあります。
  • 天気頭痛の対策:

    頭痛薬のタイミング

    「天気が崩れそうだな」と感じたら、痛みがひどくなる前に早めに薬を飲むのが効果的です

  • 耳のマッサージ

    耳を軽く引っ張ったり回したりして、内耳の血行を良くすると予防効果が期待できます

  • 漢方薬

    体の水分の巡りを整える「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬が効く場合もあります。ご相談ください

知っておいてほしい「薬物乱用頭痛」の恐怖

「頭痛が怖いから」と、市販の鎮痛薬を予防的に飲んだり、月に10日以上服用したりしていませんか?
鎮痛薬を飲みすぎると、脳が痛みに敏感になってしまい、かえって頭痛の回数が増えたり、薬が効きにくくなったりすることがあります。これを「薬物乱用頭痛」と呼びます。
こうなってしまうと、一度薬を断つ治療が必要になります。「薬が手放せない」という方は、早めに専門医にご相談ください


まとめ:たかが頭痛、されど頭痛

「いつもの頭痛」と思っていても、それが緊張型なのか片頭痛なのか、あるいは天気が関わっているのかによって、効果的な対策は変わってきます。

当院では、MRI検査などで脳に異常がないことを確認した上で、問診によって頭痛のタイプを診断し、それぞれに合ったお薬(マクサルト、ゾーミックなどの専用薬や、漢方薬、予防薬など)の処方や生活指導を行っています。

つらい頭痛を我慢せず、一度脳神経外科で相談してみませんか?

 

2026年08月07日

脳出血ってどうすれば防げるの

健康コラム第3回  脳出血についての知識

 

脳卒中は、大きく分けて血管が「詰まる(脳梗塞)」「破れる(脳出血・クモ膜下出血)」の2つに分類されます。
前回は「詰まる」脳梗塞についてお話ししましたが、今回は血管が「破れる」病気の一つ、「脳出血」について詳しく解説します。
<ある日突然、激しい頭痛や麻痺に襲われ、命に関わることもある恐ろしい病気ですが、その最大の原因は、皆さんの身近にある「あの病気」です。
正しい知識を持ち、日々の生活で予防を心がけることが、あなたと大切な家族の未来を守ります

 

脳出血とは? なぜ血管が破れてしまうの?

脳出血とは、文字通り、脳の中(大脳、小脳、脳幹など)の細い血管が破れて出血してしまう病気です。漏れ出した血液は血の塊(血腫)となり、周囲の脳細胞を圧迫したり壊したりして様々な症状を引き起こします。

では、なぜ丈夫なはずの血管が破れてしまうのでしょうか?

 

最大の原因は「高血圧」

脳出血の原因の約6~7割は「高血圧」によるものです。血圧が高い状態が長く続くと、脳の細い血管の壁は常に強い圧力を受け続け、傷んで脆(もろ)くなってしまいます。また、高い圧力に耐えようとして血管の壁が厚く硬くなる「動脈硬化」も進行します。 こうして弾力性を失い、ボロボロになった血管が、ある日の血圧上昇(怒った時、力んだ時、寒い場所に出た時など)に耐えきれなくなり、プチンと破れてしまうのです。

 

その他の原因

高血圧以外にも、加齢により血管が脆くなる病気(アミロイド血管症)や、生まれつきの血管の奇形(脳動静脈奇形など)、血液が固まりにくくなる病気や薬の影響などが原因となることもあります。
(※今回は、脳の表面の太い血管にできたコブが破裂する「クモ膜下出血」とは区別してお話ししています)

 

どんな症状が出るの?

脳出血の症状は、出血した場所や出血量によって様々ですが、多くのケースで突然発症します

 

激しい頭痛、吐き気、嘔吐(特に出血量が多い場合)

意識がもうろうとする、呼びかけに応じない

片方の手足が動かしにくい、しびれる(片麻痺)

言葉が出にくい、ろれつが回らない

めまい、ふらつき、まっすぐ歩けない

 

これらの症状が急に現れた場合は、脳出血(または脳梗塞)の可能性が高いです。ためらわずにすぐに救急車を呼んでください。

 

治療はどのように行うの?

