日本人の約4人に1人は「頭痛持ち」と言われるほど、頭痛は私たちにとって非常に身近な症状です。 「いつものことだから」「市販薬を飲めばなんとかなるから」と、痛みを我慢してやり過ごしていませんか?
一口に「頭痛」と言っても、その原因やメカニズムは様々です。 実は、頭痛のタイプによって「効く薬」や「予防法」が全く異なるため、自分の頭痛の正体を知ることが、つらい痛みから解放される第一歩となります。
今回は、代表的な慢性頭痛である「緊張型頭痛」と「片頭痛」を中心に、その違いと治療法、さらに最近話題の「天気頭痛」についても解説します。
慢性頭痛の解説に入る前に、絶対に放置してはいけない「危険な頭痛」について触れておきます。 これまで解説してきた「クモ膜下出血」や「脳出血」などは、発症時に激しい頭痛を伴います。
「今までに経験したことのない」突然の激しい頭痛
バットで殴られたような衝撃のある頭痛
手足のしびれ、麻痺、言葉が出にくいなどを伴う頭痛
このような症状があった場合は、慢性頭痛ではありません。ためらわずに救急車を呼んでください。
MRIやCT検査で脳に異常がない場合、慢性頭痛の多くは以下の2つのタイプに当てはまります。
首や肩の筋肉が緊張し、血行が悪くなることで起こる頭痛です。ストレスや姿勢の悪さが主な原因です。
痛みの特徴:
頭全体が、ヘルメットやハチマキでギリギリと締め付けられるような鈍い痛み。
毎日のようにダラダラと続くことが多い。
「重苦しい」感じで、動いても痛みは悪化しない。
主な原因:
長時間のデスクワークやスマホ操作による眼精疲労や姿勢の悪さ(ストレートネックなど)。
精神的なストレスによる筋肉の緊張。
対処法と治療:
温める・ほぐす: 入浴して首や肩を温めたり、ストレッチで筋肉をほぐしたりするのが効果的です。
薬物療法: 一般的な鎮痛薬(ロキソニンやイブプロフェンなど)や、筋肉の緊張を和らげる薬が使われます。
脳の血管が急激に拡張し、周囲の神経が刺激されて炎症が起こることで生じる頭痛です。20代?40代の女性に多く見られます
痛みの特徴:
頭の片側(両側の場合もある)が、心臓の拍動に合わせてズキンズキンと脈打つような強い痛み。
月に数回?週に1回程度発作的に起こり、一度始まると数時間?数日間続く。
体を動かすと痛みが悪化する。
吐き気を伴ったり、光や音に敏感になったりする。
(人によっては)頭痛の前に目の前がチカチカ光る「前兆(閃輝暗点)」が現れる。
主な原因(誘因):
ストレスからの解放(週末など)、天候の変化(低気圧)、ホルモンバランスの変化(生理周期)、特定の食べ物、睡眠不足や寝過ぎなど、様々な刺激が引き金になります。
対処法と治療:
冷やす・静かに過ごす: 痛む部位を冷やし、光や音を避けて暗い静かな部屋で横になると和らぐことがあります。
薬物療法(ここが重要!):
一般的な鎮痛薬も使われますが、効果が不十分なことが多いです。
片頭痛には、市販薬とは異なる専用の特効薬(処方薬)があります。例えば、マクサルトやゾーミック(※)といった名前のお薬です。
これらは広がった脳の血管を元に戻し、炎症を抑える作用があり、発作の初期に飲むと非常によく効きます。 (※商品名は一例です。患者さんの体質に合わせて適切なお薬を選択します。)
【知っておいてほしい薬の副作用と注意点】 これらの片頭痛専用薬は非常によく効きますが、血管に作用するため、服用後に以下のような副作用が出ることがあります。
胸がドキドキする、締め付けられる感じがする
喉が詰まるような感じ、首筋が張る感じ
眠気、だるさ
これらは薬が効いている証拠でもあり、多くは一時的なものですが、初めて飲むと驚かれるかもしれません。 **※重要:**血管を収縮させる作用があるため、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞などの既往がある方、コントロール不良の高血圧の方は使用できない場合があります。診察時に必ずご相談ください。
「雨の日や台風が近づくと頭痛がする」という経験はありませんか? これは「気象病」や「天気頭痛」と呼ばれ、決して気のせいではありません。実は、上記で解説した片頭痛や緊張型頭痛が、気圧の変化をきっかけに引き起こされている状態なのです。
鍵を握っているのは、耳の奥にある**「内耳(ないじ)」**という器官です。内耳は、平衡感覚(バランス)を司るだけでなく、気圧の変化を感じ取るセンサーの役割も持っています。
台風の接近などで気圧が下がると、内耳のセンサーがそれを敏感に察知します。
その情報が脳に伝わると、脳がストレスを感じて自律神経のバランスが乱れます(特に交感神経が活発になりすぎます)。
自律神経が乱れると、血管が無理に収縮・拡張したり(→片頭痛)、筋肉が緊張したり(→緊張型頭痛)して、頭痛が引き起こされるのです。
特に乗り物酔いしやすい人や、耳が敏感な人は、内耳のセンサーが過敏に反応しやすく、天気頭痛が起こりやすい傾向にあります。
【天気頭痛の対策】
頭痛薬のタイミング: 「天気が崩れそうだな」と感じたら、痛みがひどくなる前に早めに薬を飲むのが効果的です。
耳のマッサージ: 耳を軽く引っ張ったり回したりして、内耳の血行を良くすると予防効果が期待できます。
漢方薬: 体の水分の巡りを整える「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬が効く場合もあります。ご相談ください。
「頭痛が怖いから」と、市販の鎮痛薬を予防的に飲んだり、月に10日以上服用したりしていませんか?
鎮痛薬を飲みすぎると、脳が痛みに敏感になってしまい、かえって頭痛の回数が増えたり、薬が効きにくくなったりすることがあります。これを「薬物乱用頭痛」と呼びます。
こうなってしまうと、一度薬を断つ治療が必要になります。「薬が手放せない」という方は、早めに専門医にご相談ください。
「いつもの頭痛」と思っていても、それが緊張型なのか片頭痛なのか、あるいは天気が関わっているのかによって、効果的な対策は変わってきます。
当院では、MRI検査などで脳に異常がないことを確認した上で、問診によって頭痛のタイプを診断し、それぞれに合ったお薬(マクサルト、ゾーミックなどの専用薬や、漢方薬、予防薬など)の処方や生活指導を行っています。
つらい頭痛を我慢せず、一度脳神経外科で相談してみませんか?

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