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健康コラムHealth Column

健康コラム第2回 放射線についての知識

被曝とは?

2011年3月11日の東日本大震災、及びに福島第一原子力発電所事故により被災された方達に、心よりお見舞いを申し上げます。
今回の健康コラムでは、先の福島第一原子力発電所の事故によって注目された放射線の人体への影響について簡単に概念を説明致します。(長いので複数回に分けて解説します)

1)放射線とはどのようなものか?

放射線というのは、ざっくりと言えば”あらゆるの光”のことです。目で見える赤~青色のの可視光、赤外線、紫外線、テレビやラジオのUHFやVHF、FM波から医療検査に用いられるX線やγ線まで、すべて放射線に定義されます。私たちは毎日太陽の光を浴びていますし、毎日テレビやパソコンの画面を見ています。つまり放射線を常に浴び続けていることになります。また夏に海に行った時日焼けをします。赤くなってしまう方もいるかもしれません。日焼けは紫外線が皮膚を傷つけることに対する皮膚の修復過程によって起こります。同様にX線やγ線を浴びると、これらは細胞を傷つけるので修復作用が働きます。つまり日焼けをすることと、レントゲン検査でX線を浴びることも、原子力発電所から放出された放射性物質によるγ線被爆も原理的には同じことなのです。

2)放射線の種類による人体への影響の違いについて

では、なぜ原子力発電所からの放射性物質による放射線が人体に大きな障害を与えるのかというと、放射線が持っているエネルギーが紫外線やレントゲンのX線よりも格段に大きいためです。

α線>β線>X線=γ線>紫外線>青い光〜赤い光>赤外線>電波

上記のような順番で持っているエネルギーは大きくなっていきます。α線とβ線はヘリウムの粒子と電子が正体で粒子が光速に近いスピードで動いているため、持っている重さが違うのでエネルギーも段違いに高いです。感覚的にはγ線が蟻くらいの大きさならば、β線は乗用車、α線はダンプカーといったところでしょうか。自転車と事故を起こすよりも、ダンプカーと事故を起こす方が大事につながる。というのは感覚的に理解していただけると思います。その後ろのγ線やX線と、光や赤外線との違いは波長の違いだけです。本体は同じ光子で波長が短いのがγ線で波長が長いのが電波ということになります。自転車で例えると、ロードバイクで60km位で飛ばしているのが"γ線"で、ママチャリでゆっくり走っているのが電波といった感じです。波長が短いとエネルギーは大きくなり、長いと小さくなるので、同じ光子でも影響や見え方が変わってくるのです。X線とγ線は発生メカニズムが違うだけでほぼ同じ性質を持つので生物学的には同じものだと思ってください。
ここまでで、α線やβ線はγ線よりも恐ろしいと思ったかもしれません。しかし、α線などの粒子線は発生したら、サイズが大きいためぶつかりやすく、短距離でぶつかってエネルギーを失って止まってしまいます。大きな力を持っていても、遠くまでは届きません。この距離を"飛程"と言いますが空気中で遮るものが無くても、α線で数センチ程度、β線でも十数センチくらいです。それだけ離れれば影響はありません。紙やプラスチックなど薄いものでも簡単に止まるので、防ぐのは簡単にできます。反対にγ線は本体が小さく、ぶつからずに遠くまで届きます。距離に応じて弱まりますが、数メートルは届く可能性が高いです。一般にγ線の防護には鉛を用います。鉛は原子番号82と粒子のサイズが大きいので、すり抜けやすい小さな光子でも当たる可能性が高いためです。完全には捕まえることは出来ませんが、それでも限りなく弱めることは可能です。これらの粒子線は発生源の位置と強さが分かっていれば、距離と適切な防護で、人体には影響ないレベルまで弱めることが可能です。ただ原子炉から大量に発生するもう一つの粒子線の中性子線は、とても厄介な存在です。

3)中性子線とは?

中性子線とは原子炉で燃料となるウラン235やプルトニウム237が放出する、粒子線です。
大きさはβ線よりも大きく、α線よりも小さい(おおよそ4分の1)くらいです。n(D.4n)反応と呼ばれる反応がウランやプルトニウムを集めると発生します。nは中性子、Dはウランもしくはプルトニウムを示しています。この反応は中性子nがウランDに当たると4つの中性子nを放出することを意味しています。臨界状態と呼ばれる量までウランやプルトニウムを一箇所に集めるとねずみ算式に大量の中性子が発生して最終的には大きな爆発を起こします。これを兵器に用いたのが原子爆弾です。この臨界状態で爆発を起こさないように中性子を遮蔽して反応制御して熱を少しづつ取り出していくのが、原子力発電所ということになります。このように原子力発電に中性子線はつきものですが、中性子線は他の粒子線と違い空気中ではほとんど減衰しない貫通力が強い放射線なので、防護することが難しいです。しかも人間のDNAを直接損傷させるので、危険度は他の放射線の比ではありません。といってもウランやプルトニウム等の放射性重金属が無ければ発生しないので、そこまで心配はいらないかもしれません。(重金属は風で流されにくいので原子炉周辺以外には広がりにくい。ただし水には流されるので海洋汚染には充分な注意が必要)中性子線の防護には炭素が有効ですが、それでも完全ではありません。最も心配しなくてはならないのは身体の中に放射性物質を取り込んでしまった場合です。α線とβ線は遠くまで届きませんが、体内にある場合には高エネルギーの粒子によって組織が直接しかも長期間被曝にさらされることになるからです。過度の心配をする必要はありませんが、これらの放射線の知識を知っているか、知らないかでは、イザという時にパニックになってしまうかもしれないので、そういったことを防ぐための一助になれば幸いです。


次回は、放射線の単位についてのコラムをお届けします。
放射線技師 加藤 学このページの先頭へ

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