1. 保存的治療(内科的治療)

多くの脳出血では、まずこの治療が行われます。
出血がそれ以上拡大しないように、血圧を下げる薬を点滴し、厳重に血圧を管理します。また、脳のむくみ(浮腫)を抑える薬を使用したり、止血剤を使ったりして、安静を保ちながら脳の状態が落ち着くのを待ちます

 

2. 手術治療(外科的治療)

出血量が多く脳への圧迫が強い場合や、意識状態が急速に悪化している場合などは、血の塊を取り除く手術が検討されます。 頭の骨を開けて直接血腫を取り除く「開頭血腫除去術」や、小さな穴から内視鏡を入れて血腫を吸い出す「内視鏡下血腫除去術」などがあります

治療後は、早期からリハビリテーションを開始し、残ってしまった麻痺などの機能回復を目指します

 

脳出血予防のためにできること!!

脳出血の最大の原因は「高血圧」です。つまり血圧を適切に管理することが最強の予防法となります

 

◎血圧管理

健康診断で高血圧を指摘された方は、放置せずに医療機関を受診し、医師の指導のもと、食事療法、運動療法、必要であれば薬物療法を行いましょう。家庭での毎日の血圧測定も大切です

◎減塩

日本人は塩分を摂りすぎる傾向があります。1日の塩分摂取量を6g未満(高血圧の方は)を目標に、薄味を心がけましょう。出汁や酸味、香辛料を上手に使うのがコツです

 

◎適度な運動

ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にしましょう。肥満の解消にもつながり、血圧を下げる効果が期待できます

◎節酒、禁煙

過度な飲酒は肝臓や腎臓に負担をかけて動脈硬化を促進させます。血管の弾力性が失われると血圧は上がります、同様に煙草も末梢血管を収縮させますので血圧上昇につながります


まずはこれらを意識することが予防の第一歩です。

脳出血は、発症すると命に関わったり、重い後遺症が残ったりする怖い病気ですが、その多くは日頃の血圧管理と生活習慣の改善で防ぐことができます。 「自分は大丈夫」と過信せず、自分の血圧に関心を持ち、血管をいたわる生活を心がけましょう


当院(加藤脳神経外科)では、MRIなどを用いた脳の検査や、生活習慣病の管理を行っております。「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

 

2026年08月02日

新しい片頭痛の薬についての知識

健康コラム第10回  新しい片頭痛の薬剤について

 

「片頭痛の薬を飲んでいるけれど、あまり効かない」「薬の種類が多すぎて何が違うのかわからない」という声をよく耳にします。実は、薬によってターゲットにしている「痛みのポイント」が全く異なります

最新の治療を知るために、まずは片頭痛が起きる仕組みと、それぞれの薬の役割を整理してみましょう。

 

1. 片頭痛の正体は「三叉神経の興奮」と「CGRP」

片頭痛のメカニズムには、脳で最も大きな知覚神経である**「三叉神経」**が深く関わっています。

  • 1:何らかの刺激で三叉神経が興奮する

    2 :神経の末端からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出される

    3 :このCGRPが脳の血管に結合すると、血管が拡張し、周囲に強い炎症が起きる

    4 :その刺激が再び脳に伝わり、「ズキズキとした痛み」として認識される

これが、現在最も有力とされる「三叉神経血管説」です

 

2. 薬ごとの作用ポイント:どこで痛みを止めている?

私たちがよく使う薬は、この「伝達ルート」のどこをブロックするかで分類されます

 

① ロキソニン(NSAIDs)・アセトアミノフェン

市販薬にもある一般的な痛み止め

  • 役割: 炎症を抑え、痛みの物質をブロックする

    仕組み: 痛み全般に関わる「プロスタグランジン」の生成を抑えます

    限界:片頭痛特有の「CGRPによる血管拡張や神経炎症」を直接止める力は弱いためひどい片頭痛には効果が限定的な場合があります

② トリプタン製剤(イミグラン、ゾーミッグ等)

病院で処方される片頭痛の薬

  • 役割: 片頭痛の「特効薬(頓服)」

    仕組み: 拡張してしまった血管を収縮させ、三叉神経からのCGRP放出自体を抑え込みます

    課題: 痛みがピークに達してからでは効きにくいことや、血管を収縮させる作用があるため、心疾患がある方は慎重な投与が必要です。(副作用に注意が必要)


