今回は、特定健診についての話題を取り上げたいと思います。正確には特定健診・特定保健指導と呼ばれるもので、2008年の4月から始まった、40〜74歳までの方を対象にした、メタボリックシンドロームの検出、指導を目的とした健康診断です。血液検査、血圧に加えてお臍周りの腹囲を計測することで、内臓脂肪の量を推定します。メタボリックシンドロームと判定された場合には、個別に保険指導を受けることになります。また、受診率、保健指導受診率、目標到達度が基準値(5年で、メタボリックシンドローム及び、その予備軍を10%減少)に満たない場合に、その保険組合の後期高齢者医療制度の財政負担率を最大10%増やすペナルティが課せられます。
メタボリックシンドロームというのは、規定値以上の内臓脂肪に加え、高血圧、高血糖、脂質異常のうちの2つ以上に異常がある場合に内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)と判定されます。
脂質異常 | いずれか又は両方 | |
中性脂肪 | 150mg/dl以上 | |
HDLコレステロール | 40mg/dl未満 | |
高血圧 | いずれか又は両方 | |
最高血圧(収縮期) | 150mmHg以上 | |
最低血圧(拡張期) | 85mmHg以上 | |
高血糖 | ||
空腹時血糖値 | 110mg/dl以上 |
これらの基準値は糖尿病や高血圧と診断される値よりも若干少ない値を採用しています。
いわゆる境界型と呼ばれる状態です。これらのうちの2つ以上が当てはまり、さらに腹囲を計測した結果、男性で85cm以上、女性では90cm以上の腹囲に当てはまった場合、内臓脂肪面積が100cm2であるとみなして、メタボリックシンドロームと判定されます。
しかしながら、当てはまった場合でも、皮下脂肪が多くて内臓脂肪は少ないような場合、内臓脂肪面積が50cm2くらいでも、健康指導を受けることになったり、逆に腹囲が基準値以内でも隠れ肥満で内臓脂肪面積が100cm2ある場合も多々あり、この場合メタボリックシンドロームなのに、見逃されて、高血圧症や糖尿病を発症してしまうようなこと有り得ます。また前述の保険組合へのペナルティがあるので、目標達成の為に、治療が比較的容易な軽度のメタボリックシンドローム患者が優先されて、保健指導の対象になり、治療が困難な重度のメタボリックシンドロームは、特定健診の対象から外されてしまう可能性もあるので、自ら普段から自分の内臓脂肪の状態を知っておくことは大きなメリットがあります。
当院のCT装置には”FatPointer”という機能があり、これを用いることで、正確な皮下脂肪と内臓脂肪の量を求めることが出来ます。さらに身長体重を用いたBMI指数も利用することで、より正確な体の状態を知ることができます。お臍の所だけ数枚CTを撮影するだけ、放射線量も最小限度で撮影できるので、被曝も通常のCT撮影の10分の1位程度で済みます。(妊娠した女性の方は禁忌です)以下に、当院で検査した例を載せます。
@腹囲ではメタボリック・シンドロームと診断されるが実は内臓脂肪が少ない例
この方は腹囲が91.2cmと基準値の90cmを超えているので、健康指導の対象になりますが、画像で見ると、殆どが皮下脂肪で、内臓脂肪は33.7cm2しか無いため、実はメタボリックシンドロームではない例です。この方は腹囲が91.2cmと基準値の90cmを超えているので、健康指導の対象になりますが、画像で見ると、殆どが皮下脂肪で、内臓脂肪は33.7cm2しか無いため、実はメタボリックシンドロームではない例です。
A腹囲ではメタボリック・シンドロームではないが実は隠れ内臓脂肪肥満の例
腹囲85cmなので、腹囲ではギリギリで健康指導にはならないのですが、CTの画像を見ると、内臓脂肪面積が基準値の100cm2を大きく越えて、141cm2も内臓脂肪があります。このように見た目と腹囲だけではメタボリックシンドロームと診断するのは隠れ肥満を見落とす可能性があることが分かります。
このようにCTを使用して、脂肪量を測ることで、より正確な自分の身体の状態を知ることが出来ます。また生活指導を行い何ヶ月か後にまた計測することで、どれ位の効果があったのかも比較出来るので、モチベーションの上昇にもつながると期待されます。もし放射線による被曝が心配な方は、当院の技師は放射線管理士の資格をもっており、最小限度の被曝で、検査が可能なようにコントロールしているのでご安心下さい。何かわからなければ、遠慮なく声を掛けてください。
この検査は保険適用外なので、費用が2000円かかります。あらかじめご承知下さい。
*参考URL http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/
放射線技師 加藤 学
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