③ 最新の予防薬:ゲパント系薬剤

  • 役割:片頭痛が起きる「土台」をブロックする。

    仕組み:CGRPが血管や神経に結合するための**「受け皿(受容体)」に先回りして蓋(ブロック)**をします

    強み: そもそもCGRPが作用できない環境を作るため、血管を無理に収縮させることなく、高い予防効果を発揮します

 

これまでの予防薬は、もともと血圧の薬やてんかんの薬を「転用」したものが多く、眠気やふらつきなどの副作用が課題でした。
最新の**「アクイプタ」「ナルティーク」**(ゲパント系薬剤)は、片頭痛専用に設計された内服薬です

 

ピンポイントな作用: 血管を拡張させ痛みを引き起こすCGRPの受容体を直接ブロックします

早い効果: 従来の予防薬が効果実感まで1~2ヶ月かかっていたのに対し、数日~1週間で効果を感じ始める方が多いのが特徴です

内服の利便性: 注射薬(抗体製剤)と同等の高い予防効果を、飲み薬で得られるようになりました

CGRPの役割:片頭痛発作時に血中で濃度が上昇し、血管拡張や神経炎症を引き起こす神経ペプチド。これが痛みの「鍵」であることが国際的な研究で確立されています

ゲパントの分類:従来のトリプタン(収縮作用あり)と異なり、血管を収縮させないため、心血管系の疾患を持つ患者さんにも使いやすいというエビデンスがあります

予防の定義: 月に4回以上の発作がある、または生活に著しい支障がある場合に予防療法が推奨されています(日本頭痛学会ガイドライン準拠)

大変に効果的で、慢性の片頭痛に悩む方にはとても魅力的な選択肢です。2025年まではゲパント系の薬剤は内服ではなく1か月ごとに注射で投与されていたので、治療のハードルが高いのが難点ではありましたが、内服のゲパント系の薬剤が登場したので、治療のハードルがとても低くなります。各製剤の用法と薬価を下の図に載せます

 

薬剤名 用法 1回の薬価 1日換算(約)
アクイプタ錠 60㎎ 1日1回 1461.60円 1461.60円
ナルティークOD錠 75㎎ 2日に1回 2923.20円 1461.60円
エムガルディ(注射) 4週に1回 45165円 約1613円
アジョビ(注射) 4週に1回 39022円 約1394円
アイモビーク(注射) 4週に1回 38980円 約1392円

 

図を見たら分かりますが、費用がとても高いです、3割負担の方で月に15000円くらいの費用がかかります従来のトリプタン製剤のデパケン錠やゾーミック錠はだいたい1錠あたり300円くらいなので、かかる費用は5倍~10倍にもなります

 

  従来の予防薬(デパケン、インデラル等) 最新の予防薬(アクイプタ、ナルティーク等)
1日当たりの薬価 約20~60円 約1460円
1か月(3割負担) 約200~600円程度 約13150円程度
特徴 財布への負担が非常に少ない 費用がかかるが片頭痛への特異性が高い

 

◎. 副作用の比較:何が起きやすい?

「これまでの予防薬は、副作用が辛くてやめてしまった」という方が少なくありません。新薬は副作用の「質」が異なります。

従来の予防薬によく見られた悩み

  • 眠気・ふらつき:脳の活動を全体的に抑える薬が多いため、日中の活動に支障が出ることがありました

    体重増加:代謝への影響や食欲増進が見られるものがありました

    徐脈・低血圧:心拍数や血圧を下げる作用があるため、もともと血圧が低い方は使いにくい面がありました

 

最新の「ゲパント系(アクイプタ等)」の主な副作用

  • 便秘・吐き気: 消化器系の症状が報告されていますが、多くは軽度で、体が慣れるとともに落ち着くケースが一般的です

    眠気: 従来薬ほど強くはありませんが、一部の方で見られることがあります。

    安全性: 血管を収縮させる作用がないため、心血管系の持病がある方でも選択肢に入りやすくなっています。

 

まとめ

これまでの薬剤は、服用するタイミングによって効果が無かったり、副作用で、眠気、ふらつき、血圧低下がありましたが、ゲパント系の薬剤は副作用が少なく予防薬の一面もあり、使用しやすくなりました。ただし1か月にかかる費用は1万円を超えており、気軽に飲み続けるには高すぎる金額です。しかし片頭痛に悩まされている患者さんにとっては救世主ともいえる効果がありますので、もしつらい頭痛に悩まされているのであれば一度脳神経外科を受診することをおすすめします。


2026年09月04日

クモ膜下出血について知る

健康コラム第4回  クモ膜下出血を良く知る

 

脳卒中の中でも、最も死亡率が高く恐れられているのが「クモ膜下出血」です

バットで後ろから殴られたような」と表現される、人生で経験したことのない突然の激しい頭痛が特徴です
前回の「脳出血」が脳の「中」の細い血管が破れるのに対し、クモ膜下出血は脳の「表面」を走る太い血管にできたコブが破裂して起こります

今回は、その原因となる「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」について、発症前に見つける方法や治療法を中心に解説します

 

原因は「脳動脈瘤」の破裂

クモ膜下出血の原因の約8割以上は、**「脳動脈瘤」**と呼ばれる血管のコブの破裂です。 脳の血管の枝分かれする部分(分岐部)は、血流の衝突によって負荷がかかりやすく、壁が弱くなって風船のように膨らんでしまうことがあります。これが脳動脈瘤です

ただし動脈瘤ができても、破裂するまでは何の症状もありません。しかし、ある日突然、血圧の上昇などをきっかけに風船が弾けるように破裂すると、脳の表面を覆う「クモ膜」の下に出血が広がり、クモ膜下出血を引き起こします

 

脳動脈瘤はどこにできやすい?

脳を下から見ると、左右の血管がリング状につながった「ウィリス動脈輪」という重要な血管のネットワークがあります。動脈瘤は、このリングの分岐点に好発します。

 

 

実は「数十人に一人」が持っている? MRI検査の重要性

「自分には関係ない」と思われるかもしれませんが、破裂していない「未破裂脳動脈瘤」を持っている人は、意外に多いことが分かっています。
統計によると、成人の約 2~4%、つまり「50人~25人に一人」の割合で未破裂脳動脈瘤が見つかると言われています

 

重要なのは破裂するまで全く気づかないが破裂したら命の危機

動脈瘤が恐ろしいのは、事が起こるまでなんの自覚症状も無いということです
だからこそ、破裂する前に見つけるための脳ドックが非常に重要になります。特にMRI(MRA)検査は、造影剤を使わずに脳の血管を鮮明に映し出すことができ、小さな動脈瘤を発見するのに中核的な役割を果たします

 

脳ドックで動脈瘤が見つかった場合どうすればいいのか?

もし脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、すぐに手術が必要なのでしょうか? 答えは「No」です。全ての動脈瘤が破裂するわけではありません。

 

治療を行うかどうかの判断は、日本脳卒中学会などのガイドラインに基づき、慎重に行われます。

 

ガイドラインにはどんなことが書いてあるのか

1. 動脈瘤のサイズ

一般的に5mm以上の大きさになると破裂率が高まるとされ、治療が検討されます

 

2. 動脈瘤のカタチと、場所

5mm未満でも、破裂しやすい場所にある場合や、形がいびつな場合(コブの上にさらにコブがあるなど)は治療を検討します。

 

3.年齢と健康状態

患者さんの年齢、体力、健康状態、持病によっても対処が変わってきます

 

破裂のリスクが低いと判断された場合は、半年~1年に1回のMRI検査で大きさや形に変化がないかを経過観察します。

 

破裂を防ぐための2つの治療法

破裂のリスクが高いと判断された場合、予防的な治療が行われます。主に2つの方法があります。

 

 

◎1. 開頭クリッピング術(外科手術)

頭の骨の一部を開け、顕微鏡で見ながら脳の溝を分けて動脈瘤に到達し、コブの根元(ネック)を専用の金属クリップで挟んで血流を遮断する方法です。 歴史が長く確実性が高い治療法ですが、頭を開けるため体への負担は比較的大きくなります。

 

◎2. 血管内治療(コイル塞栓術・ステント治療)

足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を脳の動脈瘤まで進め、コブの中に柔らかいプラチナ製のコイルを詰め込んで破裂を防ぐ方法です。 最近では、動脈瘤の入り口を網目状の筒(ステント)で覆い、コブへの血流を減らして治癒させる新しい治療法も行われています。 頭を切らないため体への負担は少ないですが、動脈瘤の形や場所によっては適さない場合があります

 


転ばぬ先の杖「脳ドック」を

クモ膜下出血は、一度発症すると約半数の方が亡くなるか、重い後遺症を負ってしまう非常に怖い病気です。 しかし、原因となる脳動脈瘤は、MRI検査で破裂前に見つけることができます


血縁者にクモ膜下出血を起こした方がいる場合、動脈瘤ができやすい体質の可能性があります。40歳を過ぎたら、一度は脳ドックを受けることを強くお勧めします。 当院でも最新のMRI装置による脳ドックを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

 

2026年08月03日

頭部外傷による脳疾患についての知識

健康コラム第5回 頭部外傷による脳疾患についての知識

 

転倒して頭を打った、スポーツで激しく衝突した、交通事故に遭った…。
日常生活の中で頭に強い衝撃を受けることは、誰にでも起こり得ます。

直後は「たんこぶができたけれど、意識もしっかりしているし大丈夫」と思っていても、頭の中では大変なことが起きているかもしれません.

今回は、頭部外傷によって引き起こされる主な脳疾患と、絶対に知っておいてほしい「危険なサイン」について解説します。

 

なぜ「頭の出血」は怖いのか?

頭蓋骨は、大切な脳を守る頑丈なヘルメットのようなものです。しかし、その内部は脳と髄液と血液で満タンになっており、余分なスペースは全くありません。

 

もし、頭部外傷によって頭蓋骨の中で出血が起こると、行き場を失った血液が溜まって血腫(血の塊)となり、脳を強く圧迫し始めます。

圧迫が進むと、脳は逃げ場を求めて、本来あるべき場所から押し出されてしまいます。これを「脳ヘルニア」と呼びます。

脳ヘルニアが起こると、生命維持に不可欠な「脳幹」という部分が圧迫され、呼吸停止など致命的な状態に陥る危険があります。これが、頭の怪我が命に関わる最大の理由です。

 

知っておきたい主な外傷性脳疾患

頭部外傷による脳の損傷は、出血する場所や傷つき方によっていくつかに分類されます

 

1. 頭の中で出血が起こるもの(急性期)

受傷直後から数時間以内に症状が現れる、緊急性の高い状態です

◎急性硬膜下血腫

脳を覆う「硬膜」と脳の表面の間に出血が溜まるものです。脳そのものの損傷(脳挫傷)を伴うことが多く、非常に重症化しやすい、最も警戒すべき外傷の一つです。

◎脳挫傷・外傷性脳出血

脳そのものが衝撃で傷つき(挫傷)、脳の内部で出血した状態です。脳のどの部分が傷ついたかによって、麻痺や言語障害など様々な症状が現れます。

◎外傷性クモ膜下出血

脳の表面を覆う「クモ膜」の下に出血が広がる状態です。(以前解説した「動脈瘤破裂」によるものとは原因が異なります)

(※他にも、硬膜の外側に出血する「急性硬膜外血腫」などがあります。)

 

2. CTに写りにくい「見えない損傷」

◎びまん性軸索損傷(びまんせいじくさくそんしょう)

強い回転力などが加わった際に、脳の神経線維(軸索)が広範囲にわたってちぎれてしまう損傷です。

CT検査では明らかな出血が見つからないにも関わらず、意識が戻らない、重い障害が残るといった特徴があり、非常に厄介な損傷です。



忘れた頃にやってくる「時間差」の恐怖

頭部外傷で最も注意が必要なのは、「受傷直後は何ともなかったのに、時間が経ってから症状が出る」ケースがあることです。

 

◎慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)

これは、ご高齢の方に特に多い疾患です。
頭を軽くぶつけた(本人は覚えていない程度のこともあります)後、2週間から3ヶ月ほど経ってから、じわじわと溜まった血液が脳を圧迫し始めます。

 



最近なんとなく元気がない
認知症が急に進んだ気がする
歩き方がおかしい(ふらつく)

といった症状が、怪我からだいぶ経ってから現れるのが特徴です。「年のせいかな?」と見過ごされがちですが、簡単な手術で劇的に良くなることが多いので、見逃さないことが重要です

 

診断の切り札は「CT検査」と「危険なサイン」

頭を打った際、脳の中で出血が起きているかどうかを素早く確実に診断するには頭部CT検査が不可欠です。

特に、以下のような「危険なサイン」がある場合は、ためらわずにすぐに救急車を呼ぶか、脳神経外科を受診してください。

 

【今すぐ受診!危険なサイン】

〇意識がはっきりしない、ボーッとしている

〇受傷時の記憶がない、同じことを何度も聞く

〇激しい頭痛がどんどん強くなる
〇繰り返し吐いてしまう
〇手足が動かしにくい、しびれる

〇けいれん(ひきつけ)が起きた

 

まとめ

頭部外傷は、直後の症状が軽くても、後になって命に関わる状態に変化することがあります。特にご高齢の方や、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、出血が止まりにくいため注意が必要です

「頭を打ったけれど、大丈夫かな?」と少しでも不安に思ったら、自己判断せずに、専門医による診察とCT検査を受けることを強くお勧めします

 

2026年08月05日

認知症についての正しい知識

健康コラム第9回 認知症についての正しい知識と治療について

 

「最近、人の名前が出てこない」「何を取りに来たのか忘れてしまった」
年齢を重ねれば、誰にでもそんな経験はあるものです。
「年のせいかな?」と笑って済ませているその症状、もしかしたら「認知症」のサインかもしれません。
今回は、日本の国民病とも言える「認知症」について、その実態から多様なタイプ、診断、治療、そして向き合い方までを解説します

 

1. 決して「他人事」ではない、日本の認知症の現状

皆さんは、日本でどれくらいの方が認知症を患っているかご存知でしょうか?

日本は世界でも類を見ない超高齢社会です。
厚生労働省などの推計によると、65歳以上の高齢者のうち、約5~6人に1人が認知症であると考えられています。さらに、認知症の一歩手前である「軽度認知障害(MCI)」の方を含めると、その数はさらに膨れ上がります

認知症の発症リスクは年齢とともに高まり、特に75歳を過ぎるとその確率は急激に上昇します。長生きが当たり前の現代において、認知症は「特別な人がなる病気」ではなく、「誰もがなりうる身近な病気」なのです。

 

2. 「加齢によるもの忘れ」と「認知症」の違い

「ただの、もの忘れ」と「認知症」は、似ているようで根本的に異なります。

  • 加齢によるもの忘れ

    体験したことの「一部」を忘れる(例:昨日の夕食のメニューが思い出せない)

    ヒントがあれば思い出せる

    自分が忘れているという自覚がある

  • 認知症によるもの忘れ

    体験したことの「すべて」を忘れる(例:夕食を食べたこと自体を忘れる)

    ヒントがあっても思い出せない

    忘れている自覚がない(指摘されると怒り出すことも)

【進行すると現れる症状と家族への負担】

認知症が進行すると、記憶の障害だけでなく、時間や場所がわからなくなる(見当識障害)、段取り良く物事が進められない(実行機能障害)といった症状が現れます。 さらに進むと、「徘徊(あてもなく歩き回る)」「介護への抵抗」「幻覚・妄想」といった行動・心理症状(BPSD)が現れることがあり、これらはご家族にとって非常に大きな介護負担となります。
認知症が進行すると、記憶の障害だけでなく、時間や場所がわからなくなる(見当識障害)、段取り良く物事が進められない(実行機能障害)といった症状が現れます。 さらに進むと、**「徘徊(あてもなく歩き回る)」「介護への抵抗」「幻覚・妄想」**といった行動・心理症状(BPSD)が現れることがあり、これらはご家族にとって非常に大きな介護負担となります。

 

3. なぜ「早期発見」が重要なのか?

「認知症と診断されるのが怖い」と、受診をためらう方は少なくありません。 しかし、認知症治療において最も大切なのは**「早期発見・早期対応」**です

現在の医療では、一度死んでしまった脳細胞を元に戻すことはできません。しかし、早期に発見し、適切な治療やケアを開始することで、病気の進行を緩やかにし、健康な人と変わらない日常生活(ADL)を送れる期間を長く保つことが期待できます

ご本人らしい生活を一日でも長く続けるために、早期受診が鍵となるのです。

 

4. 認知症の様々なタイプと診断方法

一口に認知症と言っても、その原因は様々です。代表的な3大認知症に加え、知っておきたい特殊なタイプもご紹介します。

 

代表的な3大認知症

◎アルツハイマー型認知症 (AD)

最も多いタイプ。脳が少しずつ萎縮し、新しいことが覚えられなくなります。

◎レビー小体型認知症 (DLB)

幻視(実際にはないものが見える)や、手足の震え・筋肉のこわばり(パーキンソン症状)が特徴です。体調の日内変動も大きいです

◎血管性認知症

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が発作的に起こり、階段状に症状が進行します

 

それ以外で知っておきたい認知症のタイプ

◎前頭側頭型認知症 (FTD)

脳の前の方(前頭葉や側頭葉)が萎縮します。初期には「もの忘れ」が目立たず、**「性格が変わった」「理性が効かない行動(万引きなど)」「同じ行動を繰り返す」**といった症状が現れるのが特徴です。比較的若い世代(65歳未満)にも発症します

 

◎脳アミロイド血管症 (CAA)

脳の血管の壁に「アミロイドβ」という異常なタンパク質が溜まり、血管がもろくなる病気です。脳出血(特に脳の表面に近い部分)を繰り返し起こしやすいのが特徴で、それにより血管性認知症の症状が出たり、アルツハイマー型と合併したりすることがあります。MRI検査で微小な出血跡を見つけることが診断の鍵となります

 

当院での診断:MRIと記憶力テスト

認知症の診断、特にタイプの見極めには専門的な検査が必要です。当院でも行っている認知症の検査について解説します

 

ステップ1:HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)

医師やスタッフが質問形式で行う、短時間の記憶力・計算力のテストです。


ステップ2:頭部のMRI検査

脳の萎縮の部位(アルツハイマー型なら海馬、FTDなら前頭葉など)や、脳梗塞・微小出血(血管性やCAAの兆候)の有無を確認します

 

当院では、これらのMRI検査とHDS-Rの両方を行うことが可能です。 脳の画像情報と実際の認知機能を合わせて総合的に評価し、的確な診断につなげます

 

5. 治療薬の効果と「病気との付き合い方」

認知症と診断された場合、主に薬物療法を行います。

 

治療薬の種類と効果

〇現在使われている抗認知症薬(ドネペジル、メマンチンなど数種類)は、脳内の神経伝達物質を調整し、記憶力や意欲の低下を一時的に改善したり、進行を遅らせたりする効果があります

〇患者様の症状(記憶障害が中心か、怒りっぽさが中心かなど)や体質に合わせて、最適な薬を選択します。

【大切な心構え】
〇非常に残念ながら、現在の医学では認知症を「完全に治す」ことや、進行を「完全に止める」ことは困難です


〇治療の目標は、薬で進行を少しでも遅らせながら、環境を整え、デイサービスなどの介護サービスを上手に利用することで、ご本人が穏やかに過ごせる時間を増やし、ご家族の負担を減らしていくことにあります

〇認知症は、患者様ご本人とご家族、そして医療・介護がチームとなって、長い目で付き合っていく病気です。 「おかしいな?」と思ったら、一人で悩まず、まずは当院にご相談ください

 

【補足コラム】話題の新薬「レカネマブ」への期待と現実

最近、ニュースなどで「アルツハイマー病の新しい治療薬(レカネマブ:商品名レケンビ)が承認された」という報道を目にし、「ついに認知症が治るようになったのでは?」と期待を抱いて当院を受診される患者様やご家族がいらっしゃいます

確かに、認知症治療における大きな一歩ではありますが、現時点では「夢の特効薬」とまでは言えないのが実情です。誤解を解き、正しく理解していただくために、この新薬の「現実」について解説します

 

1. 「治す薬」ではなく、「進行を少し遅らせる薬」です

レカネマブは、アルツハイマー病の原因物質の一つとされる脳内の「アミロイドβ」というタンパク質を除去する薬です。 臨床試験では、偽薬を使ったグループと比べて、症状の進行を**「27%抑制した」**という結果が出ています

これは、病気が「治る」ことや、進行が「止まる」ことを意味するわけではありません。あくまで、何も治療しない場合と比べて**「進行のスピードが少し緩やかになる」**という効果です。患者様やご家族が、症状の改善をはっきりと実感できるほどの劇的な変化は、残念ながら期待しにくいのが現状です

 

2. 対象は「ごく早期」の患者様に限定されます

この薬が使えるのは、アルツハイマー病による**「軽度認知障害(MCI)」または「ごく軽度の認知症」**の段階にある患者様のみです。すでにある程度進行してしまった認知症の方には効果が期待できず、投与の対象外となります。 また、投与前には脳にアミロイドβが溜まっていることを確認するための特殊な検査(PET検査や脳脊髄液検査)が必須となります

 

3. 無視できない「副作用」のリスクがあります

最も注意すべき点として、「ARIA(アリア)」と呼ばれる脳の副作用が報告されています。これは、薬の作用によって脳に浮腫(むくみ)や微小な出血<が起こる現象です。
多くは無症状で自然に回復しますが、中には頭痛、めまい、けいれん等の症状が出たり、重篤な脳出血に至ったりするケースもあります。
そのため、投与期間中は定期的にMRI検査を行い、副作用の兆候がないか厳重に管理し続ける必要があります

 

まとめ:専門医と慎重な相談を

レカネマブは、新しい治療の選択肢を開いた画期的な薬ですが、上記のように対象者の限定、限定的な効果、副作用のリスク、そして高額な医療費(高額療養費制度の対象とはいえ)といった課題も抱えています。
当院では、患者様の現在の症状や進行度合い、全身状態などを総合的に判断し、既存の治療薬を含めて最適な治療方針を提案させていただきます。新薬への過度な期待はせず、まずは専門医とよく相談することをお勧めします

2026年08月11日

脳神経外科の治療で用いられる薬についての知識

健康コラム第8回 脳神経外科でよく使われる薬についての知識

 

体調が悪い時、病院で処方されるお薬。「先生に出されたから何となく飲んでいるけれど、具体的な効果や副作用はよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。

お薬は、正しく理解して服用することで最大の効果を発揮します。また、近年は医療費の負担を気にする方も増えており、「ジェネリック医薬品」への関心も高まっています。

今回は、当院でもよく処方される「頭痛」「めまい」「吐き気」「高血圧」のお薬を中心に、その特徴と、知っておきたい「お薬の値段(薬価)」について解説します。

 

はじめに:お薬の「名前」と「値段」について

薬には2つ名前があります

  • 一般名(成分名): お薬の有効成分そのものの名前。世界共通です

    商品名(ブランド名): 製薬会社がつけた名前。同じ成分でも会社によって名前が異なります。

先発品とジェネリック医薬品「後発品」

新しく開発された「先発医薬品」の特許が切れた後、同じ有効成分で作られたのが「ジェネリック医薬品(後発品)」です。開発費が抑えられるため、効果は同等で、価格が安いのが特徴です。

※以下の表の「薬価の目安」は、3割負担の患者さんが窓口で支払う1錠(または1回)あたりの概算です(2024年時点の薬価をもとに算出。調剤料などは含みません)価格は改定により変動します。

  • \:~30円程度

    \\:30円~100円程度

    \\\:100円以上~

    \\\\:非常に高価(数百円~数千円単位)

1. 頭痛のお薬(片頭痛・緊張型頭痛など)

頭痛薬は、痛みを和らげる「急性期治療薬」と、頭痛を起こりにくくする「予防薬」に分けられます。

 

2. めまいのお薬

内耳(耳の奥)の血液循環やリンパ液の状態を改善する薬が中心です

 

3. 吐き気止めのお薬(制吐剤)

頭痛やめまいに伴って起こる強い吐き気を抑えるために併用されることが多いお薬です。

 

4. 高血圧のお薬(降圧剤)

高血圧は脳卒中の最大のリスク要因です。長期間毎日飲む必要があるため、コスト管理も重要になります。非常に種類が多いため、代表的な2系統を紹介します。

 

[コストのポイント]

毎日飲む降圧剤などは、先発品とジェネリックで月々の支払いに数百円~千円以上の差が出ることがあります。医師や薬剤師に「ジェネリック希望」と伝えてみてください。

 

まとめ

お薬は、患者さんの症状、体質、持病、そしてライフスタイルに合わせて選択されます。

「値段が高いから続けられない」「副作用が怖い」といった不安があれば、自己判断で中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。

一緒にベストな治療法と、無理のないお薬の選択を考えていきましょう。

2026年08月10日